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VOL.168「乗馬における馬のコントロール」その1


 乗馬において、ライダーは、物理的力を以て、馬の動きをコントロールすることができないのは自明の理で、それは、木馬のうえで、ライダーがどんなに足掻いても木馬が動くことがないことを見れば容易に解ることである。

 しかし、如何様にそのメカニズムを理論的に解明しようが、ライダーは、シートや脚やレインハンドのプレッシャーによって、物理的パワーを以て馬を動かしたりその動きをコントロールしたりしているかのようにして、馬術を展開しているのが現実で、この現実をどのように説明するのかを待たずして、乗馬のメカニズムを解明したとは言い難いのである。
 それは、ライダーの要求であるプレッシャーを、馬が合図と受け止め、馬の頭脳がこの意味を全て理解して、反応しているとは考え難いのである。

 乗馬は、馬に対してライダーが主導権を握っているという前提で、これを解明すれば、支点と作用点の2点間の関係性において、支点の力の方向と作用点のそれとをずらすことで回転モーメントを生み出し、この回転モーメントに馬が反応し動くので、ライダーは、如何にもレインハンドやシートや脚のプレッシャーによって、馬の動きをコントロールしているように、馬術を展開しているのである。

 馬は、ライダーの要求を、馬が持ち得る概念で受け止め、これに反応しているので、その概念とは、方向性と気勢であると考えられる。

 ライダーが、馬に対して物理的力を以て、馬を動かすことができない。つまり、ライダーは、馬が動くことにおいて強制力がないということである。厳密にいえば、ライダーの体重だけが、馬の動きに対して強制力を持っているのである。
 そしてまた、ライダーは、馬体の曲げ伸ばし、つまり、フレームワークにおいて、強制力を持っているのである。
ビットとシートや脚との2点間において力を加えることで、馬のフレームを強制的にコントロールすることができるのである。

 支点と作用点の2点間における力の方向を、一つの直線上に置いたり方向をずらしたりして、直線上に置けば直線モーメントになり、支点の方向と作用点の方向をずらせば、回転モーメントになるのである、このモーメントを活用して、ライダーは、強制的に馬体の姿勢をコントロールすることができるのである。

 支点と作用点は、物理学的には、どちらも支点であり作用点なのかもしれないが、馬のメンタル対して、ライダーが主導権を握ることを前提で考察すれば、馬のメンタルにおいて、支点と作用点は区別されて受け止められているのである。

 乗馬の成り立ちを鑑みれば、支点と作用点を定点と動点と定義づければ、ライダーにとっても馬にとっても、支点と作用点は分けて受け入れられると考察するものである。

 馬の概念として、2点のプレッシャーを支点と作用点または定点と動点として受け止めているとした場合、2点の力の相対性において、インパクトの強い方を作用点または動点とし、比較的インパクトの弱い方を支点または定点と受け止められると考えられるのである。

 2点のプレッシャーにおいて、相対的にインパクトの強い方のプレッシャーとは、プレッシャーに動きがあり、プレッシャーが一定でなく強弱があり、弱い方のプレッシャーとは、一定のプレッシャーで動きが少なく、一旦プレッシャーがかかると強弱なく一定にプレッシャーがかかるのではないかと考えることができるのである。

 支点と作用点という概念は、動物であることにおいて共通の概念なのではないかと考える。

 何故なら、150kgと100kgの二つの物をロープで繋いで引き合った場合、150kgの方を支点にしても作用点にしても、また100kgの方を支点にしても作用点にしても、結果は同じで、150kgの方へ100kgは引きつけられてしまうのである。しかし、この2点間の関係が動物の上で作用すれば、どちらかを支点(定点)にしたり作用点(動点)にしたりすることで結果は異なり、支点の方へ作用点が近づくこととなるのである。

2024年3月24日
著者 土岐田 勘次郎

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