VOL.104「スピンターンのトレーニング」

　2018年12月号

　今年も早いもので、最終回です。
　一年間、ご愛読頂きありがとうございました。来年もよろしくお願いします。

　今月は、スピンのトレーニング法について解説したいと思います。



　スピンは、前肢のクロスステップとピボットターンといって内方後肢が軸肢となって回転運動をします。このとき、より速くスムースな動きが求められ、軸肢のエリアが同じ場所で移動しないことや前肢のステップもジャンプアップしないように滑らかな動きが求められます。

　トレーニング法は、トレーナーによって様々ですが、完成しているスピンを見ると前後肢共にクロスステップし、インサイドステップしています。しかし私は、前肢はステップインして後肢はステップアウトしていると考えています。つまり、前肢と後肢は逆方向のステップをしており、左スピンであれば、前肢は左方向へステップし、後肢は右方向へステップしているのです。

　従って、トレーニングの初期段階では、後肢のステップアウトをします。内方後肢のステップアウトによって、内方後肢が重心の真下へステップするようにします。このため、レインで馬の頭を内方へ誘導します。そして、内方脚で馬のショルダーが内方へ移行しないように阻止します。レインで内方へ誘導する力とこれを内方脚による阻止する力の反作用として、内方後肢がステップアウトします。
　内方後肢のステップアウトは、内方後肢を起点として一辺を内方前肢ともう一辺を外方前肢とを結ぶ線でできるトライアングルのゾーンにステップすることが望ましいのです。内方後肢がより深く踏み出すことによって重心の真下に位置して充分に馬体重を支えます。
　そして、内方後肢がステップアウトした時点で、外方レインを前進気勢と抑制するようにブレーキかけることによって、前肢がインサイドへクロスステップするように誘導します。このときに、前肢のインサイドのワンステップをしたところで、プレッシャーをリリースしてウォークアウトします。

　以上のように、内方後肢のアウトサイドステップと前肢のインサイドステップを繰り返して、内方後肢のアウトサイドステップによる重心の負重と前肢のインサイドステップを同時にトレーニングします。
　前肢のクロスステップのワンステップでリリースしてウォ−クアウトし、確実な内方肢のステップアウトと、外方レインによる前肢気勢のブレーキで前肢のクロスステップの反応することが確実になるまでこれを繰り返します。

　前肢のクロスステップは、最初のワンステップが確実になることが重要で、確実に反応するようになれば、360度ターンすることは簡単にできるのです。ワンステップに確実性を作らずに1，2，3とステップを急げば、内方後肢の軸が不確実になったり、前肢のクロスステップが不正確になったり、スピンの精度が著しく失われてしまうリスクが伴います。

　馬のトレーニングは、急がば回れなのです。

　内方後肢のステップアウトの初期段階のトレーニングにおいて重要なことは、前進気勢であり内方後肢がより前にステップすることです。真横にステップアウトすることは良くありません。前進気勢を与えながら内方レインと内方脚との作用によって、反作用として内方後肢にステップアウトを促します。

　スピンは、内方後肢のステップアウトと前肢のステップインで構成される運動なのです。

　多くのトレーナーが前肢のスムースなクロスステップが作れないのは、前後肢共ステップインだと考えているからなのです。このように考えているから、前肢のクロスステップからスピンを作ろうとして、失敗しているのを見かけます。
　失敗例としてよく見かけるのは、前肢がクロスオーヴァーしないで、外方前肢が内方前肢の後ろを回ってしまったり、後肢の方が回転運動をしてしまって、前肢が動いていなかったりしてしまうのです。



　内方後肢のステップアウトは、飽くまでも重心の負重が目的で、この目的が果たせることで前肢の軽快なステップに貢献するのです。トレーニングが進めば、前肢のクロスステップや内方後肢の重心の負重が容易になると、自然に軸肢である内方後肢のポジショニングが良くなり、後駆が回転運動をしてしまうことはありません。

　また、ロングフットといって、外方後肢が軸肢となってしまうスピンは、前肢のクロスステップからスピンを作ったり、クロスステップを急いだりすることによって起きるリスクなのです。充分な内方後肢による重心の負重ができるようにすることによって、このリスクを回避することができるし、ロングフットになっている馬を矯正する場合は、内方後肢の改善が重要なのです。