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    VOL.13 「馬の学習と同じ動作のリピート」 

2011年5月号

  今月のテーマは、同じ動作を繰り返す回数と馬の学習との関連性において、馬に学習させないようにしなければならないことに、焦点を当てて考えてみることにする。

 馬をトレーニングする場合、馬の学習はとても重要で、その能力や習性を理解することは欠かすことができない要因である。しかし馬の学習を意識すると同時に、学習させないということもまた重要視しなければならない。

 学習させることは、馬が行うべきフィジカル的運動ができるようになることと、ライダーの指示と馬のするべき反応を関連づけること。

 学習させてはいけないことは、馬が独自に次のするべき運動を予測できるようにすることで、例えば、同じ所で同じ運動をさせないようにして、場所と運動を関連づけて学習させないようにすることや、運動の移行をワンパターン化しないようにして、次の運動を馬が勝手にしてしまわないようすることである。

 馬のトレーニングにおいてする連続動作の中で、馬に記憶させたいこととさせたくないこととがある。そして記憶させたくないということを、重要だと考えなければならない。
 何故なら、誰でも記憶させたいことは強く意識するものだが、記憶させたくないことに対しての意識が希薄になる傾向にあるので、特に強く意識することが必要で、馬が次の行動を予測できたり、ある場所へ行ったときにある運動をしそうになったりしてしまうような弊害を、作らないように努めなければならない。

 私は、ある動作を馬に学習させたいと考えたとき、同時に学習させたくないことは何かを考える。
 そしてそのために、同じ運動をなるべく2回以上繰り返すようにしている。
 サークル運動であれば2周以上のように、運動の移行の伴うものは、特に2回以上同じ動作をしてから移行するように努めている。

 カウンターキャンターをする場合、当然のようにサークルを右から左、左から右へとサークルを移行することもまたカウンターキャンターをするのと同時に行っているわけだから、移行したサークルを2周以上行ってから元のサークルへと戻るようにする。つまり、カウンターキャンターを1周して元のサークルに戻るようなことはしないということだ。
 何故なら、カウンターキャンターを馬に学習させるために、充分なのが何周なのかは馬によって様々だが、サークルの移行を馬が忘れるために必要な回数が1周ではなくて最低2周以上だからだ。

 もし1周だけのカウンターキャンターで、元のサークルへ戻っていることを繰り返していると、馬が、サークルのセンターに来ると反対サークルへ勝手に移行しようとする弊害を作ってしまうことになるのである。

 進行方向の移行(右から左、左から右)やステップ方向の切り替え(インからアウト、アウトからイン)や運動の移行(停止から発進、運動の停止、歩様の変更、リードチェンジ)などは、移行をスムースにしたり移行してからの運動を上手にしたりするためにトレーニングすると同時に、その移行を馬が意識をしたり、その場所と移行をセットに学習してしまったりしないようにしなければならないのである。

 



 例えば、スライディングストップに関しても、同じ場所でストップを繰り返していると、その場所へ来ると勝手に馬がストップしようとしてしまうので、場所とストップを一体的に学習しないように、ストップの場所をランダムにしなくてはならない。

 スライディングストップのトレーニングに、フェンシングというのがあって、フェンスに向かってランダウンしてストップすることを繰り返すのがあるが、これもまた、馬場のエンドまで走行してストップするのは、馬場のエンドまで行かずに途中でストップを繰り返すと、馬がスピードアップすると同時にストップを予測して、勝手にストライドを縮めたり止まったりする兆候を見せるようになってしまうので、アリーナエンドのフェンスまで走行してストップを繰り返すことによって、馬が途中でストップを予測することを予防しているのだ。

 原則的に、馬が動作を始めたり止めたり、曲がったり真っ直ぐ行ったり、遅くしたり速くしりするなど全ての動作は、ライダーの指示によって決定するのであって、馬が勝手に決めていいということはない。
 馬に何かを学習させることが馬に乗るということであり、ライダーが意図しようがすまいが何らかの学習を馬はしているから、ライダーは、予め学習させたいことを思うと同時に、学習させたくないこととを意識下に置いて、馬に乗らなければならないのである。

 運動の移行がワンパターンになってしまうと、馬は確実に次の動作を予測するようになり、徐々にライダーが指示をしないうちに馬が行動を興してしまうようになる。
 また、馬がライダーに集中していることが馬術上重要であることは、誰もが異論のないことであるが、ライダーの指示がワンパターン化したり同じ場所で同じ反応を求めたりすることを繰り返せば、ライダーへの集中を欠く原因を作ることになるのである。

 良く馬の予測した行動を裏切れということがいわれる。馬が直進しようとすれば曲がる、曲がろうとすれば直進する、止まろうとすれば進み、進もうとすれば止まる。このように馬の行動を裏切るようにすることによって、馬は勝手に判断することなく、耐えずライダーの指示を待つようになるのである。つまり、ライダーへ集中するようになるのである。

 ライダーは、馬の学習を促すように緩急を付けてトレーニングするのであるが、同時に学習させたくないことを意識してトレーニングすることの重要さを認識する必要があるのである。        




                2011年4月25日
                 
              著者 土岐田 勘次郎


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