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VOL.156「同調2」


2023年4月号

 今月のテーマは、同調の第2弾である。

 支点と作用点とは、何処かを支えにして、その支えを以て何処かに作用させると云うことで、小学校の理科程度のことであるが、何ごとも力の作用とは、この支点と作用点の2点間の関係性において、成立しているのである。

 物理学的には、支点と作用点とは、概念上のことであって、作用点と支点の2点をA点とB点と仮定すると、A点にとってB点は支点であり、この場合A点はB点にとって作用点となり、B点にとってA点は支点であり、この場合B点はA点にとって作用点となるのである。つまり、どちらも作用点であり、どちらも支点なのである。

 このメカニズムを乗馬に当てはめてみると、ライダーが馬の動きをコントロールする場合、ライダーは、シートを支点にして馬のヘッドをコントロールする場合もあれば、ヘッドを支点にしてシートを作用点にしている場合もあるのである。
 一般的には、レインハンドは動きやすく、シートはレインハンドに比べて器用な動きはできないので、作用点がビットで、支点がシートであるように思われがちである。
 しかし、このことも、ビットにとってシートは支点であり、そのときビットは作用点となり、シートにとってビットは支点であり、そのときシートは作用点となるのである。

 以上のことを踏まえて更に考えを進めると、乗馬の場合、実際に動くところは馬の肢であり、馬の動きは、重心が先に動いても(ノーズファースト・メカニカルムーヴメント)、ステップが先に動いても(ステップファースト・テクニカルムーヴメント)、全て馬の肢が動くのである。

 従って、馬の首は、馬のステップや重心の動きに大きな影響力を持っているが、馬が動くときは必ず肢は動くのであり、ライダーによる馬のコントロールは、究極のところ馬の肢の動きをコントロールすることといえるので、作用点は馬の肢だということができるのである。このことは、ライダーが馬の動きをコントロールする上では、馬の頭が支点となって、肢が作用点となっているということが云えるのである。
 このように考えることで、ビットが支点となり作用点がシートとなるのである。

 そこで、馬の反応を同調によって作ろうとすれば、同調が出現するポイントが定点であることが望ましく、同調を求めるポイントが絶えず変化していれば馬は同調し難く、リズムや圧力が一定であれば同調しやすいので、同調を求めるポイントは支点が作用点に比べると最適だと云えるのである。
 従って、作用点は、作用点は変化の生まれるところなので、馬の肢がこれに相当するのである。

 馬の同調を生むためには、その接点が定点であることが望ましく、ビットが支点となるのである。
 定点であるビットを支点として、馬に推進を与えるシートを作用点として動点となり、レインハンドによるプレッシャーを一定に保ち、馬の肢の動きを活発にするためにシートや脚によるプレッシャーを与えるメカニズムで、同調を作り出すのである。

 これらの考察は、ウエスタンやブリティッシュに関わりなく、馬術の原理原則と一致するのである。

 ライダーは、ビットコンタクトを一定に保ち、そこに向かって脚で馬を推進し、ビットコンタクトに対して馬が譲歩を示したとき、ビットコンタクトをリリースするという原理原則に一致するのである。

 同調は、支点において求め、同調を促すためには、定点となる支点におけるプレッシャーのリズムや圧力を一定に保ち、これに対して、動点である作用点の圧力やリズムやベクトルを変化させて、つまり馬の肢の動きを促して(推進)、このことにより、馬は支点において同調を示すようになるのである。同調が現れた時、つまりビットコンタクトに対して、頭を下げたり首を曲げたりというようなボディアクションではなく、力を抜くような反応を示すまで待って、反応が現れた時に与えていたプレッシャーをリリースすることで、馬は同調を学習するのである。

2022年9月17日
著者 土岐田 勘次郎

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