Horseman's Column title

    VOL.44「ライダーの三原則」



                                                 

 2013年12月号


 今年最後のコラムになりました。

 2013年最後のコラムは、ライダーが求められるスキルの三原則について解説したい。

 ライダーが馬上で、その馬をコントロールするために最低限求められるスキルとは何かである。

 ライダーが求められるスキルは、多種多様に亘ると思われるが、色々多様に亘るスキルを大本へと集約すると、次の3つに絞られると思うのである。

 それは、バランス・ドライブ・フィールである。


 馬の背中で馬の動きに対応して、何処かに掴まって態勢を維持するのではなくて、重心の真下に支点を置いて均衡を保つことができるバランシング能力が求められる。

 また、馬を前後左右へと動かすことができる推進力である。

 馬をコントロールする場合に、先ず馬を推進できないことにはできないわけで、最低限として馬をドライブする能力が求められる。

 そして更に、馬の反応や動きや態勢や精神状態など、ライダー自身の態勢や精神状態等を、リアルタイムに把握する感覚である。

 判断力であるとか思考力であるとかトレーニングの知識であるとか等々ライダーに求められるスキルは、多種多様であるが、それらの大本は、このバランスとドライブとフィールに尽きるのである。

 

 何故なら、馬にバランス良くライダー自身の体を支えられなければ、落馬してしまうわけだから馬をコントロールなどできるはずはない。また、落馬しないまでも、最低限のバランシングができなければ、恐怖感を募ったり自在に脚を使って馬を推進したり、レイン操作したりすることはできないので、ライダーに求められる最大のものはバランスだということができる。

 ドライブは、馬の背中に乗って馬を動かすことは、基本的に同一物体上に支点と作用点が位置してしまうので、作用と反作用を以て馬を動かすことができない。そこで馬を動かすつまりドライブすることは、馬とライダーとのコミュニケーションによってすることであり、ライダーがイニシアティブをとって馬とコミュニケーションする能力こそがドライブなのである。
 そして、馬とのコミュニケーションなくして、馬の従順性や集中能力を求めることもできなければ、馬に学習させたり行動や思考にある方向性を持たせることもできないのである。

 ライダーが唯一馬を物理的力である作用反作用を以て馬をドライブすることができる要因があり、それは、ライダー自身の体重である。
 ライダーのポジショニング、つまり自分自身の体重の置き場所とレイン操作によって、推進と抑制をコンビネーションさせライダー自身の体重をドライブに有効に反映させることである。





 最後にフィールである。フィールは状況を把握する能力のことである。馬の反応や動きや態度や精神状態のあらゆることを、リアルタイムに感じてこれを掌握する能力である。
 更には、ライダー自身の動きや態勢、そして精神状態や考えまでもリアルタイムに掌握することも、これに含まれるのである。
 当然状況について正確にそしてタイムラグなく把握できることは、次の行動を意図的なものにすることはできないのである。

 

 バランス・ドライブ・フィールの3つにいて説明するには、書いても書いても書き尽くせないので、他の機会に譲るとして、本稿では、この3つのコアとてもいうべきスキルを、以下のように乗馬において活かしたいのである。

 この3つのスキルの中で、バランスだけは、反射神経が司る能力なので、意図的にこれをコントロールしたり向上させたりできない。しかし、バランスを向上させたりコントロールしたりするには、如何にドライブするか、状況を把握するように感覚を研ぎ澄ますかによって、結果として養成できると考えることできる。


 さて、本題は、ライダーが馬をコントロールして、パフォーマンスする上で上手くいくことも失敗することもある。これらの正否は兎も角として結果が出たときに、この3つにトランスファーしてこの結果を理解すべきだと考える。

 例えば、ストップが上手くいかないのであれば、バランスかドライブかフィールかの何れが悪いのかそれとも全部かと考えて、ストップを直接的に改善しようとするのではなくて、この3つのスキルを改善して結果的にストップを良い方向へと向かわせるようにすれば、根本的改善となるばかりではなく、馬の消耗や精神の混乱や反抗を増長させずに、改善を図れるのである。

 スピンが悪ければ、先ずライダー自身のバランスがどうなっているかを見て、これを正すためにポジショニングの改善を図り、バランスを図り易くしてこれを行ったり、もっとドライブしたり馬の態勢やステップの状況を感覚的に見たりして、気付いた点を改善するようにすれば、スピン事態を良くすることができるのである。

 どんなにスピンやストップが悪いからといって、これを繰り返すだけでは良くなることは決してないのである。失敗を繰り返すのみでは、馬の精神が荒れたり、ライダーの要求を拒否したりして、パフォーマンスのレベルアップは望めないのである。

 ものごとを進める場合や改善をする場合、原理原則に立ち返れということがあるが、乗馬において原理原則がこのバランス・ドライブ・フィールの3つなのである。

 この3つのスキルは、これで良いとかここまで良いというような限界のないスキルだから、どんな上級者であっても、絶えずこの3つを念頭に置いて、何かにつけてこの原理原則に立ち返ることは、ライダーでも馬でもレベルアップへの一番の近道なのである。




                 2013年11月22日

                 著者 土岐田 勘次郎


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