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    VOL.6 「ポスティングトロット(軽速歩)」

 今月のテーマは、ポスティングトロット(軽速歩)についての解説である。

 ポスティングの本来の目的は、2拍子の反動の緩衝である。

 2拍子は往復運動で、運動の折り返し地点において行くエナジーと引き返すエナジーが真反対である180度反転するので、運動の中では一番反動が大きい。その大きい反動をポスティングによって、緩衝することが第一の目的だ。

 2拍子から3・4とリズムの刻みが増えるのと正比例して、反動は小さくなる。つまり運動が滑らかになり、直線運動から徐々に円運動になっていくということである。

 馬の歩様は、Walk(常歩)は4拍子、Jog or Trot(速歩)は2拍子、Lope or Canter(駈歩)は3拍子、Gallop(襲歩)は4拍子だ。

 さてポスティングトロットとは、騎乗法で決して馬の歩様ではない。言うまでもないことだ。何故態々こんなことを言うかというと、ポスティングのことを馬の歩様だと勘違いしている人に偶に出会うからである。
 2拍子の反動を緩衝するために、2拍子の一拍でライダーが鐙立ちをして、次の一拍でシートに座るということを繰り返す騎乗法である。そしてこのポスティングには世界共通のルールがあって、外方前肢(内方後肢)が踏み出す方の一拍で鐙立ちをして、内方前肢(外方後肢)が踏み出す一拍でシートに座るというルールだ。

 初心者は、外方前肢の踏み出しの一拍で立ち内方前肢の踏み出しで座る。上級者になるにつれて、徐々に内方後肢の踏み出しで立ち、外方後肢の踏み出しで座る。つまり初心者は、前肢のステップに合わせ、上級者は後肢のステップに合わせて、ポスティングをするということである。
 その理由は、只単に前肢のステップの方が読みやすいということで、本当は後肢のステップが読めるようにならなければならないということである。何故なら、馬のステップの始まりがどんな歩様であっても後肢からスタートするからであり、チェンジリードやディパーチャーやストップのキューイング(合図)は、全て後肢のステップに合わせなければならないからである。

 ポスティングは、本来反動の緩衝にあったが、ライダーが馬のステップを感覚的に読めるようになる為の訓練法として利用することができる。

 外方前肢がステップするときに立つ。
 最初は2拍子のリズムに合わせて、外方前肢がステップすると感じた時に立つようにして、後に合っているかどうかを目視確認する。決して始めから目で確認しながら立つようにしてはならない。
 合っていようが間違っていようが、感覚的に見当を付けて立ったり座ったりするようにして、その後に目で確認するようにすれば、自分の感覚が正しく察知できるように養成される。

 そして最初は、兎に角リズムに合わせることとルールを守ることに専念して練習することだ。するとその内リズムが取れて、楽に立ったり座ったりできるようになる。
 そうしたら、徐々に後肢のステップを感覚的に追いかけるようにして、ポスティングするように努めるようにする。するとやがて後肢のステップが手に取るように読めるようになってくるのである。

 一つ注意事項として、最初に言ったように反動を緩衝することが第一目的だから、一生懸命立つようにするのではなくて、腰を浮かせるようにして立ち上がり、特に座る時にシートに柔らかく着地するように努めることもまた重要である。

ポスティングトロットにおいて推進脚は、シートに座って正に立ち上がろうとするタイミングで、馬体をスクィーズするようにして使う。この場合も推進することが目的なので、この脚によって馬がよりドライブされなければ意味がないから、このタイミングが重要になってくる。
 人によっては、シートに座るときに両足で馬に抱きつくように、脚を入れている場合があるが、これでは馬の推進が減退してしまうのである。
 飽くまでも馬のライジングに合わせるようにして脚を使う必要がある。

 ポスティングトロットのルールは、外方後肢のステップに合わせて立つということであり、外方後肢のステップに合わせて座るということでもある。このルールは、ライダーの推進脚のタイミングと密接な関係がある。正しい脚のタイミングは、馬の外方後肢のステップにより推進力を与えることになり、駈歩への移行を果たす重要なタイミングで、外方後肢のドライブにアクセントを付けることによって、正しいリードのロープオフができるという理屈である。

 つまりトロットの推進脚とロープの推進脚のタイミングが全く同じになって、外方後肢のステップにアクセントを付けるようにして、推進するということである。

 トロットは、2拍子なので左右のステップはイーブンの推進力であり、どちらかにアクセントがつけばそれは跛行ということになる。しかし態々外方後肢がステップするタイミングで推進脚を入れるということは、ロープへ移行する場合にのみ意味を持ち、移行しなければ外方前肢だろうと内方前肢だろうと、どちらで立っても一向に差し支えない。

 馬の4肢のステップを感覚的に読むことができるスキルは、ライダーにとって無くてはならないもので、ライダーが馬に送るキューイングのタイミングは、馬のステップを感覚的に読めることが前提条件で、特に後肢のステップが読めることが重要なのである。
 ライダーのステップに対する感覚を養成するためには、大変有効な練習法としてこのポスティングトロットがある。
 スタンディング及び推進脚のタイミングを感覚的にできるように、努めて目視確認を事後に行うことで、養成するようにすることが重要である。


           2010年9月22日
                 

著者 土岐田 勘次郎


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