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    VOL.108「トレーニングの仕様」

 2019年4月号

 今月のテーマは、馬のトレーニングの仕様です。

 仕様とは、どのような材料をどのように加工して作るかというようなことで、物作りの詳細な内容のことです。



 レイニングホースのパフォーマンスには、サークルやスピンやチェンジリードやロールバックやストップがありますが、これらのパフォーマンスを可能にするために、馬が備えなければならない要素があります。

 要約すれば、部品の柔軟性や可動域の拡大による運動機能の養成と、それらの部品の組み立てとの二つがトレーニングであります。
 これを別の言い方をすれば、ストレッチとエクササイズとなり、ストレッチは、主に馬体の部位の柔軟性と可動域の拡大を養成し、エクササイズはそれらの部位を組み合わせて運動機能を養成することで、フレームワークとバランスワークとがあります。

 レイニングホースのクオリティをアップするためには、馬体のパーツの柔軟性と可動域の拡大を図り、各パーツの運動機能を養成した上で、これらのパーツを組織的組み立てによってこれを行います。

 馬体のパーツは、ヘッド・ネック・ショルダー・前肢・リブケージ・フランク・ハインドクォーター・後肢です。

 馬の基本的フレームは、トゥートラック(二蹄跡)で、ヘッドとショルダーをストレートに保ち、内方前肢の直線上に外方後肢が位置することにあります。つまり、このフレームを内方姿勢ということもできます。
 この基本的フレームは、駆動エネルギーの効率化のためにあり、運動エネルギーが馬体の重心を通過することによって、合理的に運動効率化がなされ、無駄なエネルギーを消費しないようにするためにあります。

 この姿勢を求めるときに要求される馬の運動機能は、特に外方後肢が内方前肢に向かってステップすることで、外方後肢が少なくても外方前肢の位置を越えて内方へステップする柔軟性と可動域が求められます。
 このために、外方のフランクの柔軟性を養成して、外方後肢のインサイドステップを容易にできるようにすると共にストライドを伸ばします。

 ここで、ストレッチの基本的考え方を解説することにします。

 ストレッチは、馬体のパーツの柔軟性と可動域の拡大を図ることを目的に行います。
 そして、実際のストレッチを行う場合、該当するパーツの前後左右に隣接するパーツを支点にして行います。

  ヘッドやネックの柔軟性を養成するには、隣接するパーツがショルダーとフロントレッグになりますので、ショルダーとフォロントレッグが支点となり、ヘッドを右へベンドさせる場合は、右側のショルダーと右前肢とが支点になり、左へベンドさせる場合は、左側のショルダーと左前肢が支点になってストレッチを行います。

 ショルダーと前肢の柔軟性を養成するには、隣接パーツがヘッドとネックやリブケージやフランクやハインドクォーターや後肢となります。従って、ショルダーと前肢の柔軟性を養成する場合、ヘッドとネックが支点となる場合と、リブケージやフランクやハインドクォーターや後肢を支点としてストレッチします。

 ハインドクォーターと後肢の柔軟性を養成するには、隣接するパーツがフランクとリブケージとショルダーと前肢となり、これらのパーツを支点としてストレッチします。


 以上のように、ストレッチして柔軟性や可動域を拡大するためには、そのパーツに隣接するパーツを起点にして、支点のパーツを越えてストレッチするパーツをツイストさせて動かすことで、ストレッチするパーツを反作用としての動点として、ツイストやベンドさせることによって行うのです。

 そして、フレームワークとしての内方姿勢や収縮などは、隣接するパーツの相互関係における組織的組み立てによってなされるもので、以下はこれらを解説することにします。

 内方姿勢とは、ヘッドとショルダーをストレートに保ち、このときのショルダーの位置に対してハインドクォーター(後駆)が内方に位置する姿勢で、このとき主に要求されるパーツの柔軟性や可動域は、ハインドクォーターであり外方後肢なのです。
 従って、外方後肢の柔軟性や可動域に問題あるときは、内方姿勢が取りにくいということになり、これを改善することは、外方後肢の柔軟性や可動域を養成する必要があり、フランクやリブケージに問題がある場合もこの症状を生むので、これらを改善するようなストレッチが必要だと考えるのです。

 収縮(コレクション)とは、ショルダーに対してヘッドを低く保ち屈撓し、後肢が馬体の真下近くへ踏み込んだ状態のことで、ネックの柔軟性やフランクやハインドクォーターの柔軟性が主に要求されるものです。
 従って、このことに問題が生じたときは、これらのパーツの柔軟性や可動域に問題があるので、これらのパーツの柔軟性や可動域を養成するストレッチを行って修正するのです。

 またショルダー及び前肢の柔軟性を見落としがちですが、これもまた大変重要で、これを養成するには、ショルダーを固定して前肢のステップを促したり、前肢のステップをストレートに保ちネックを左右にベンドさせたりして養成します。また、ヘッドとショルダーをストレートに保ち、前肢のインサイドステップをさせることによって行います。このとき進行方向にヘッドが向くこと阻止しショルダーの位置に止めて、前肢のステップを求めます。
 これをステップファーストといい、ステップファーストとは、重心移動の前にステップすることで、これに対して重心移動の後にステップすることを、ノーズファーストといいます。

 またバランスワークとして、バランスバックがありますが、バランスバックとは、馬の重心をより後ろに移行させることですが、実際の多くはバランスの移行がないわけではないですが、主に重心が移行するわけではなくて後駆を重心の近くへ引き込むことによって、体重の後肢に負重する割合を大きくすることによって行っているのです。
 従って、フランクや後肢の柔軟性と可動域に大きく関わることなので、これを改善して、バランスバックを可能にすることが大切なのです。



 以上のように、フレームワークやバランスワークは、馬体のパーツの組織的組み立てによってできるものなのであり、これらは馬体のパーツの柔軟性と可動域によってなされるもので、これに問題や課題があるときは、馬体の各パーツの柔軟性や可動域に問題があると考え、これに大きく関係するパーツの柔軟性や可動域に的を絞って、これをストレッチして改善し、その問題をクリアするように考えることが重要なのです。

2019年3月5日
著者 土岐田 勘次郎

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