VOL.129「第1章　脳と感覚器官と運動器官の連携システム」

　2021年1月号

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　旧年中は、一方ならぬご支援を賜り厚く御礼申し上げます。また、本年も倍旧のご厚誼を賜りますよう謹んでお願い申し上げます。

1.　　脳と感覚器官と運動器官の連携システム

　脳は、自ら目的を想念し、その想念に基づいて動く運動器官の動きを認識し（遠心性認識）、その動きによって起きる外部環境の変化を感覚情報として認識（求心性認識）するのである。つまり、脳は遠心性のことと求心性のこととの２方向の情報を認識するのである。

　脳が目的を想念し、想念したことが運動器官の動きの目的を示唆し、遠心性神経である運動神経によって運動器官をコントロールし、求心性神経である感覚神経は、感覚細胞が感知した情報を脳へ送信し、脳はこの情報の中から意識の向く範囲の情報を認知して、脳が感覚情報を認知すると同時に、運動神経はこの感覚情報を加味して、運動器官に対して運動の指示をすることとなるのである。

　脳の抱く目的が、感覚器官の能力でその所在を特定できれば、運動器官は、その目的地へ向かって容易に進むことができるのである。しかし、脳が想念した有り様が、当事者の感覚器官の能力ではその所在が特定できない場合、脳は複雑だとか困難だとかと認識し、この認識が大脳の運動器官への関与を誘導することとなり、大脳の関与によって運動器官は感覚情報を遮断しバイパス機能として直接運動器官をコントロールするので、感覚情報を失うので運動器官は失明したと同じ状況に陥って、目的を遂げることができなくなってしまうのである。

　このとき、努力したり忍耐したりすることは、大脳の運動器官に対する直接的関与を増幅し百害あって一利なしで、本来は、想念の有り様を感覚器官の能力で所在を特定できるようにしなければならないのである。

　目的地へ向かって車を進め、ある曲がり角に差し掛かったとき曲がるべきかどうかを迷うとき、目的地を確認します。この確認作用は大脳がなすべきことである。しかし、どの時点でハンドルを切るかなどの操作は大脳の仕事ではなく、感覚情報に反応するように運動器官が動いてするものなのです。

　小学校の体育の時間で跳び箱５段を跳ぶとき、１/３の生徒は難なく跳べて、１/３は少しの努力によって跳べるようになり、残り１/３はなんとしても跳べるようにならない。
　このときの先生は、１/３のどうしても跳べない子供達に頑張れというのである。
　しかし、一番頑張っているのは、どうしても飛べない子供達なのである。そして、このときの先生は、最初に難なく跳べた１/３にいた子供が成長して体育の先生になっているので、到底どうしても跳べない子供の心理を理解できないのである。

　もし、先生がこの跳べない子供達の脳と運動器官の連携システムを理解していれば、早くこの子供達でも跳べる高さに調整して、失敗を多く体験しないうちに成功体験をさせるようするでしょう。

　そうすることで大脳の運動器官への関与を防ぎ、そして成功体験によってこの子供達の脳が、簡単だと思えるような想念ができるようになれば、この子供達の運動器官は羅針盤である感覚情報に誘導されるように正常なシステムが作動するようになって、跳び箱が跳べるようになるのである。

　ところが、この先生は脳と運動器官の連携システムを知らないので、頑張れと励ましたり手足の動きを指導したりしてしまうので、この子供達の大脳は、運動器官の動きに直接関与することになり感覚情報を遮断するので、指導すればするほど跳び箱を跳べるようにはならないのである。

　子供達に必要なことは、成功体験であり成功を想起させるイメージや思い方なのであって、手足の動きの指導や激励ではないのである。

　目的を達成したり運動器官の動きを巧みなものにしたりするためには、脳を訓練することが必要で、運動器官ではないのである。

　脳の訓練とは、感覚情報の認知能力のことで、感覚神経により送信される感覚情報を如何に認知するかがその能力であり、感覚細胞の感知能力の向上はないのである。
　無差別に感知した情報を感覚神経は、脳へ送信するので、脳が必要な情報を取捨選択して認知するのである。必要な感覚情報の選択は、意識の問題なのである。
　感覚神経によって送信された感覚情報を取捨選択するのは、レーダー機能を持つ意識なのである。意識する方向の情報を認知して、意識しない方向の情報は無視されることになっているのである。