Horseman's Column title

    VOL.107「馬のトレーニングの概念」

 2019年3月号

 今月は、レイニングホースのトレーニングの概念について、解説したいと思います。



 人は、意識するしないに関わらず何らかの概念に囚われて行動するものです。つまり、人の行動を支配しているのは、自らが持っている事象に対する概念なのです。
 従って、馬のトレーニングをするときに、どのような概念を持っているかを検証することは、トレーニングの成果を見ることや、更なるレベルアップを期すためには、必要なことなのです。

 私の場合、馬に乗った時に最初にチェックすることは、ガイドの良し悪しです。

 例えば、サークルのガイドをするときに、左右のレインと脚とでガイドするとき、特に外方のレインと脚との誘導により、馬の外方前肢が最も外側、次に外方後肢、次に内方前肢、そして一番内側に内方後肢が位置してサークルのガイドができるかどうかです。

 このとき、一番外側に外方前肢が位置しないときは、これを修正します。しかし、直ぐに修正できないとき、ストレッチやエクササイズを施して、これを修正します。それでも、修正できないときは、その問題点をネックやショルダーやリブケージやフランクや後肢などの馬体のパーツの問題として、その柔軟性を特定し課題として残します。

 この馬の姿勢は、推進力を主に外方後肢が役割を果たし、内方後肢が馬体重を主に支える役割を果たすことを可能にしているのです。つまり、内方後肢が体重を支えるから外方後肢が推進力を発揮でき、外方後肢が推進力を発揮するから内方後肢が体重を支えることになるのです。

 以上のことを踏まえて、ウォーク・トロット・ロープを行います。



 そして、スピンのトレーニングを行うときに、常歩のサークル運動において、前述した馬のフレームを形成して、内方後肢がより馬体の真下に踏み出すことを促しながら、外方レインで外方への運動パワーを拘束して、前肢の内方ステップを促します。
 基本原則として、サークル運動のとき、馬のフレームにおいて外方前肢が最も外側、次に外方後肢、次に内方前肢、そして一番内側に内方後肢が位置して動くことで、スピンのステップを要求しながら、絶えずこのフレームワークの精度を上げるようにトレーニングを進めるのです。


 サークルのトレーニングは、スピンと全く違うところはなく、常歩や速歩でこのフレームワークを施します。ガイドやカデンスに問題があれば、このフレームワークの精度を上げることで修正をします。

 チェンジリードのトレーニングは、その概念としてサークル運動のときのフレームの切り替えがチェンジリードだと考え、ショルダーまたは前肢の位置を固定した場合に、後肢の位置関係を切り替えることなのです。
 それは、外方前肢に対して外方後肢が内側に位置して走行しているところを、例えば、左前肢に対して左後肢が内側に位置して走行しているとすれば(右リードの駈歩)、このとき右前肢より内側に右後肢が位置しているので、これを切り替える。つまり、右前肢の外側に右後肢が位置するように切り替えれば、左リードへチェンジリードすることになるのです。
 このとき右サークル運動をしているかどうかは問題ではなく、右サークル運動を継続したままでもこれを行うことができるのです。

 ランダウンのトレーニングは、先ず直線運動の馬のフレームは、原則として2蹄跡運動を理想として考えます。
 例えば、左リードで直進運動をするとき、左前肢と右後肢が直線上に位置し、右リードの場合は、右前肢と左後肢が直線上に位置することです。理想とまで行かない場合でも、左リードの直進運動では、右前肢より左側に右後肢が位置して運動をするようにします。右リードの直進運動では、左前肢より右側に左後肢が位置して運動するようにします。
 この直進運動は、スライディングストップのためのストライドのエクステンドをしながら推進することに直結する重要なファクターなのです。
 何故なら、外方後肢の推進力が馬体全体に効率よく反映するために必要欠くべからざることだからです。

 ロールバックの場合は、ストップしたときの馬の姿勢と体勢が重要で、ランダウンが二蹄跡運動であることと密接な関連性を持ち、外方前肢より外方後肢が内側に位置しランダウンして、そのままストップの態勢に入れば、外方前肢の内側に外方後肢が位置してストップします。そしてその直後に、外方へターンするときに、例えば左ロールバックの場合は、ストップの体勢は、左前肢より左後肢が内側に位置しているので、左後肢が充分馬体重を支えることができるので前肢のサイドステップを容易にし、そして更に右後肢の推進力が発揮しやすくなるので、ロールバックを可能にしているのです。

 以上のように、トレーナーやライダーは、馬にパフォーマンスを要求したりそのレベルアップを図ろうとしたりする場合に、スピンやサークルやチェンジリードやスライディングストップのそれぞれの精度のアップや要求をするときに、それぞれ特化した特徴だけに囚われてトレーニングするのか、それとも共通するファクターを重要視して、絶えず共通するファクターに立ち返るようにするかは、トレーナーやライダーに潜在する概念によって決定付けられているものなので、折に触れて自分はどのような概念を持っているかを検証することが重要なのです。

2019年2月18日
著者 土岐田 勘次郎

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