2011年4月号
今月のテーマは、ライダーが馬に乗っているときに、何をそして幾つのことを意識に置いておくべきかについてである。
私は、1つではなくて最低2つのことを、同時に意識しなければならないと考えている。
人間は、何かに意識が囚われてしまうと他のことが目に入らなくなる傾向があり、況してバランスを崩したり馬の反抗にあったりしてしまうと、幾つものことを同時に意識に置いておくことは困難になるものだ。
勿論、2つ以上意識することができればいいのだが、最初から幾つものことを意識して結局どれも曖昧になって、ライダーや馬にとって良い結果を生むことができないので、最低2つを意識して、その意識したことをクリアーに乗る事が良いのではないかと思うと共に、最低2つは意識していなければならないと考えている。
この2つとは、結果を求めて行動をしたときに、自分の体の先端に感じるテンションとその結果である。
Tensionとは、ぴんと張った状態, 緊張, 伸張, 引っ張り; 《精神的な》緊張(状態); 《情勢・(対立)関係などの》切迫, 緊張状態; 《力の》均衡, 拮抗.という意味を持ち、圧力を感じている感触などといった意味で、受け止めて欲しいと思って使うこととする。
馬に乗るということは、馬をコントロールするということだが、コントロールする上で、馬の運動をコントロールすることは誰でもが意識する。
例えば、駈歩でサークルを描くとすれば、駈歩でサークル運動をするということは、誰でもが意識をする。そしてもう一つ意識しなければならないことは、脚で駈歩の指示をすると、その脚のプレッシャーに対しその反作用として、脚に受けるテンションがどんな強さなのかである。
脚でプレッシャーを掛けるときに、その脚に対する馬の反応と、そのプレッシャーによってどんな運動を求めるのかという2つを意識するということだ。
最低2つのことを意識することによって、ライダーにとっては、プレッシャーを掛けている局部の反応と、そのプレッシャーの意図する運動とを意識することになって、ライダーにとって自分が行うプレッシャーでどんなテンションの反応を求め、結果としてどんな運動を求めるのかが絶えず意識下にあることになって、プレッシャーとリリースに一貫性をもつことができるようになるのである。
テンションと結果の2つを意識下に置くことによって、運動としての結果とテンションが一体的に記憶されるから、ある運動を求める場合に、同じ運動であってもそのクォリティを明確に求めることができ、一定の運動を求める場合でも、テンションの記憶を手がかりにコンスタントに実現できるのである。
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技術的に未知の世界を求めて練習する場合でも、追いかける結果は想定していても只それだけを求めて練習していても、ある日突然コツを掴むまで暗中にあるようなものだが、結果を追い求めるのと同時にその過程で得るテンションを同時に追いかけることによって、未知の世界への道程を正確に脳裏に記録できて、またそのテンションが見せてくれる感触によって、徐々に未知の世界が脳裏に映像化されて技術的に完成を見るという物語を創造できることになるのだ。
スライディングストップの場合は、結果であるストップとランダウンの時にシートで感じる感触を意識下におくことによって、プロセスと結果がセットなって失敗でも成功でも、向上する手がかりとなる。
そしてまた、更なる進化を遂げる場合であっても、絶えずテンションと結果が一体になってレコードされているので、フォームを改造して進化しようとしても、暗闇でものを探すのと違って、指先やシートで感じるテンションを手がかりに変化させる部分を意識することによって、改良することができるようになるのである。
馬の頭を下げたり、ハミに対する抵抗をとったりする場合でも、馬を脚でドライブしてホールドしているハミにぶつかってくるテンションを追いかけて、レインハンドと脚とのコンビネーションによって、馬の肢の動きとハミに対して譲るような反応を的確に掴むことができて、リリースするタイミングを外すことがなく馬にストレスを与えることがないので、馬がどんどん従順になってコントロールがイージーにできるようにトレーニングができるのである。
テンションと結果を意識下に置くとは、先ずどんなテンションを感じるのかも結果がどんな世界なのかも知らずに誰でもが始めるわけだが、結果は予め想定して、そしてその動作の最中に感じるテンションを意識下に置くように、最初に感じたテンションを心にとどめて、結果を追いかけて練習するということだ。
このことによって、未知なる世界への道程を歩みながら目的地に辿り着くのを、最初から記録しながらその道を辿るようなもので、一端未知の世界に達することができれば、テンションの記録を辿ることによって再現性が容易にでき、また更なる未知の世界への旅立ちに対して、とてもクリエイティブに発想することができて、しかもテンションをイメージに連動するようになるので、可成り確実性を持った発想を得ることになるのである。
2011年3月31日
著者 土岐田 勘次郎
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