Horseman's Column title

    VOL.69「ファウンデーショントレーニング Foundation Training」


 2016年1月号

 明けまして、おめでとうございます。

 旧年中は、本稿をご愛読頂きまして心より御礼申し上げます。

 本年もご愛顧の程よろしくお願い申し上げます。

 さて、本年最初のコラムは、新年に相応しくファウンデーショントレーニングをテーマとする。
 何故、新年に相応しいかといえば、始めよければ全て良しとか、一年の計は、元旦にありとかいうように、馬のトレーニングも最初のファウンデーショントレーニング(基礎調教)によって、その後の馬の性格や態度や発揮される能力までをも決めてしまう要因として大きな意味を持つからだ。

 このファウンデーショントレーニングは、サドルブレーキングの後に始めるトレーニングで、原則的にブレーキングが済んで馬がライダーの騎乗を受け入れて、ラウンドペンから大きなアリーナでライディングするようになった後に行うと考えている。

 ファウンデーショントレーニングには、フレームワークとバランスワークの2つがあると考えている。

 馬がライダーの指示を理解して反応できるようにするためのベーシックを築くために施すトレーニングがファウンデーショントレーニングで、フレームワークとは、馬体の各パーツ、前駆(ネック・ショルダー・前肢)や後駆(リブケージ・後肢)の柔軟性や可動域を拡大して、ライダーの要求する姿勢や体制(内方姿勢・外方姿勢・屈撓・収縮など)に反応できる馬にすることである。

 そして、バランスワークとは、馬のムーブメント(メカニカルムーブメント・テクニカルムーブメント)を作り出すために、重心をフロントワードとバックワードとを自在に切り替えられる馬にすることである。
 基本的に馬は、バランスフォーワードであるのが自然で、第4肋骨付近に重心があるといわれている。従って、バランスをフロントやバックへと移行できるようにするためには、バランスフォーワードは訓練せずともできることなので、どちらかというとバランスバックできる馬にすることで、バランスの所在を切り替えられる馬にすることが可能になるのである。

 そして、バランスフォーワードではメカニカルムーブメントになり、バランスバックすればテクニカルムーブメントとなるので、重心の位置をコントロールすることによって、馬のムーブメントを変えることができることになるので、重心の位置をコントロールすることによって馬のムーブメントを支配できるのである。
 さらに、メカニカルムーブメントは、馬の筋肉運動が軽減され疲労を回避できる省エネ運動であり、惰性の割合が大きくなるためにコントロール精度が低いのであり、テクニカルムーブメントは、筋肉運動の割合が大きくなり疲労し易くなる一方で、惰性が小さくなるのでコントロール精度が高まるのである。

 フレームワークは主にストレッチ運動によって柔軟性を高めて、その後にフレームを作るのである。
 ストレッチは、主にネックとショルダーとリブケージと後駆の柔軟性と可動域を拡大することである。
 そのためにベンドすることでストレッチを行う。

 例えば、ショルダーとネックは、左右へベンドさせて柔軟性を作り、リブケージは、小さなサークル運動でステップアウトさせて作り、このときに馬のフェイスを、最初は鼻先だけがテイクする方へ傾いても徐々にグランドに対し垂直になるようにしてこれらのエクササイズをすれば、各パーツが柔軟になると同時にネックもまた柔軟になるのである。



 これらのエクササイズにおいて重要なことは、馬の抵抗を越えたところで必ずプレッシャーを解放することが重要で、リリースすることによってフィジカルの柔軟性を作ると同時に、馬のメンタルの従順性もまた養成することができるのである。

 このストレッチ運動は、常歩と速歩で充分に行う。常歩と速歩で充分に柔軟性や可動域が拡大されてから駈歩へと進むべきである。

 馬体の各パーツの柔軟性が養成されたところでバランスワークへ移行する。

 バランスワークとしてのトレーニングは、ライダーのポジショニングが重要なファクターで、このポジショニングはストレッチ運動をしているときからも重要で、ライダーが鐙に体重とかけるかそうでないかによって、重心が前後するので、ライダーのポジショニングによって、ストレッチ運動は元よりバランスワークではとても重要なファクターなのである。
 前進運動では、ライダーが鐙に体重かけないようにしてシートへ全体重を掛けて、屈撓や内方姿勢などの姿勢を求める。このことによって馬のバランスは後駆へと移行してメカニカルムーブメントとして運動するようになる。

 また、バックアップ運動において、レインをサドルホーンの前で上方へピックアップするようにすると、馬の後肢は馬体の下へステップしてバックするようになり、バランスバックしてのバックアップとなる。一方レインを低めにして後方へ引くと、馬の後肢は馬体(臀部)より後方へステップするようにバックアップするので、バランスフォーワードでバックするようになるのである。

 以上の他にもファウンデーショントレーニングの方法は沢山あるが、何れにしてもフレームワークとバランスワークかその両方を行うトレーニングなのである。

 このファウンデーショントレーニングによって、馬体の各パーツの柔軟性や可動域が大きくなったり、重心の移行が自在になったりしたとしても、もう一つ重要な要素が養成されなくては意味がないのである。
 それは、メンタルの従順性や集中力が養成されなければならないということである。
 このためには、このファウンデーショントレーニングにおいて、絶えずプレッシャーに対する馬の反応が、抵抗がなければリリースして、抵抗があればこれを小さくするためにプレッシャーを強め、その後に抵抗が小さくなった時点でプレッシャーをリリースすることを間断なく繰り返して、ライダーがイニシアティブをとった馬とのコミュニケーションを怠ってはならないのである。

 フレームワークとバランスワークのトレーニングは、馬のトレーニングのベースであって、ファウンデーショントレーニングに限ったことではない。
 馬が成長してパフォーマンスのフィニッシュトレーニングに入ったとしても、パフォーマンスの精度を高めたりレベルアップを図ったりするためにも、この二つ要素を改善することが鍵となるのである。

2016年1月1日
著者 土岐田 勘次郎


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