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    VOL.75「チェンジリード」


 2016年7月号

 今月のテーマは、チェンジリードで、日本語では、踏歩変換という。

 チェンジリードを解説するためには、馬の歩法について解説する必要がある。

 馬の歩様(Gaitゲイト)は、4種類で常歩(Walk)・速歩(Trot or Jog)・駈歩(Lope or Canter)・襲歩(Gallop)で、4肢の運歩によって馬は重心の移動を行って動いている。

 常歩は、A ①右後肢 ②右前肢 ③左後肢 ④左前肢 または、B ①左後肢 ②左前肢 ③右後肢 ④右前肢 以上のような順序でステップしている。これは、Aのパターンは重心が①②③④の順に移動しており、馬の頭は、この重心移動を促すように、①左上へ上がる ②左下へ下がる ③右上へ上がる ④右下へ下がる というように動くのである。Bのパターンも同様である。

 そして速歩は、A ①右後肢と左前肢 ②左後肢と右前肢 または、B ①左後肢と右前肢 ②右後肢と左前肢という順序でステップしており、①と②の間で、馬の4肢は同時にグランドを離れジャンプアップする。

 更に、駈歩は、A左リード ①右後肢 ②左後肢と右前肢 ③左前肢、または、B右リード ①左後肢 ②右後肢と左前肢 ③右前肢 という順序でステップし、③から①へのステップの間で、馬の4肢は同時にグランドを離れジャンプアップする。

 襲歩は、A左リード ①右後肢 ②左後肢 ③右前肢 ④左前肢 B右リード ①左後肢 ② 右後肢 ③左前肢 ④右前肢 という順序でステップし、②と③の間で、馬の4肢は同時にグランドを離れジャンプアップする。

 チェンジリードに関しては、馬体の中で重心移動がこれらの歩様でどのように移動しているかが重要で、全ての歩様で馬は、外方後肢から内方前肢へ向かって重心移動しており、Aのパターンでは、右後肢から左前肢へ、Bのパターンでは、左後肢から右前肢へと重心移動しているのである。
そして、対角線上の肢へと重心移動する過程において、同じ側の前肢を経由しているのである。

 さて、本題のチェンジリードは、馬の運動において、馬体の対角線上を移動する重心の移動方向を切り替えることだといえるのである。
 つまり、馬の4種類の歩様で、Aのパターンでは右後肢から左前肢へ、Bのパターンでは左後肢から右前肢へと移動する重心を、その反対へ切り替えAからBへ、またはBからAへと切り替えることなのである。

 従って、チェンジリードのトレーニングは、4種の歩様全てにおいて行うことができ、駈歩でフライングリードチェンジをする準備として、常歩や速歩でこの重心移動方向の切り替えを充分訓練しておくことによって、駈歩でのチェンジリードが容易になるのである。

 

 また、重心移動がし易いという観点でいえば、収縮(Collection)である。

 チェンジリードのトレーンニングの難しい馬は、馬体内での重心移動の方向の切り替えが難しい馬で、常歩や速歩で充分トレーニングする必要があるが、一方で収縮を容易にできる馬にすることによってもチェンジリードを容易にできるようにすることができる。

 収縮は、重心の近くへ4肢を持ってくることなので、重心移動方向の切り替えが物理的に小さなアクションでできるようになるからで、収縮していない馬は、重心移動の方向を切り替えるためには、外方後肢と内方前肢を直線上に位置させて重心移動しているのを、反対側の内方後肢と外方前肢を直線上に位置させて重心移動するように切り替えることがチェンジリードなので、重心から4肢が遠くで運動しているとAパターン(右後肢と左前肢が直線上に位置する)からBパターン(左後肢と右前肢が直線上に位置する)へ切り替えるためには、前後肢共に物理的移動距離が大きくなり、収縮しているとこの物理的移動距離が小さくなるので馬は比較的やり易くなるのである。

 馬体の対角線を、右後肢から左前肢の線と左後肢から右前肢の2本を書くと、X字が書ける。重心から遠くで運動している馬の4肢は、この2本の線のX点(中心)から遠くに位置しているので、AからBへ切り替えるためには前後肢共に移動距離が大きく、収縮している馬は、4肢がX点の近くに位置しているので、AからBへ切り替えるのに、前後肢とも移動距離が小さくなるので、結果的に収縮している馬は、チェンジリードがし易くなるという理屈である。

 そしてまた、留意しなければならないことは、我々が求められるチェンジリードのシチュエイションは、運動方向の切り替えと同時にしなければならないことが多いということで、運動方向の切り替えをチェンジリードに必要だと思い込んでしまうことである。
チェンジリードは馬体の何処を通って重心が移動するかであって、馬そのものがどちらへ向かって移動するかとは一致しないことなので誤解しないで欲しいものだ。

 常に運動方向の変換とチェンジリードの変換を一緒に行っていれば、馬は方向の変換とチェンジリードを一緒に行うように学習してしまって、ライダーが望んでいないのにリードを変えてしまうような馬になってしまうのである。

 チェンジリードに限らず、同じ場所で同じことを馬にさせていれば、馬はその場所へ行けば命じられずとも覚えたことをやってしまうようになるので、ライダーは、場所とキューイングをランダムにしてパターン化しないように努めなければならない。

2016年6月9日
著者 土岐田 勘次郎


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