2021年8月号
今月のテーマは、ランダウンである。
ランダウンとは、スライディングストップのアプローチで、このランダウンでスライディングストップの成否が決まるのである。
ランダウンにおいて、スライディングストップの成果を上げるためには、先ずテクニカルムーヴメントで走行すること、そして直進すること、更には徐々にスライドのエクステンドをしてスピードアップし、サンセットのタイミングでストップのキューイングを行うのである。
馬のムーヴメントは、メカニカルムーヴメントとテクニカルムーヴメントの二つがあって、メカニカルムーヴメントは、重心の移動が起きてからステップする走法で、人間も走るとき腕を振るのはこの馬の走法と同様のことで、馬はこの走法がより得意になるように進化したといわれているムーヴメントなのである。
この走法は下り坂を走るのと似ているのである。
一方、テクニカルムーヴメントは、ステップして重心移動をする走法で、筋力運動で、上り坂を走るのと同様の走法なのである。このムーヴメントは、徐々にストライドをエクステンドしてスムースなスピードアップすることとセットとなる走法なのである。
多くの動物は、このテクニカルとメカニカルの二つのムーヴメントの両方を駆使して走行しているのであるが、馬は首の伸縮を止めない限りメカニカルムーヴメントをするように進化している動物なのである。
スライディングストップのアプローチとしてのランダウンは、テクニカルムーヴメントで走行することが必須なのである。
走っている馬がストップする上での力学的理論は、重心は真下へ向かう重力が働き、このときの支点である4肢はグランドから重力と同量の力で、反作用としてグランドから突き上げられる力が真上に向かって働くのである。
このとき、支点が重心より前であれば、支点を境にして、支点より前の部分が押し上げられ、後ろは押し下げられるのである。
その逆に支点が重心より後ろであった場合、支点より後ろの部分は押し上げられ、前の部分は押し下げられるのである。
従って、馬が走行してストップするとき、馬の重心より支点である後肢が前に着地していれば、後肢の着地点より前の部分が押し上げられ、より後ろの部分が押し下げられるので、馬体は前駆が押し上げられて後駆が押し下げられることとなり、スライディングすることとなるのである。
従って、後肢は重力により絶えず押し下げられグランドからの反作用によって押し上げられる。後肢が重心より前でグランドからの重力の反作用の力で押し上げられれば、後肢はより前方へ押し出されることになるので、グランドコンタクトを維持してスライディングするのである。
一方、支点である後肢が重心より後ろに着地していれば、後肢より前の部分の前駆が押し下げられ、後肢より後ろの部分の後駆が押し上げられることになるので、後肢は重量とグランドからの反作用の力でより後方へ押し出されることとなるので、グランドコンタクトを維持することができなくなるので、スライディングすることはできないのである。
以上の理論に基づけば、スライディングストップのためのランダウンは、後肢が重心より前で着地するように走行することが必須要件になるので、重心より前で後肢が着地するということは、ステップして重心移動が起きるテクニカルムーヴメントでなければならないということなのである。
レイニングホースのランダウンに良く見られがちなことは、急激なスピードアップとストライドのエクステンドがないランダウンで、これはメカニカルムーヴメントとなってしまっているから起きる現象なのである。勿論、ライダーのミスで馬をランダウンの際に、エキサイトさせてしまっているから起きているのであるが、エキサイティングの修正として馬のメンタルに言い聞かせたとしても、ムーヴメントを修正しない限りこれを治すことはできないのである。
ステップファーストのムーヴメントであるステップによって重心移動をするテクニカルムーヴメントに修正する必要があり、上り坂を登るようなムーヴメントにすることによって、馬がどんなにエキサイティングしても急激なスピードアップをすることできないのであり、このムーヴメントは、主に筋力運動が強いられるので、徐々に馬のメンタルも落ち着きを取り戻すのである。何故なら、筋肉運動による走法は、恣意的行動なので馬自身が自分を見失ってエキサイティングな状態を維持できないのである。
さて、ステップファーストのテクニカルムーヴメントを馬がするようになるためには、後駆に重心をシフトするようにする必要があって、そのためにバランスバックや収縮が必要なのである。
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