VOL.128「成功への扉」

　2020年12月号

　2020年最後のコラムであり、そのテーマは、ライダーにとっても馬にとっても成功の扉を開けるキーワードである。

　正しい課題の設定とこれを克服する正しい論法が必要だといえば、誰もがその通りというであろうが、このようなアドヴァイスは何の役に立たないのである。
　もっともな論理であるものの、三流コンサルティングの手法で、こんなコンサルタントにお金を払うのはどうかしているとしかいいようがない。

　何故なら、正しい課題の設定ができれば誰も苦労しない話で、問題が発生した時点で、何が正しい課題なのか、これを解決するためにどんな論理が正しいのかなんて誰も分からないのであるから、問題が発生しているのであって、例えば、今年発生したコロナウィルスの問題だって、未だに何が正しいのかが分からないから世の中は混乱したままなのである。

　しかし、どうあっても成功に誘導されるシステムが存在するのである。我々人類は、そうして今日を築き上げてきたのである。

　それは｢試行錯誤｣である。

　それは、正しいことなんて、誰も分からないという前提に立って、試行と工夫と再試行を繰り返すことなのである。そして成功するまで、これを続けるだけのことなのである。
　特別な方法など存在しないのである。
　試行錯誤は、誰もができる手法であり、どんなに才能がある人でも未解決な問題は、これを繰りかえしで解決するしか方法はないのである。

　ところが多くの人は、試行錯誤を繰りかえすことができないのである。そして、失敗を繰り返して慢性的停滞に陥ることになるのである。

　誰でも行動すれば、その目的がある。しかし、目的を持つだけでは、試行錯誤することはできないのである。

　目的の設定の仕方に、工夫が必要なのである。

　最初の目的は、大凡自分の技量に関係なく持つものである。もし最初の目的が、自分の技量では行動の結果の正否を判断できないようなレヴェルの目的であると、結果においてその正否が判断できなければ、失敗なのか成功なのかを判断できないのだから、結果を変えるために工夫のしようがないのである。

　只、思うようにいかないという感想しか抱かないようなことになり、諦めるか失敗を慢性的に受け止めるかということにより、この失敗の状態に慣れてしまうことになるのである。
　この慣れというものは、恐ろしいことなのである。何故なら、自分の能力を肯定できない自分を作ってしまうからなのである。

　従って、行動を起こす前に最初にしなければならないことは、目的を段階的に分解する必要があるのである。その段階とは、つまり、自分の技量のレヴェルにあった目標にまで分解することが重要なのである。

　この技量とは、視覚的ではなく視覚以外の感覚的で察知できる範囲で、目的設定をする必要があるのである。感覚的に察知できるということは、身体の末端の触覚やその他の感覚で察知できるということであり、ここで言うところの技量とは、自らの持つセンサーの察知能力ということである。

　センサーの察知能力で判断できる範囲にまで目的を分解して、目的を設定した上で行動すれば、行動の結果の正否は立ち所に判断できるので、失敗しても成功しても、再試行のための改善や改良などのために工夫が容易にできるのである。
　以上のように、目的の設定をセンサーの察知能力の範囲でするだけで、自動的に試行錯誤は始動するのである。

　技量のレヴェルを問うと、何かができる能力だと思ってしまうのである。しかし、どんな精密機械であっても、精密な工作をするためには、それ相当のセンサーがなくてはできないのである。精密機械は、微細な情報を感知できるセンサーがなくては、その性能を発揮することはできないのである。

　人もまた同様で、人の技量とは感覚機能であるセンサーが、必要な情報をどれだけ感知できるかどうかなのである。

　人の能力を充分に発揮するには、感覚機能の精度を高める以外にないのである。このためにすることは、目的をそのセンサー機能の範囲で設定するだけのことなのである。

　指導者や資料によって得た知識を実用して成功を収めるには、自分のセンサーの能力を先ず知ることが重要なのである。その範囲で目的を設定して行動し、試行錯誤すれば必ず成功を収めることになり、この段階的成功により、センサー能力が高まり、更に段階的に目的の設定をレヴェルアップしていけば、成功を修めるに従ってセンサー能力が高まり、最終的には名人といわれるようになるのである。