Horseman's Column title

VOL.149「シーティング Seating」


2022年9月号

 今月のテーマは、シーティングである。

 シーティングとは、騎乗するときのポジショニングで、どのような姿勢でサドルに座ることが基本なのかということである。

 騎乗している状態の重心は、ライダーと馬の合成重心である。自転車に乗っているときも同様で、ライダーと馬や人間と自転車のように、人間や馬や自転車単体であるときは、それぞれの質量の中間点が重心となり、人が馬や自転車に乗れば、人と馬や人と自転車の組み合わせで、合成した質量の中間点が重心となるのである。

 自転車の場合は、走行しているとき自転車の重心が動いており、乗っている人の重心も動いているので、当然合成重心もまた人と自転車と一体的に動いているのである。
 乗っている人が姿勢を変えることがなければ、自転車の重心と人の重心と合成重心の3つの重心の動きは一体的なものとなるが、もし人が自転車の動きに反する動きをすれば、人と自転車を合成した質量の中間点である合成重心は、人の重心の動きに影響を受けるのである。そして、結果的に自転車の重心もまたこれに影響を受けるのである。

 騎乗しているときも自転車のときと同じで、ライダーと馬との合成重心がある。ライダーが馬の動きと一体化せずに動けば、合成重心はライダーの重心の動きに影響を受けるのである。そして、結果的に馬は合成重心の動きに影響されるのである。
 ライダーと馬とが一体的に動けば、合成重心もまたこれと一体的に動くのである。しかし、馬とライダーとが一体的でなく動いた場合は、合成重心に影響を与えることとなるのである。

 影響を受けるとは、真っ直ぐに動いていたものが曲がったり、速度が変わったりということである。

 従って、ライダーの姿勢や体勢は、合成重心の動きに直接的に関与し、合成重心の動きに関与することで、馬の動きにも直接的に関与しているのである。

 つまり、ライダーは、馬の動きに強制的に関与することが不可能だといってきたが、ライダーの重量やその動きは、馬の動きに直接的関与をしているのである。
 従って、ライダーのシーティングは、馬をコントロールする上でとても重要な要素なのである。

 ライダーは、馬上で自分自身の重心の存在位置を知っていることが必要なのである。
 馬上で座骨に全体重を掛けた姿勢を作り、その後に上体を前傾したり後傾したりして、支点であるシートにかかる重量感の変化を感じとり、座骨の真上に重心が位置したときの感覚を知ることができるのである。
 座骨の真上に重心が来たとき、座骨に感じる重量感が最大になるのである。
 因みに、座骨の真上に重心が来たとき、座骨の重量感は最大になるが、馬はこのとき人を一番軽く感じるのである。

 そして、座骨の真上にライダーの重心がきたときの姿勢や体勢が、原則基本形なのである。
 このときライダーは、自分の体重を最大に感じるが、座骨が立って背筋が真っ直ぐになり、座骨に体重を欠けているので、鐙に軽く踏んでいることとなり、このことで乗馬における基本姿勢ができたのである。

 騎乗しているとき、ライダーがどんな姿勢や体勢でシーティングしているかは、馬の動きにダイレクトに影響を与えているのだから、馬に対する要求に沿ったものであるべきなのである。

   乗馬は、馬の背にライダーがマウントして、馬の動きをことロールするものであるから、その馬の動きをコントロールするためのものでなくてはならないのである。

 ライダーのシーティングは、前傾したり後傾したり左右に変化させたりするのは、馬の動きをコントロールのためにあるべきものなのである。
 従って、ライダーの姿勢がひとつに限定されたり、固定化されたりするものであるというのは間違いなのである。

2022年6月8日
著者 土岐田 勘次郎

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