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VOL.137「スピンSpin Turn Around」


2021年9月号

 今月のテーマは、スピンである。
 スピンは、ターンアラウンドということもあって、何故、ターンアラウンドというのかといいうと、馬の回転運動において、サークルやスピンはステップが共通していて、サークル走行の最も小さい回転半径となる運動がスピンといえるからなのである。

 トレイル競技にボックスというマヌーヴァーがあって、四角い囲いに入り、その中で馬を1周回転運動させて出てくるというもので、それは、内方後肢をアウトサイドステップ(遠心性ステップ)、外方後肢はインサイドステップ(求心性ステップ)させ、両前肢はインサイドステップ(求心性ステップ)させて1周回転するものである。
 ボックスの大きさは前後肢が停止状態でやっと収まる程度の大きさなので、馬体の長さを半径にして回転すればボックスからはみ出してしまうので、馬体の長さを直径にして回転する必要があり、内方後肢のステップ方向と前肢のステップ方向を逆にしなければ、最小の回転半径にすることはできないのである。

 多くの人にとって、トレイルのボックスとレイニングのスピンは違う動きと誤解していますが、本来は同じステップなのである。
 そして、トレイルのボックスとスピンの回転運動は、同じステップによる回転運動なのであり、サークル走行もまた同じステップの回転運動なのである。

 つまり、馬の回転運動は、サークルもスピンもボックスも全て共通するステップによるものなのである。

 馬の回転運動は、回転に対して両前肢と外方後肢はインサイドステップ(求心性ステップ)し、内方後肢はアウトサイドステップ(遠心性ステップ)しているのである。これを解剖学的表現、つまり馬の正中線に対して、内方前肢はアウトサイドステップ(正中線から遠ざかるステップ)し、外方前肢と両後肢はインサイドステップ(正中線へ向かう)しているのである。

 この馬の回転運動におけるステップは、内方後肢のみが進行方向と逆方向である遠心性ステップをし、馬体の中心部へ向かってステップして馬体重を支える役割を果たしているのである。そして、内方後肢が馬体重を支えることで、両前肢と外方後肢に対する馬体重の負荷を軽減し、推進し易くしていると考えることができるのである。
 つまり、馬は回転運動を、馬体重を支えることと推進することとを、それぞれの肢がその役割を果たして実現しているのであり、それは内方後肢が回転方向とは逆方向ながら馬体の中心部に向かってステップして、主に馬体重を支える役割果たし、その他の肢に負重する重量を軽減して、両前肢と外方後肢は回転方向の中心部へ向かって求心性ステップをして推進する役割を果たして、実現しているのである。

 今日スピンのトレーニングにおいて、多くのトレーナーが内方後肢のステップアウトを多用するのは、内方後肢による馬体重の負重を充分にすることを以て、両前肢と外方後肢に対する馬体重の負荷を軽減して、そのぶん推進力の発揮を容易にするために有効だからなのである。

 馬のスピンの動きが重く軽快でない場合、推進力を要求してもなかなか改善しないのは、推進力の貧弱な問題を考える前に、その推進力が貧弱な理由を考える必要があって、多くの場合内方後肢による馬体重の充分な負重がないために起きている現象で、このために他の3肢が馬体重を支えつつ推進しなくてはならなくなっていて、充分な推進力を発揮できなくなってしまっていると考えられるのである。

 また、サークル走行でも肩が倒れたり切れ込んだり内方姿勢がとりにくくなっていたりしている場合でも、多くトレーナーが外方後肢の問題に注視しがちだが、内方後肢のステップが馬体の中心部に向かってステップできていないことが原因であることが多いのである。

 基礎運動において、内方後肢のアウトサイドステップの運動を充分に施して、馬体重を内方後肢が充分に支えるようにトレーニングすることは、あらゆるパフォーマンスの原点となる要素だと考えることができるのである。

2021年6月22日
著者 土岐田 勘次郎

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