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VOL.142「超伝導」


2022年2月号

 今月のテーマは、超伝導である。

 超伝導とは、電気抵抗は高温化すると増大して、低温化すると減少するという性質があり、超低温になることで電気抵抗が0になる現象のことをいうのである。
 これに準えて、馬の抵抗が0になることを馬術における超伝導と名付けたのである。

 さて、馬が超伝導となるとは、ライダーが馬に与えるプレッシャーに対して、馬が抵抗なく反応するということであり、以前「譲歩の予測」の記事でアップしているのは、馬のメンタルにおいて、超伝導化することを解説したのである。しかし、馬が超伝導となるには、メンタルとフィジカルの両面が同時に作用して始めておきる現象なのである。

 馬の超伝導は、馬のメンタルにおいては従順であることで、フィジカルにおいてはバランスバックしているということに尽きるのである。しかし、従順とバランスバックというのは、そう簡単なことでなく、馬体の柔軟性や可動域の問題が大きく関わっていて、フィジカル的対応力がなければ従順性も発揮できないし、フィジカルが柔軟であってもメンタルの従順性がなければまたプレッシャーに抵抗を見せてしまうのである。

 従って、馬の動きが、メンタルとフィジカルの一致したところでなくてはならず、フィジカルの動きとメンタルの作用が乖離していれば、超伝導にはなり得ないのである。

 ライダーが、馬のフィジカルの動きとメンタルが一致したものとなっているかどうかを判断できなくては、一致させることもできなければ乖離させてしまう畏れすらあって、超伝導とはかけ離れてしまうのである。

 例えば、ライダーがレインを引いたとき、多少なりとも抵抗があれば、従順性を欠くと判断でき、レインを引いた方へ向かないときは、メンタルの従順性も欠き且つフィジカルの柔軟性をも欠けていると判断できるのである。
 そして、レインを引いた方へ馬が向いたとしても幾ばくかの抵抗があれば、フィジカルの対応力があるけれどもメンタルの従順性を欠いていると判断しなくてはならないのである。

 そこで、ライダーは、馬の反応の何を見れば、メンタルとフィジカルの両方の状態を判別することができるのであろうか。

 多くのライダーは、レインを引いたり脚を使ったりしたとき、馬の頭が下がったり肢がステップしたりすることを以て、馬のライダーの要求に従ったかどうかを判断しているのであるが、これは間違いなのである。

 ライダーは、ビットコンタクトであってもレッグコンタクトであっても、プレッシャーの馬体との接触点において、馬のメンタルもフィジカルも従順であるか柔軟であるかを判断しなくてはならないし、接触点においてのみメンタルとフィジカルの両方を同時に判別することができるのである。

 ライダーがプレッシャーをかけたとき、馬の頭が下がったりステップしたりして、ライダーが要求に従ったと判断してしまっては、馬のメンタルが従順であるかどうかは分からないのである。つまり、馬の頭が下がったとしても、馬のメンタルの従順性を欠いていても、見逃してしまっている可能性があるのである。

 しかし、ライダーがプレッシャーをかけたとき、馬体とのプレッシャーの接触点の感触で、硬さを感じれば、馬の従順性とフィジカルの柔軟性が欠けていると判断することができ、柔らかさを感じれば、従順で柔軟だと判断することができるのである。
 更に、馬の頭が下がっても接触点において硬さを感じれば、馬のフィジカルの対応力はあるがメンタルの従順性に欠けると判断できるのである。接触点の感触が柔らかく頭も下がれば、メンタルの従順性とフィジカルの柔軟性を兼ね備わっていると判断できるのである。

 つまり、ライダーは、プレッシャーを馬にかけてその反応を見るとき、馬の頭の動きやステップなどの視覚要件で見てはならないのである。視覚要件で馬の反応を見ると、馬のメンタルの状態を見ることができないのである。プレッシャーの接触点の感触の硬軟で見れば、馬のメンタルとフィジカルの両方を見ることができ、馬のメンタルとフィジカルの乖離性を見逃すこともなければ、一致させることも可能なのである。

 マクロとして馬の収縮態勢を構築し、ミクロとしてプレッシャーの接触点を柔らかくするように、硬い場合これを許さないようにすることで、超伝導が生まれるのである。

 余談ながら、ライダーが、馬にプレッシャーをかけているとき、接触点が柔らかくなることや0の抵抗になることを信じてトレーニングすることが肝要なのである。本当に馬の抵抗が0になるなんてあるだろうかと疑っていれば、超伝導を実現することはできないのである。

2022年1月6日
著者 土岐田 勘次郎

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