2020年4月号
今月のテーマは、ライダーが騎乗中において、馬に与え得る強制力について考察してみたいと思います。
騎乗中馬に対してライダーが馬に対して与える圧力は、馬が動いたり停止したりすることにおいて、何ら強制的力を持たないことは衆知の通りですが、唯一ライダーの重量は馬が動くことに対して物理的影響力があることはいうまでもありません。
従って、ライダーが前傾したり後傾したりすることにおいて、馬の前進気勢に少なからず影響を与えているということができます。
馬は、首の付け根から頭にかけての重量が馬体全体重の20%〜30%を占めるそうです。個体差はあるものこの20%〜30%の重量を振り子のように降り動いているのですから、この動きに沿ってライダーが重心を動かせば前進規制を促進することになり、逆らって動かせば抑制することになるのです。
それとは別にライダーが馬に対して強制力があるのは、馬体を曲げるという行為です、つまり、馬の姿勢(フレイミング)を形成することにおいて強制力があるということです。
馬のフレームを作るためのライダーの強制力とは、作用点と支点における二つの力を1対として用いることによって、内方姿勢や屈撓や収縮などのフレームワークにおいて強制力があるということです。
作用点と支点の二点間の1対の力は、必ず逆方向で同一線または平行線を示し、同一線の場合は直線モーメントが生まれ、平行線になる場合は回転モーメントが生まれます。
レインハンドと脚は力点となり、そのレインを通してビットとライダーが座るシートが作用点と支点になります。
基本的にライダーは、特別に意図しない限りレインを自らの重心に引きます。何故なら、重心に引くことによって、自らのバランスを崩すリスクを最小限にできることと無駄なくその力を活用できるからです。
ライダー自身の重心にレインを引けば、支点であるシートはその引くレインの力の方向と逆向きの力となり、その1対の二つの力が示す線は同一線となり、馬体に及ぼす力は直線モーメントとなり、馬体の屈曲には結びつきません。
この現象を厳密に言えば、柔軟な馬の首は屈曲しますが、馬体全体の屈曲にはなりにくいのです。
ライダーは、無意識にレインを引けば、殆どの場合自らの重心に引きます。バランス感覚がそのようにさせるのです。 |
しかし、ライダーが意図してレインを自分の重心へ引くのではなく、真上に引き上げると、支点であるシートは真下へ向かう力となります。つまり1対の二つの力は、真上と真下へと向かいます。
そこで、ビットは真上に向かい必然的にシートは真下に向かう力となり、馬体上で回転モーメントが生まれ、馬の首は屈曲し屈撓して、後肢はより前に踏み込むことになり、収縮ができるのです。
このフレームワークにおいて、ライダーが強制力を持っていることは、とても重要な要素であり、ライダーが馬に乗って、その馬の動きを間接的にコントロールすることを可能にしている重要な要素だといえるのです。
馬のフレームは、その有り様によって前進気勢を増大させたり減退させたりする要因になるのです。
何故なら、フレームワークによって馬体の重心を移動させたり馬体を支える4肢の位置をコントロールして、重心とその支点との位置関係を変えたりすることができるのです。
そして、その重心の位置は、馬の前進気勢を決定づける要素なのです。
馬の重心は、第4肋骨付近にあるといわれています。
馬体は、4肢に支えられて立っています。つまり、4肢が支点となって馬体を支えているということで、この支点は、重心から遠ざかれば支持力が大きくなり、重心に近づけば支持力は小さくなるのです。
つまり、3角形においてその頂点を重心だとすると、その他の2点がその頂点からの水平距離が遠くなれば(頂点の角度が鈍角になればなるほど)支持力は大きくなり、2点が頂点の真下に近づけば近づくほど支持力は小さくなり(頂点の角度が鋭角になれなるほど)、馬体の重心と4肢の位置が近づけば近づくほど支持力が小さくなって前進気勢は旺盛になり、遠ざかれば支持力が大きくなって前進気勢は減退するのです。
以上のように、フレークワークは重心と4肢の位置関係を変えることとなり前進気勢の増減をコントロールすることができるのです。また頭の位置も前後左右に変えることができ、前進気勢の方向性や増減に影響を与えることができるのです。
ライダーが持ち得る強制力は、馬のフレームワークにおいてで、その強制力は、馬体の屈曲を計り重心の位置や重心と4肢との位置関係をコントロールして、前進気勢の方向性と増減に大きく影響を持つことになるのです。
ライダーは、馬を動かすことにおいて強制力を持ってはいないが、馬体のフレームワークにおいて強制力を持ち、その強制力を発揮して、重心をコントロールし、前進気勢の増減を計り、間接的に馬の動きをコントロールしているのです。
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