2021年11月号
今月のコラムのテーマは、フランクである。
馬のハインドクォーター(後駆)の柔軟性と可動域は、レイニングホースのパフォーマンスにおける精度を支える重要な要因の一つなのである。
ハインドクォーターの柔軟性と可動域の拡大は、前進と後進の両方においてストレッチ運動で養成することができる。
前進モードのストレッチでは、直径4〜5mのサークル運動の中で、馬のネックを左右にベンドさせて、後肢をステップアウトやインをさせるようにして、フランクの柔軟性を養成する。
後進モードでは、直進運動でネックを左右にベンドさせたり、後肢を左右にステップさせてスラロームをしたりして、フランクの柔軟性を養成する。
さて、馬のムーヴメントの二つであるステップファースト(テクニカルムーヴメント)とノーズファースト(メカニカルムーヴメント)において、バックアップでは、レインを水平方向に引きバックアップを促せば、馬はノーズファーストのムーヴメントで後退し、馬の臀部より後方へ後肢がステップしてバックアップし、重心移動が後方へ起きてこれを支えるために後肢がステップする。
一方、レインを垂直つまり真上方向に引きバックアップを促せば、馬はステップファーストのムーヴメントで後退し、馬体の下に後肢をステップさせるようにしてバックアップし、後肢がステップすることによって重心移動するのである。
特にテクニカルムーヴメントによるステップファースのバックアップは、後肢が馬体の真下にステップするようにバックアップするもので、レインを垂直にピックアップすることで馬体上に回転モーメントを作ることでできるのである。
更にフランクの柔軟性を養成するために、ステップファーストのバックすることが必要で、このムーヴメントで馬のネックを左右にベンドさせて直進のバックアップをしたり、左右にスラロームのように曲線のバックアップをしたりすることで、フランクの柔軟性や可動域を拡大をさせることができるのである。また、頭を中心において、後肢を左右にステップさせてS字走行させるようにバックアップをすることで、フランクの柔軟性を養成できるのである。
フランクの柔軟性や可動域の拡大は、スライディングにおいては、後肢の深い踏み込みでディープなストップを可能にし、スピンにおいても内方後肢の重心の真下へ位置することで充分に内方後肢が馬体重を支え、その他の両前肢や外方後肢の推進力を発揮することができるようなるので、軽快でスピーディーなスピンを実現するのである。また、チェンジリードでは駆動肢である後肢の切り替えを容易にしていており、またロールバックも然りで、サークル走行でのスピードコントロールは、スローダウンにおいて、バランスバックするために後肢の踏み込みを深くして、推進力を減退させているのである。
馬の推進力において注目するべきは、これまで外方後肢であったが、内方後肢のステップが重要であることが分かってきたのである。
それは、推進における駆動肢である外方後肢は、遠心力と闘うパワーが重視されるところで、これに比べて内方後肢が馬体の真下へ踏み込むためには、フランクの柔軟性が必要であり、馬体の重心の真下へ踏み込むことでしっかりと馬体を支えるので、外方後肢が推進力を発揮するための助けとなっているのである。
つまり、内方後肢が重心の真下へ踏み込むことで、馬体をしっかりと支えることができるので、外方後肢が推進力を発揮できるというメカニズムで、内方後肢が重心の真下へ踏み込めなければ、その分外方後肢が馬体を支えなくてはならなくなって、その分推進力を発揮できないということなのである。
そして、内方後肢の踏み込みは、フランクの柔軟性と可動域の問題だといえることなのである。
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