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    VOL.118「パフォーマンスの構成要素」

 2020年2月号

 今月のテーマは、レイニングにおけるパフォーマンスを構成する馬体のそれぞれのパーツの動きを解説したいと思います。
 馬体を大きく区分すると3つに分けることが出来て、頭頸部・前駆・後駆となり、頭頸部は、ヘッドとネックであり、前駆はショルダーといい前肢・リブケージであり、後駆は、フランク・後肢・臀部である。

 サークル運動は、前進エネルギーが外方後肢から重心を通過して内方前肢へ向かって走行するもので、サークル運動の軌道において内方後肢が一番内側に、次に内方前肢で、その外側に外方後肢が位置して、一番外側を外方前肢が位置するのである。

 そこで、一番重要な要素は、外方後肢が外方前肢より内側に位置してステップすることである。このことによって遠心力の逆方向のエネルギーを作ることになり、遠心力と闘って馬体を内方へ倒すことなく走行することを可能にしているのである。
 そして、もう一つ重要なことは、内方後肢が内方前肢より内側に位置しながらステップしていることで、このことにより内方後肢が馬体重を支える役目を果たしているのである
 もし、内方後肢が馬体重を充分に支えることができなければ、外方後肢は馬体重を支えなければならなくなるので、充分に前進エネルギーを発揮することができないし、遠心力とも闘うことができなくなってしまうのである。

 また、馬体の縦の中心線に対する各肢のステップ角度は、サークル運動では、内方前肢<外方前肢・内方後肢<外方後肢で、内方前肢>内方後肢・外方前肢>外方後肢となっているのである。

 これらのメカニズムは、スピンも全く同じであり、ロールバックの場合も同様である。

 チェンジリードは、前進エネルギーの方向の転換であり、外方後肢から内方前肢へ向かっている前進エネルギーの方向を、走行中に左から右、右から左へと切り替えることである。
 例えば、左から右へチェンジリードする場合、左リードの走行は、軌道の一番左側を左後肢、次に左前肢、その次に右後肢、一番右側を右前肢が位置していて、運動エネルギーは右外方後肢から左内方前肢へ重心を通過して向かっているのである。
 リードチェンジにおいて注目すべきことは、右前肢の左側に右後肢が位置していることで、同時に左前肢の左内側に左後肢が位置していて、チェンジリードする場合、これを左後肢が左前肢の右側に位置するように切り替えることで、この切り替えが起きれば、必然的に右後肢が右前肢の右側に位置するようになるのである。そして、右から左へチェンジリードする場合は、この逆になるのである。

 スライディングストップは、後肢がグランドコンタクトを外すことなく、走行から停止へと移行することである。

 このとき重要な要素は、重心と後肢の着地位置の関係性で、特に推進エネルギーを発揮している外方後肢が重心より前で着地していることである。
 馬体は地球の引力によって、真下へ押し下げられる力を受けていて、その中心が重心であり、馬の4肢は着地したときグランドから真上に持ち上げられる力を受けているのである。


 重心より推進肢である外方後肢が前に着地していれば、重心より前の馬体の部分、つまりが外方後肢より前ということになり、馬体全体が真上に向かう力を受けることになって、グランドコンタクトを外すことなくスライディングすることになるのである。
 もし、外方後肢が重心より後ろで着地していれば、重心を境にして、重心より後ろは真上に向かう力を受け、重心より前は真下へ向かう力受けることになるので、馬体を左側から俯瞰すれば、左回転モーメントが働くことになり前転するようなムーヴメントとなって前肢で停止するようになるのである。従って、スライディングできないことになるのである。

 スライディングを達成するためには、重心が馬体のより後ろに位置すること、つまりバランスバックすることが重要で、外方後肢が重心より前に着地しながら走行することが必須なのである。

 スピードコントロールは、レイニングではサークル走行中にスピードの増減を要求されるが、ライダーの指示により馬のメンタルが反応して、これに応える要素もあるが、フィジカル的要素としては、重心の位置がより前に位置することによってスピードアップし、より後ろに位置することによってスローダウンする物理的作用があるのである。
 ライダーが前傾したり後傾したりするのは、この重心の位置をコントロールしようとすることの現れなのである。
 そこで重心と後肢の着地位置関係において、後肢の着地位置が重心に近づけば近づくほどバランスバックといい、離れれば離れるほどバランスフォーワードというのである。

 バランスバックすることでスピードは減退し、バランスフォーワードにすればスピードアップするのである。

 スピンにおけるスピーアップや軽快性、方向転換の軽快性は、前肢に対する体重の負重を軽減することで実現しており、スピンや方向転換の軽快性やスピードをアップするには、スパーを入れて刺激することによって行っているのは、馬のメンタルに作用させているのである。しかし、これでは基本的にフィジカル的問題が解決しないのである。

 前肢への体重の負重を後肢へ移行して前肢の負荷を軽減するには、後肢の着地位置と重心の距離を近づけることによって実現するのである。
 これには、重心をより後ろへ移行することと後肢を入り踏み込ませることとの二つの要素が考えられ、馬のショルダーをビルドアップして、馬の頭を重心に近づけることでバランスバックができ、後肢を深く踏み込ませるには、馬体を左側から俯瞰して右回転モーメントを作ることで実現できる。
 右回転モーメントを作るには、レインを真上ピックアップすることで、ビットのメカニズムによって、馬の頭が下がりショルダーがビルドアップされ、レインのピックアップの支点となるシートが真下へ押し下げられるので、馬の頭頚部が真上に胴体が真下へ向かう力が働き、右回転モーメントが働き後肢の踏み込みが深くなるのである。

 馬体のパーツそれぞれの運動機能が構成要素となってパフォーマンスを実現しており、パフォーマンスの向上や問題の解消を図るため、馬のトレーニングでは、先ずパーツの運動機能の改善を図るべきで、このことを原則的に考慮する思想を持つべきなのである。

2020年1月14日
著者 土岐田 勘次郎

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