Horseman's Column title

   VOL.23 「スライディングストップ」 Sliding Stop

 新年あけましておめでとうございます。
 本年も宜しくお願い申し上げます。
 ウエスタン乗馬並びにレイニングホースを愛される皆様方に取りまして、より良き年になりますよう、心よりお祈り申し上げます。

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 さて、今月はスライディングストップについて、お話することにいたます。

 スライディングストップは、500年以上も遡る歴史を持っています。
ナショナルレイニングホース協会は、四十数年の歴史で、アメリカンクォーターホース協会は、六十数年の歴史に過ぎませんが、スライディングストップの原型は、スペインのアンダルシアン地方にあります。

 機会がありましたらスペインに訪れると、国営の馬術講演が行われていまして、その中にスライディングストップするシーンを見ることができます。現在のレイニングホースの競技会で見るのとは、大分異なりますが、興味深く見ることができます。



 スライディングストップとは、後肢をロックして、グランドコンタクトを解くことなしに、前肢はペダリングをして、スライディングすることをいいます。

 レイニングのマヌーバーとして評価されるスライディングストップは、アプローチであるランダウンから始まりロールバックするまでか、同じようにランダウンからスライディングストップしてバックアップするまでが、評価の対象となります。

 レイニングのルールブックに記されている一貫したポリシーは、「エブリムーブメントがコントロールされていること。」です。
特にスライディングストップでは、アウトオブコントロールになりやすいリスクが伴うので、ライダーは、ランダウンからストップまでの間において、馬のコントロールということを意識しなければなりません。馬の意識が、ライダーへの集中が途切れないことや、ライダーの指示を絶えず待つということが保たれているかに、ライダーは、スライディングストップの善し悪しと共に、気を配らなければなりません。


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具体的に良いスライディングストップとは、どんなストップでしょう。

1.ランダウンからストップまで、ライダーのコントロール下にあること。

2.ランダウンにおいて、直進性があること。

3.ランダウンの間、スムースなスピードアップがなされて、途中から急激なスピードアップやストップの前にスローダウンしないこと。

4.馬体の下で後肢がロックして、グランドコンタクトを解くことなしに、スライディングすること。

5.スライディングしている最中の前肢はペダリングして、ロックしないこと。


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スライディングストップにおけるリスクとは、どんなものが考えられるでしょう。


1.ランダウンの時に、ステップの回数が増すだけで、ストライドがエクステンド(伸長)しない。

2.ランダウンにおいて、スムースにスピードアップしないで、急激にアップしてしまう。

3.ストップの指示の直前に、スピードが落ちてしまう。

4.ランダウンの時の直進性が悪く、曲がってしまう。

5.後肢のグランドコンタクトが途切れてしまう。

6.前肢が踏ん張ってしまい、ペダリングしない。

7.その他。


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「1.ランダウンからストップまで、ライダーのコントロール下にあること。」について。

 先ずランダウンにおいて、ライダーのコントロールが途切れないようにするには、馬がライダーへの集中を解かないように、ステップ毎にストライドがエクステンド(伸長)するように、推進することが大切で、ライダーの指示によって、只単に、スピードアップのスィッチを入れて、ストップのスィッチをまた入れるのではなくて、ワンステップ毎に推進することによって、ストップのためにもストライドがエクステンドされて、しかもそのことによって馬は、ライダーに益々集中をするようになります。
 

「2.ランダウンにおいて、直進性があること。」
について。

 直進性が良くないということは、馬によってそれぞれ原因があって、その一つ一つに対しての対処法を施す必要があると考えがちです。しかし私は、ランダウンにおいて、スピードアップしたりストライドをエクステンドしたりするのに、如何に馬にとって、合理的で無駄な力を使うことのないように、ステップさせるかを考えることが、あらゆる欠点に対処する方法だと考えています。
 外方の後肢を左右の前肢の間に、向かってステップするようにします。基本的には、外方の手は外方の腰に、ビットから外方の手で作られる線を、ほぼ進行方向に向かって直線になるように保ち、内方の手は、少し開いて持つ。そして、外方脚とレインコンタクトとのコンビネーションによって、外方後肢が左右の前肢の間に、ステップするように推進するようにします。



「3.ランダウンの間、スムースなスピードアップがなされて、途中から急激なスピードアップやストップの前にスローダウンしないこと。」について。

 この問題は、馬の集中とストライドのエクステンドの要求によって解決します。
 ライダーは、馬を推進する時、必ずスピードアップではなくて、ストライドのエクステンド(伸長)をするように心がけなくてはなりません。そしてワンステップ毎に推進しながらランダウンすることによって、馬はワンステップ毎に、ライダーから推進するように要求されるわけですから、馬はライダーへ否応なく集中するようになるし、同時にストライドのエクステンドが起きますから、途中で急激にスピードアップすることもスローダウンすることがなくなります。
 またスローダウンしてしまうのは、ライダーが直前に、ストップを意識してシート変えてしまうことによって、馬がそれを先読みしてしまうことによって、起きることが多いのです。
従って、ライダーは、ストップの直前に、自分の姿勢を構えるようにしないで、ランダウンに入る時点で、ストップの姿勢を取って、推進を始めるようにするようにすれば、これも解決することができます。



「4.馬体の下で後肢がロックして、グランドコンタクトを解くことなしに、スライディングすること。」
について。

 上記の1.2.3.において、ストライドをエクステンドしてランダウンするようになれば、殆ど解決するはずなのですが、それでもグランドコンタクトを途切れてしまうのは、馬のメンタルに問題があるというように、考えることが自然です。
 つまり、馬が、グランドコンタクトを維持しなければならないというような意識が、欠如していると考えることができます。
 この場合は、ルーズレインでストップをします。そして失敗したら、バックアップさせて、再びルーズレインでストップをします。これを繰り返すことによって、馬自身がグランドコンタクトを維持しなければならないというように意識します。もし何時もレインコンタクトによって、ストップをしていれば、馬はそのことを意識する余り、レインコンタクトの程度によって、グランドコンタクトに影響してしまう。
馬の意識が、グランドコンタクトを維持しなければならないという強い意志があれば、これをカバーすることができます。



「5.スライディングしている最中の前肢はペダリングして、ロックしないこと。」について。

時々ペダリングしない馬がいます。その中には、人為的なものと馬自身の問題の場合があります。何れにしてもストップの時に、前肢に力が入ってしまっているのに変わりはありません。
人為的なものは、大凡レインを引っ張って、ストップを指示していることが原因であることが多い。後肢への負重が充分でない場合に、前肢を突っ張ってペダリングしないストップが見られる。
この場合は、ストップの直後にロールバックすることを頻繁に行うことによって、軽快に回転運動をするようにします。この軽快な回転運動は、後肢への負重を充分になった証拠で、この時点で可成り改善されたはずです。また、このようになってしまった馬を改善したいのであれば、アリーナの途中でのストップをなるべく避けて、フェンシングでのストップをすることをお勧めする。そしてロールバックとの組み合わせです。改善途中でありアリーナの中間でストップを繰り返せば、すぐに戻ってしまいかねません。


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馬のトレイニングを考えることは、馬のフィジカルとメンタルを同時に、考えなくてはならないことは今や常識です。スライディングストップにおいても、勿論例外ではありません。
スライディングストップのメカニズムをしっかりと理解して、どのように馬のメンタルとを組み合わせるかがライダーに問われる思考力です。

ライダーの技量は、如何に馬を推進できるかであり、その推進とは、馬のストライドをエクステンドすることです。
このライダーの技量は、馬のフィジカルとメンタルとを結びつけるための思考力と連携してこそ発揮されることではないでしょうか。

    2008年10月30日
    著者 土岐田 勘次郎


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