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    VOL.86「乗馬におけるインテンション(Intention 意図)」

 2017年6月号

 今月のテーマは、乗馬におけるインテンション(意図)で、ライダーが何を意図するかによって、馬に対して命じていることが同じ運動であっても、その結果が全く違うものとなることについてである。

 2回に亘ってライダーのフィールの養成について考えたが、フィールとは接触点の圧力を感じるセンサーであり、この圧力とは客体が持つ位置エネルギーであり、ロープ自体は張力が大きいものではないが、ぴんと張れば張力が生まれる。その張力をテンションといい、テンションを感じる能力がフィールで、人の主張を意図として持つことをインテンションというのである。

 さて、馬のトレーニングのためのストレンチやエクササイズにおいて、トレーナーの意図がこの効果に大きな影響を持ち、意図の有り様によって効果は全く違ってしまうものになるので、どんな意図もってその運動を行うかを重要だと考えなければならない。

 バックアップのとき、バックアップをしようという意図であれば、馬がバックアップすればライダーは馬が従ったと判断する。しかし、後肢の踏み込みを作ろうとしてバックアップすれば、ライダーは馬がバックアップしただけでは満足せず、後肢の踏み込みが深くならなければ要求を繰り返すことになるので、結局馬は後肢を踏み込んでバックアップするようになるので、唯単にバックアップするだけなのか後肢の踏み込みが伴うのかというように、同じバックアップでもライダーの意図の有り様によって、馬に要求する内容が違ってくるので、当然結果もまた異なったものとなるのである。

 また、ビットコンタクトに対する柔軟性を求めるトレーニングにおいても、ライダーの意図がビットの反応だけであれば、ビットプレッシャーだけを与えることとなり、バランスバックによってビットの反応を柔軟にしようという意図を持てば、ビットのピックアップと脚やシートのプレッシャーのコンビネーションによって、これを達成しようとするので、当然結果もまた全く違ったものとなるのである。

 以上のように、ライダーの意図が結果を左右するのは当然の理であるにも関わらず、日頃当たり前のように行っている運動を、ライダー自身が自分の意図をことさら認識せずに実行していることによって、実行効果が現れなくても繰り返し行われている実情がある。

 「バックアップ」・「尻馬」・「チョモランマ」・「ピーチアップ」・「山のあなた」など我がランチでトレンドになっているテーマがあるが、これらのことも問題がライダーの意図なのであり、どんな意図を以てこれらのエクササイズを実行するのかによって、ことの成果が決定するのである。

 多くのライダーの特徴は、ビットコンタクトをしたりシートや脚のプレッシャーをかけたりするとき、ワンサイドの意図しか持っていないことがある。つまり、ビットコンタクトは馬の頭の左右の向きや上下をコントロールしようという意図を以て行い、脚のプレッシャーは前肢や後肢の動きやその方向をコントロールしようという意図を以て行うように、それぞれのコンタクトをそれぞれ単体として意図するようなのである。
 しかし、ビットコンタクトする場合にはシートや鐙を支点にしており、また脚やシートでプレッシャーをかける場合でも、ビットや反対側の鐙などが支点となっている。


 従って、作用点だけを意図するのはなく支点における影響を一体的に意図して行うべきで、ビットコンタクトの場合でもシートや脚を支点にしているので、ビットコンタクトの反応と同時にシートや脚によるプレッシャーに対する反応を一緒にライダーは意図しなければ、馬は少なくても作用点と支点の両方からプレッシャーがかかっているにも関わらず、ライダーが作用点のみの反応しか意図しないのであれば、片手落ちになるのである。

 本来は、作用点と支点の両方から馬はプレッシャーを受けているのであるから、例えば、馬の頭を下げたいという意図でビットコンタクトする場合、シートや脚を支点にしているのであるから、この支点でのプレッシャーは後肢をふみこませるように働くとすれば、ライダーは後肢を踏み込ませて頭を下げるという意図を以て、ビットコンタクトしなければならないことになる。

 このように考えると2つを意図しなければならないことになって、一方を強く思うと一方を失念するということが起きてしまうので、回転モーメントいう概念を持つ必要があるのである。

 例えば、ビットコンタクトを上方向へピックアップして、シートを支点にするとことによりビットコンタクトの反作用として下方向へ力がかかることになり、このことで回転モーメントが生まれ、結果として後肢が伸展して頭が屈撓することになるので、屈撓することと後肢の伸展は一体的現象として起きることなので、予めライダーは後肢の伸展と屈撓とを意図してビットコンタクトすれば、馬の反応がこの意図に合致するかどうかを判断されることになるのである。

 ライダーが馬に対してかけるプレッシャーは、作用点と支点とにおいて一体的にパワーがかかることによって成立する力で、この支点と作用点の力は、全く逆方向で大きさが同じになるので、直線上に位置すれば引き合いになるか押し合いになるかということであり、パラレルになれば回転モーメントとなるのである。
 何れにしても、最低2点間でプレッシャーが成立しているのであるから、ライダーの意図は、この2点において起きる現象を意図として持たなければならないのであり、運動の成果や結果はライダーの意図によって大きく変わるのであるから、とても重要だと認識する必要があるのである。

 また、ライダーのスキル養成の視点で意図を考えると、ライダーが意図することに合致するかどうかで、馬の反応認知し、その正否を判断するのであるから、意図することによって意図することに関するフィールや判断力や結果の予測能力などのスキルが養成されることになるのである。

 結論は、ライダーが持つ意図によって、ライダー自身も馬も成長が決定付けられるのであるから、ライダーは自分が何を意図しているかという認識を絶えず持っていなければならないのであり、問題が発生したり成功したりしたときに、自らの意図と結果とを検証をすれば、解決やコンスタントな成功を企画することが可能になるのである。

2017年5月22日
著者 土岐田 勘次郎

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