Horseman's Column title

    VOL.72「馬のコントロール」


 2016年4月号

 今月のテーマは、馬のコントロールについて考察してみたい。

 馬に乗る人全ては、馬をコントロールしなければならない。

 乗馬の目的に関わらず、全てのライダーは、馬をコントロールすることが必須要件であることは、論を待たないことである。
 しかし、ライダーが馬をコントロールするとは、どういうことなのか、また馬の何をコントロールするというのだろうか。

 馬のコントロールとは、大別すると二つに分けることができると思う。

 一つは、ガイドである。
 馬の動きの方向性をコントロールするということだ。

 もう一つは、馬のモーションである。
 スピードやムーブメント(メカニカルムーブメントまたは、テクニカルムーブメント)などのことで、馬の動きそのものをコントロールするということである。

 以前は、この二つのコントールを、平面的と立体的と表現していた。もっと簡単にいってしまえば、横方向と縦方向のコントロールという言い方もできる。

 つまり 、全てのライダーは、馬のモーションとガイドをコントロールしているということだ。

 馬が動くということは、馬の重心が移動することで、その重心が移動する方向性とモーションをコントロールするのである。

 そして、コントロールとは、ライダーの意図する方向でありモーションであることがこれに該当するもので、馬が勝手に動いてしまうのではコントロールとは言い難い。

 レイニングホースの世界では、馬が勝手に動いたということは、その分コントロールが欠けているとみなされ減点の対象となるのだ。

 然らば、ライダーはどのように馬のコントロールをしているのだろうか。ガイドとモーションをどのようにして、コントロールしているのだろうか。

 馬のモーションは、重心位置と後肢の着地位置によって決まり、後肢の着地位置より前に重心があればメカニカルムーブメントになり、後ろにあれば、テクニカルムーブメントになる。この二つのムーブメントを厳密に分けて馬が運動しいるわけではなくて、この両方を同時に行っているが、重心と後肢の着地位置関係によってその割合が変わるということだ。つまり、重心の位置がより後方にいけばいくほど、テクニカルムーブメントの割合が多くなり、後駆の筋肉運動が活発化して、重心が前方に行けばいくほど、メカニカルムーブメントの割合が多くなり、後駆の筋肉運動を要しないということである。

 例えば、ライダーが前傾すれば、重心が前方に位置することになるので、メカニカルムーブメントの割合が多くなり、後傾したり後肢の踏み込みが深くなれば、よりテクニカルムーブメントの割合が多くなるということだ。

 従って、ライダーは、馬のモーションをコントロールする場合、馬の重心と後肢の着地位置の関係性を形成することによって行っているのである。

 一方、馬の運動の方向性(ガイド)は、どのようにコントロールしているのだろうか。

 

 馬のガイドは、前肢と後肢のステップ角の関係性によって決まるのである。それは、後肢のステップ角に対して、前肢のステップ角が大きければ、前肢のステップ方向へ馬はガイドされ、前肢のステップ角が小さければ、前肢のステップ方向と逆方向へ馬はガイドされる。

 馬のガイドに関しては、ライダーは全く強制力を持っていないために、もっぱら馬の頭脳の学習によるところが大きいのである。

 馬のトレーニングの結果、馬が学習したライダーと馬との約束に則って、馬をガイドする以外に方法はないのである。

 つまり、馬のガイドの精度は、馬の訓練度なのである。もちろん馬のモーションのコントロールも、トレーニングの精度によるところが大きいが、より以上にガイドのコントロールは、トレーニングの成果であり、訓練ができていいなければ、その馬がどんなに才能を持っていても精密なコントロールはできないのである。一方モーションのコントロールは、フィジカル的要素が大きなファクターとなるので、馬が持っているポテンシャルに大きく左右されるのである。

 例えば、レインを左へ引いたとき、馬が左方向へガイドされる場合、馬は物理的に左へ引っ張られるので左方向へガイドされるのではなく、左へレインを引かれたとき偶々左方向へ動いた時、プレッシャーがリリースされたので、これを学習して、レインを左へ引いたとき、左方向へと馬が動くのである。

 運動の方向性には、遠心力や慣性力などの物理的作用は考えられるが、ライダーが馬のガイドをする場合は、ライダーと馬との約束事によってコントロールしていると理解しなければならない。

 何故なら、自然界においてものの動きは、それぞれ異なる物体状に支点と作用点が位置して、作用と反作用の原理で現れるものだが、乗馬の場合、ライダーが馬のコントロールをするという観点において、その支点と作用点は馬体という同一物体状に位置するので、作用と反作用の力は相殺され馬の動きには全く作用しないのである。
 つまり、脚で押してもどこかでこれと全く逆方向に同じ力で支えているし、レインをを引いてもどこかでこれと全く逆方向で同じ力で支えているので、馬が動くということには全く影響しないのである。

 馬が動くためには、グランドと馬との間で作用と反作用の作用が働かなければならないのである。
 従って、馬をガイドする場合は、ライダーと馬との約束事に則って、馬の学習力によらなければできないことなのである。

 ライダーが馬に対し持っている物理的強制力は、ライダー自身の体重であり、馬体の各パーツ(ヘッド、ショルダー、リブケージ、ハインドクォーター)の位置関係を接近させたり遠ざけたりすことである。つまり、馬のフレームを形成することにおいて、ライダーは強制力を持っているのである。
 例えば、内方姿勢をとったり、屈撓させたり、収縮させたりすることにおいて、ライダーは強制力を持っているのである。

 例えば、馬の背中を支点にして馬の口をレインで引けば、馬の首を横方向へ曲げることができたり、馬の背中を支点にしてレインを上方向へピックアップすれば、収縮したり屈撓させたりすることができるのである。

 そして、馬の姿勢は、重心の位置や後肢の着地位置などをコントロールすることになり、馬のモーションや運動方向に大きな影響力を持つのである。

 従って、ライダーは、馬の姿勢の形成の強制力を発揮して、これをコントロールし、間接的に馬のモーションとガイドをコントロールしているのである。

2016年3月1日
著者 土岐田 勘次郎


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