Horseman's Column title

    VOL.102「馬の反抗とその対策」

 2018年10月号

 今月のテーマは、馬の反抗であります。

 乗馬の世界には、「馬が壊れる」ということが良く云われる。
 調教が壊れるという意味のことで、パフォーマンスが悪くなったり、指示に対する反応が鈍くなったり、抵抗を示すようになったり、反抗したりすることを指しています。

 馬が反抗している現象を見ると、ライダーが馬に対しての要求が、激しかったりハードだったりしても反抗しない場合があり、それほどハードでなく厳しく要求しているわけでもないのに反抗する場合がある。従って、優しくすればすむというものではないのである。

 馬の混乱や抵抗やストレスが蓄積して、フラストレーションや反抗に繋がる。何故、混乱や抵抗やストレスが蓄積してしまうのだろうか。
 また、馬に混乱や抵抗やストレスが発生しているとき、ライダーにもまた同じようなことが発生しているのである。

 馬は、ライダーの要求の意味が理解できずに混乱したり、要求の意味が理解できたとしても、要求に応えられる能力を有せず抵抗したり、要求されるばかりでストレスが蓄積されたりして反抗するようになる。

 一方何故、ライダーに混乱やストレスが発生するのか。
 思うように馬がいうことを聞いてくれないとか、要求が馬によく伝わらないとか、要求を馬が理解してくれないとか、馬が落ち着かないとかのような現象が発生して、ライダーが馬と同じように混乱したりストレスを感じたりしてしまうのである。

 ではどうして、ライダーと馬との間で意思の疎通が食い違うのでしょう。

 ライダーのスキルの問題や馬の能力の問題があることは事実でしょう。しかし、必ずしもライダーがビギナーであっても馬が反抗しない場合もあり、馬の能力がライダーの要求に充分であるケースは少ないので、これらを理由にできないのである。
  また、馬の能力がライダーの要求に応えるのに充分でないということは、トレーニングそのものは、馬の能力を引き上げるものであり、このトレーニングにおいて必ずしも馬が反抗するわけではありませんので、馬の能力不足は馬の反抗とは必ずしも直結するものではないといえます。

 馬の反抗の問題は、ライダーが馬に対して要求していることと、馬が要求されていることとが違うことによって起きているのではないでしょうか。

 ライダーの要求は、駈歩の発進やストップやスピンや進行方向の変換であります。一方、馬は駈歩発進やストップやスピンや進行方向の変換を要求されていると思っているのでしょうか。
 もし、ライダーの要求している認識と、馬の要求に対する認識とが一致しなければ、ライダーも馬も混乱します。

 馬が、ライダーが要求していると思っている認識と一致した認識を持つためには、ライダーから馬に対して送るシグナルが、駈歩発進とストップとスピンと進行方向の変換がそれぞれ違わなければ、馬はそれぞれの要求を区別できません。そして、ライダーが送るシグナルは、ビットや脚によるプレッシャーでしかありませんので、それほどの違いがあるわけではありません。
 また、シグナルをそれぞれの要求にあった違いを作ることは可能ですが、これらの違うシグナルを区別して理解できる能力を馬が持っているとは思えません。


 従って、馬が要求されている認識を変えることができないのであれば、ライダーの認識を変える必要があるのです。つまり、ライダーは、駈歩発進やストップやスピンや進行方向の変換という要求の認識を持っている限り、馬の混乱や抵抗やストレスや反抗を回避できないのです。



 ライダーが馬に対して与えるプレッシャーは、馬がライダーの指示に従ったときそのプレッシャーをリリースし、指示に従わなかったときそのプレッシャーを増強するのがライダーと馬とのコミュニケーションの原理原則である。

 この原理原則に則っても、ライダーの指示に対する認識と馬が受ける指示に対する認識とが一致しなければ、馬が混乱やストレスや反抗をしてしまうので、原理原則が正常に機能しないので、ライダーの指示の認識を改めることが必要で、それはプレッシャーのベクトルで、馬は指示のプレッシャーをそのベクトルとして認識するのである。

 つまり馬は、ライダーから受けるプレッシャーをその方向性として、受け止めているのである。例えば、右から左へプレッシャーをかければ、右から左方向へと馬が動けば指示に従ったことになり、左から右方向へ押し返せば指示に逆らったことになるのである。従って、ライダーは、右からプレッシャーをかけた時、馬が左方向へと動いた場合は、指示に従ったのであるからプレッシャーをリリースしなければならないのである。もし、このときライダーが駈歩を求めていたとしても、馬が駈歩をしなくても左へ動いたらプレッシャーを一旦リリースする必要があるのです。そして、次にプレッシャーを徐々に強めて駈歩になるようにします。
 このとき、駈歩をしないからといって馬が逆らったという認識を持ってしまうのか、馬は指示に従ったのだけれども少し勢いが足らなかっただけだという認識を持つのでは、まるで馬に対する感じ方が違ってくるのです。

 馬に反抗されないようにするためには、または反抗されてしまっても反抗をなくすためには、ライダーが指示をして、その方向性を馬に守らせることをマストだと認識して、一歩でもその指示に従ったとき必ずかけていたプレッシャーをリリースして、指示方向へ馬が動かなかったときは、先ず一歩指示方向へ動かすようにプレッシャーを増強して、一歩従ったとき必ずプレッシャーをリリースするようにすることで、反抗の発生を防ぐことができるし、反抗をなくすことができるのです。



 馬に反抗されるライダーの多くは、指示のベクトルがいい加減になっている人が多く、また反抗されたときにも馬の勝手な方向を許してしまっているのです。

 大局的には、馬が従順にライダーに従うことを目的に馬に乗るわけですから、その従うとは、ライダーの指示のベクトルに沿って馬が動くということが原点だと理解しなくてはならないのです。

2018年9月15日
著者 土岐田 勘次郎

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