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    VOL.3 「コミュニケーションのメカニズム」


 今月のテーマは、複数の生命体間での意思の疎通をするメカニズムを解明する。

 コミュニケーションのメカニズムについて話をするには、その前に生命体の生命維持機能について触れる必要がある。

 生命体の精神作用は、生命の維持増進のベクトルをもっておりそのベクトルに対して、外的要因が同じベクトル、つまり維持増進のベクトルを示す場合は緩和して、逆のベクトルつまり維持増進を抑制するベクトルを示す場合は、緊張する作用を原則的に持っている。このメカニズムが生命維持機能だ。

 この生命維持機能は、殆どの生命体における共通のメカニズムだ。しかし緊張したときに起きる行動や緩和したときの行動は、それぞれの生命体によって違うし、また個体によって違う。それらが生命体によってそれぞれが持つ特徴や個体によって異なる性格として判断される。

 生命体が正常か異常かの判断をするには、この生命維持機能が正常に働いているかどうかで判断することができる。しかし、正常な生命体であっても、精神作用が必ずしも生命維持機能のベクトルと一致するとは限らない。それはメンタル機能のレベルによって、外的要因を判断する能力が違ってしまうからだ。

 同一生命体であっても訓練度によって、外的要因がどんなベクトルを持っているのかを判断する正確度が変わってしまう。またその時の精神状態の鎮静度によっても、外的要因に対する判断能力が変化をしてしまうものだから、生命維持のベクトルと判断が必ずしも一致しないことが起きる。そしてまた、生命体の知能などの高低によって、生命維持のベクトルと照らして外的要因が、どんなベクトルを有するかの判断能力に差があって、高等動物であればあるほど判断が正確になる。

 何れにしても大凡生命体は、自らの生命に対して外的要因が、維持増進するベクトルであれば緩和して、抑制や傷害のベクトルを示す場合は、緊張する機能を持っていて、外的要因から回避して生命の維持増進へと向かわせるこのシステムが生命維持機能であり、この生命維持機能によって異なる生命体間でコミュニケーションすることができる。

 例えば二つの生命体間のコミュニケーションは、一方から何らかの刺激を他方へ与えると刺激を受けた生命体は緊張して、その緊張からの解放を期して、刺激から身を避けるために自らの体を移動したり、刺激を与えた方の生命体を押しのけようとしたりする。刺激を受けた方の生命体から与えた方に対して、その緊張を回避するために何らかの刺激を送って、最初に刺激を与えた生命体がその行動を止める。

 
 つまりAがBの体を押した。
Bは、緊張してその緊張からの解放を考えて、Aを押し返した。
するとAは、自分がBを押したのをBが嫌がっているのを知って、Bを押すのを止めた。ということになる。

 以上がコミュニケーションのメカニズムだ。

 また、生命体は、生命維持のベクトルに対して抑制のベクトルと判断できないベクトルの外的要因に対しては緊張し、その緊張を何らかの方法で、解放されるようにしようとする。そして生命維持のベクトルと同じベクトルと判断できるときだけ緩和し、その外的要因をより欲する。

 ライダーが送る指示命令は、基本的に緊張を生むと考えることができる。そしてその指示命令として与えたプレッシャーをリリースすることで、その緊張を緩和することができる。

 緊張を与えたプレッシャーとそのプレッシャーをリリースした時のプレッシャーの値の差が相対的に、馬は感じ取って緊張したり緩和したりする。
 例えば5のプレッシャーを与えた後に1リリースして4のプレッシャーを維持したときは、馬はリリースされたと感じて緩和する。また逆に3のプレッシャーを掛けた後に4のプレッシャーをくわえれば、更に緊張するということになる。

 従ってライダーは、今どのくらいのプレッシャーを馬に対して与えているかを察知している必要がある。察知していることによって、どれくらいプレッシャーをリリースするか、更に加えるかを瞬時に判断できる。
本来は、馬がその時にどれくらいのプレッシャーを感じているかを察知する必要があって、ライダーが特にプレッシャーを与えていないにも関わらず、馬が極度に緊張してしまうときがあり、こんな時はどんなにプレッシャーをリリースしても緊張は収まらないので、この場合は一旦馬がプレッシャーを感じるまでのプレッシャーを掛けて、それからリリースすることによって、馬が緊張を緩和することができる。

 コミュニケーションのメカニズムとプレッシャーの度合いが相対的なものだということを、知っておく必要があり、このことを良く理解して馬とのコミュニケーションを図り、馬をコントロールしましょう。


      2010年6月30日

       著者 土岐田 勘次郎


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