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    VOL.70「エクササイズ」


 2016年2月号

 今月のテーマは、レイニングホースのエクササイズで、その目的と作用について解説したい。
 ファウンデーショントレーニングで、フレームワークとバランスワークがあり、そのためのトレーニング法としてのエクササイズである。

 エクササイズの目的と作用は、馬体のストレッチやリレーションやバランスのコントロールである。

 エクササイズは、馬のフィジカルに作用させるものだが、とても重要なファクターとして捉えなくてはならないことが馬のメンタルである。

 エクササイズで、馬のフィジカルをストレッチしたりベンドさせたりして、柔軟性や可動域を伸展させると同時に、馬のメンタルにプレッシャーとリリースによって、肯定的に学習させることが重要なのである。

ステップアウト

 ステップアウトは、馬のノーズを、インサイドレインをテイクして内方へ向けながら引いて、内方後肢をアウトサイドステップさせることである。
 このとき、インサイドレインを内方へテイクするとき、インサイドの脚で馬のショルダーや前肢がインサイドステップしないようにガードする。このことによって、馬は内方へ引かれるがショルダーが内方へ動けないので、後肢や後駆が大きく外方へ動くことになる。

 このエクササイズの効用は、後肢や後駆の可動域が大きくなったりリブケージやネックやショルダーの柔軟性であったりするものの、このとき馬のメンタルが作用するため必ず分岐点があるので、馬の抵抗が軽減したときに、与えていたプレッシャーをリリースしながら、徐々にフィジカルの柔軟性や可動域を広げるようにするとともに、馬のメンタルの従順性と学習機能を考慮してエクササイズをしなければならないのである。

 さらにまた、最初の内はインサイドレインだけで馬のノーズをインサイドへテイクするが、ある程度柔軟性が進んだところで、左右のレインを均等に張ってインサイドへ馬のノーズを引くようにすると、馬の顔がグランドに対して垂直に成り、その上で後肢や後駆のアウトサイドステップさせるようにすると、さらに効果がでるのである。

 このエクササイズの仕上げとして、前肢をインサイドステップと後肢をアウトサイドステップとを同時に行い、柔軟性や可動域の拡大を促すことができるのである。

ノーズエクササイズ

 ノーズエクササイズは、特に馬のショルダーやネックや前肢の柔軟性を養成することが目的である。

 サークル運動で、原則として進行方向の軌道を変えずに、馬の頭の向きを内方と外方へと交互にベンドさせる。このとき、ショルダーは軌道からずれないように左右の脚で維持して、レイン操作で馬のノーズを内方と外方へ向けるのである。
 またこのとき、左右のレインを、均等にプレッシャーがかかるようにすれば、馬の頭はグランドに対して垂直になるのでより柔軟性が増すことができる。

 ライダーが馬のショルダーや前肢の柔軟性を養成することを意図して、このエクササイズをすることが重要である。

 ノーズエクササイズの応用として、ショルダーエクササイズがある。これは、ノーズと運動の軌道を維持して、脚によってショルダーを左右へベンドするようにするもので、ノーズエクササイズと同様の効果を期待できる。

 重ねて注意したいことは、これらのエクササイズのときのレイン操作で、プレッシャーとリリースを怠らないようにして、テイクするレインに対して1回目より2回目、2回目より3回目になるにつれて馬の抵抗が小さくなって、最終的に全く抵抗がなくなることをイメージして行うことである。

 

バックアップ

 バックアップでは、ノーズエクササイズやステップアウトをバックアップで行えば良いだけであり、さらに付け加えれば、バックアップの軌道を維持して馬のネックを左右にベンドするのも良いし、ショルダーを左右にベンドして軌道をS字にしたり、後駆を左右へベンドさせて軌道をS字にしたりすることによって、より効果が期待できる。
 さらに、バックアップのとき、左右のレインをサドルホーンの前で真っ直ぐ上にピックアップして、脚は帯道当たりを軽く両方でバンプするようにすれば、屈撓し後駆が馬体の真下へ入るようにバックアップするので、バランスワークとしても、後駆やネックの縦方向の柔軟性を求めることもできるのである。

 エクササイズは、トレーナーの数だけ方法があり、それぞれに特徴があるが、その目的や作用は、フレームワークとバランスワークに集約できる。

 そして、重要なことは馬のフィジカルとメンタルを、イーブンの割合でライダーがイメージして行うことだ。

 ストレッチすることも、フィジカルを柔軟にすると共にメンタルを従順にすることを同時に行ってこそ効果が現れるので、このことはライダーがこれらの両方をイメージ(完成形や理想)してエクササイズすることでできることで、どちらかを優先したり先行させたりしてできることではないことを認識されたいものである。

 私は、どんなレベルのライダーでも馬を調教する意識で馬に乗ることを主張しているが、この主張は、馬のフィジカルとメンタルをイーブンな割合で認識して馬とコミュニケーションすることで、本稿でテーマにしたエクササイズもまた同様である。

 エクササイズは、主に準備運動の段階で施す場合が多いが、とても重要なことは、馬がどのレベルの柔軟性や従順性を持っているか、その日やそのときのフィジカルやメンタルの状況を、観察して行うことなのである。

 そして、これらのエクササイズによっての効果がどの程度あったのかもまたライダーは把握して行われなければならない。エクササイズを覚えたからといって、馬の状況も見ずに行えば逆効果になるし、却って馬の反抗や抵抗を作ってしまうことになるのである。

 トレーニングは両刃の刃で、良くもなれば悪くもなるものなのである。

 馬のクォリティを高めるためには、ライダーのフィールが大切で、そのフィールとはエクササイズにおいて、プレッシャーに対して抗う馬の力が軽減したときを察知することで、そのフィールを養成するには、エクサイズにおいてフィジカルとメンタルをイーブンに扱う意識を持つことであり、馬の抵抗が軽減するところを見つけようと意識して、プレッシャーをかけることなのである。

2016年1月6日
著者 土岐田 勘次郎


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