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    VOL.27 乗馬社会の制度設計

                                                 


 制度設計のためのファクター



 メンタル編

 1. 馬は、はっきり自分に危害を加えないと判明するもの以外のものに対して、人間の10倍以上緊張し恐怖心を持ち、その要因から逃避しようとする。

 2. 馬は、肉食獣と違って、ものをゲットしたときの喜びよりも、危険を回避できたときの喜びの方が大きい。

 3. 運動の前後のプレッシャーに於いて、事前より事後のプレッシャーが大きいと否定的に、小さいと肯定的に受け止める。

 4. 馬の集中できる時間は、大凡45分程度だと云われている。

 5. 生命維持機能のシステムは、生命の維持増進にプラスの外的要因に対してメンタルはリラックスしよりその要因を欲し、マイナス要因に対しては緊張して回避しようとする。

 6. 継続は緊張を欠き、慣れを生み、慣れは集中を欠く。不連続は緊張を生み、集中を生む、ときには恐怖や不安の元ともなる。

 7. 集中は、リラックスを破るが、必ずしも集中は、リラックスと同居できない訳ではなく、プレッシャーはリラックスを破るが、必ずしもリラックスを作れないわけではない。

 8. ノープレッシャーは、緊張させるわけではないが、必ずしもリラックスをバックアップするものではない。

 9. 緊張と緩和は、相対的もので、決して絶対値として緊張と緩和があるわけではない。

 10. 集中は、広範に見えるものを見えなく、聞こえるものを聞こえなくし、感じるものを感じなくする。また、その逆に、局所に於いて聞こえるものをより聞こえるように、見えるものをより一層見えるように、感じるものをより鋭敏に感じるようにする。

 11. 緊張は、広範に見えるものを見えなく、聞こえるものを聞こえなくし、感じるものを感じなくする。また、その逆に、局所に於いて聞こえるものをより聞こえるように、見えるものをより一層見えるように、感じるものをより鋭敏に感じるようにする。

 12. プレッシャーを乗り越えた先の安堵が、どこからもたらされるかが明確になった時に、その安堵の出所に対して従順性や忠誠心を持つ。

 13. 急激なプレッシャーと強いプレッシャーは同じ意味を持ち、スローなプレッシャーと優しいプレッシャーは同じ意味を持つ。

 14. プレッシャーは緊張を生み、リリースは緩和をもたらす。プレッシャーとリリースは、前後のプレッシャーの大きさの差による相対値によって感じ取るもので、絶対値として感じているものではない。

 15. リズミカルなプレッシャーに対しては順応し、アトランダムなプレッシャーには過敏に反応する。

 16. ライダーの指示を受け容れるには、馬が指示の意味を理解し且つその指示に対して従順に従う気持ちを持ったときのみで、指示の意味を理解できなかった場合や、理解できたとしても従順でない場合は、ライダーの指示に従うことはない。

 17. 馬は、群れを成すボス社会を形成する動物で、ボス社会とは法律が存在するから大脳が発達し、主従関係を理解する能力を持つ。

 18. 二つのプレッシャーが少しのタイムラグがあって訪れると、最初のプレッシャーによって次のプレッシャーを想像する。

 19. 高い音によって促進され、低い音で抑制される。


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 フィジカル編

 1. 馬は、体重を前肢と後肢へ6:4の割合で負重し、推進の役割はその逆で4:6の割合で担っている。

 2. 馬は、重心が第12肋骨付近にあって、その重心のバランスを崩れることよって移動を始めて、そのアンバランスを支えるためにステップする循環で運動するメカニカルムーブメントと、ステップを起こしてから重心の移動をするテクニカルムーブメントの2つのシステムで運動している。

 3. メカニカルムーブメントは、自動的運動の割合が大きくなるので消耗を最小限にできる反面コントロールしにくく、一方テクニカル運動は、筋肉運動の割合が多くなるので消耗が比較的激しくなるが、その反面コントロールしやすくなる。

 4. メカニカルムーブメントにおける重心のバランスを、コントロールしているのが首の振幅運動である。

 5. 同じ運動量に於いて、首の運動を制約すれば、それだけテクニカルムーブメントになり、首の運動をフリーにすれば、それだけメカニカルムーブメントになる。

 6. 馬は、脊椎の柔軟性を失うように進化しており、合理的運動のために運動エネルギーが重心を通過する必要があって、脊椎を左右にくねらせて運動エネルギーの通過するポイントに重心を移動させることができないので、運動エネルギー自身が馬体の対角線上を通過するようにして、重心を通過するために斜対運動になっている。(斜対速歩、斜対駈歩)

 7. 体力の消耗は、理解力や感覚を鈍らせ、特に酸素欠乏は、運動の消耗によるものでも緊張によるものでも、理解力や感覚や集中力を激しく減退させる。

 8. ライダーのプレッシャーは、馬の駆動力とは直接的因果関係はなく、合図に過ぎない。唯一馬の駆動力に直接的影響をさせることができるのは、ライダーのバランスとポジショニングである。

 9. 馬の回転運動は、前後肢共に内方肢に対して外方肢が、回転方向の外側を回り込んでインサイドステップするのが原則である。

 10. 後肢が重心の後方へステップして前進すると、反時計回りのモーメントが働き、重心より前にステップすれば、時計回りのモーメントが働く。



 上記以外の要因がまだまだ切りがないほどあるが、我々馬に関わる全て者が乗馬社会の正義と秩序に則って、それぞれの目的を達成しようという志を持つ者達の構成する乗馬社会でありたいものである。





















                 2012年6月25日

                 著者 土岐田 勘次郎


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