Horseman's Column title

    VOL.90「Work at Top of The mountain」「頂上で、仕事をする」

 2017年10月号

 今月のテーマは、「頂上で、仕事をする」について解説したいと思います。

 頂上とは、後肢がマックスに踏み込んだ状態を定義します。

 そして、仕事を頂上でするとは、マックスに後肢が踏み込んだ状態(頂上)で、ストレッチなどの準備運動や、駈歩の発進やスピンの始動やチェンジリードやロールバックなどのパフォーマンスをするという意味です。

 しかしながら、マックスに後肢が踏み込んだ状態を作れるライダーは、最上級レベルなので、そうそう簡単なことではないので、これを便宜上段階的に考えるようにすることで、誰でも頂上で仕事ができるようになるのです。



 タッチアンドリリースのシステムで、馬のリスポンスを作るとき、先ず、初期段階の頂上を作る。

 初期段階の頂上とは、ライダーの姿勢で作るものです。

 ライダーの姿勢として、上体をグランドに対して垂直にシーティングし、鐙に体重を負重することを最小値にする。つまり、鐙を踏み込まないようにして、極力シートに全体重を掛けるようにすることです。
 これだけで、初期段階の頂上になります。

 ライダーの上体をグランドに垂直にすることは、鐙に体重を掛けないようにするため、また上体を前傾または後傾することによって、体重が複雑なモーメントを作り、結局馬の前肢へ負荷をかけることとなって、後肢の踏み込みを浅くしてしまう要因になってしまうのです。
 更に鐙に体重を掛けないように軽く腿をサドルから浮かすように(実際に浮かさなくても、サドルを腿で押さえ込まないようにする。)して、シートに全体重を掛けることにより後肢への負荷を大きくすることができるので、後肢の踏み込みを促進することができるのです。

 さて、ライダーのポジショニングによって初期段階の頂上を作り、この状態でストレッチやステップのエクササイズを行うのです。

  初期段階の頂上でのストレッチによって柔軟性が養成できると、ライダーのポジショニングによって、2次的頂上が生まれます。つまり、馬が柔らかくなったので、ライダーのポジショニングで、後肢へライダーの体重が負荷されることによって、柔軟性が増した分だけ後肢がより踏み込むことになり、2次的頂上が生まれるのです。

 2次的頂上によって、更にストレッチやエクササイズをすれば、更なる柔軟性やリスポンス(反応)が養成されます。更なる柔軟性やリスポンスが養成されることによって、3次的頂上が生まれるのです。

 以上のように、山の頂上で仕事をするには、最初からマックスに後肢を踏み込ませるだけのスキルがなければできないと考えがちですが、今できる程度の頂上 でストレッチやエクササイズを行い、その1次的頂上で柔軟性やリスポンスが増幅したら、その柔軟性によって2次的頂上が実現できて、2次的頂上でストレッ チとエクササイズを行い、2次的頂上で柔軟性とリスポンスが増幅したら、3次的頂上が実現できるという循環性を作り出することができて、最終的にマックス の頂上を創出できるというシステムです。


 このように、現状できる頂上でストレッチやエクササイズを行い、更にこれによってできた柔軟性やリスポンスで、次の頂上で仕事をするというように、ライダーが意識するのは、絶えず頂上で仕事するということで、この循環を機能させることができるのです。

 更に重要なことは、パフォーマンスにおいても、その時点でできる頂上でスタートすることで、飛躍することができることです。

 例えば、トレーニングしている過程において、ウォークからスピンをスタートするとき、頂上で始めるようにすることで、スピンはより軽快に回転することができます。何故なら、後肢への負重が大きくなることによって前肢への負重を軽減することができるからです。
 そして、段階的に頂上を推し進めることで、更に軽快なスピンができるようになります。

 また、ストップのトレーニングでのフェンシングでは、そのディパーチャーで、頂上を作ってからスタートするようにすれば、ランダウンの途中でバランスの切り替えをする必要がなくなります。
 つまり、原則としてバランスバックの状態でスライディングしたいので、バランスフォーワードでスタートすれば途中で、バランスシフトを切り替えなくてはなりませんが、とても困難で簡単にできることではありません。馬にとっても走行中に、バランスを切り替えることはハードなことなのです。
 従って、ディパーチャーで頂上を作ってからスタートすることで、最初からバランスバックなので切り替える必要がなくなりシンプルになり、ライダーにとってもこれを意識するだけで、スライディングのためにしなくてはならないことがより明確になり、結果的にパフォーマンスがより飛躍できるのです。

 以上のように、レイニングのパフォーマンスは、その精度やクォリティが重心の位置によって大きく左右されます。
 
 重心は、質量の中間点ですが、その重心が馬体の何処に位置するかによって、運動のメカニズムが変わります。
つまり、馬体を物理的長さの真ん中を中心と定義すれば、重心が中心より前に位置すればバランスフォーワードで、ムーブメントはメカニカルとなり、重心が中心より後ろに位置すれば、ムーブメントはテクニカルとなります。そして重心の位置が中心と一致すれば収縮(コレクション)となり、バランスの切り替えが容易になるのです。

 サークルにおいてのスピードコントロールは、バランスフォーワードでハイスピードにし、バランスバックでスローダウンするものです。またスピンは、バランスバックで前肢への負重を軽減して回転運動をするものです。チェンジリードは、バランスセンターでステップの順序と運動エネルギーのベクトルを切り替えます。スライディングストップは、バランスバックでランダウンをして、後肢の着地位置を重心より前にしてグランドコンタクトを維持してスライディングするものなのです。



 後肢の踏み込みのマックス状態を頂上と定義すれば、馬は通常山の麓にいる状態で運動をしているといえます。何故ならバランスフォーワードが自然な状態だからです。しかしパフォーマンスをするためには、頂上をトレーニングで訓練しなければできないものなのです。

 段階的に頂上を創出すれば、ライダーにとっても馬にとっても容易にその階段を上って行けるものなのです。

2017年9月16日
著者 土岐田 勘次郎

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