Horseman's Column title

VOL.159「ものの動き」


2023年7月号

 今月のテーマは、ものの動きの原理原則である。

> ものが動くとは、ものの重心が動くことで、ものが前後左右に動くのは、支持力の増減によって、つまり、支持力が重量より小さくなった方向へと動くのである。

 ものの位置が高ければ位置エネルギーは大きくなり、ものが落下するときに位置エネルギーが運動エネルギーに変換し、その運動エネルギーが徐々に大きくなるのである。その逆に、もの位置が低ければ位置エネルギーは小さくなり、そのものが落下するとき位置エネルギーが運動エネルギー二転換するのも小さくなるのである。

 ものが落下するとき、ものの重量(質量)によって落下するスピードは変わらない。つまり、ものが重くても軽くても、落下するスピードに変わりはないのである。しかし、位置エネルギーは、ものの重量と位置する高さによって増減し、重量が大きくなったり位置する高さが高くなったりすることで、位置エネルギーが大きくなり、その逆に、重量が小さくなったりものの位置が低くなったりすれば、位置エネルギーは小さくなるのである。

 位置ネルギーが運動エネルギーに変換される動きとは、ものがある高さから落ちる現象のことである。
 また、ものが動くとは、これを支える力と重量との相対関係で、支持力と重量の関係で、支持力>重量= 静止、  支持力<重力= 運くということで、支持力が重量より小さければものは動き、大きければ静止するということである。
 このことは、位置エネルギーが運動エネルギーに変換する場合でも、地球上では、高いところからものが落ちる現象は、ものを支えている支持力が0になるからものが落ちるわけである。

 また、ものを持ち上げて動かしたり左右へ転がしたりする動きも、二等辺三角形をイメージすれば、底辺以外の2辺の合計の長さが支持力の大きさで、高さが重量なのである。
 この二等辺三角形の頂点を左右どちらかへ、外部からの圧力や筋力の行使で動かせば、2辺の長さの合計が重量の長さと同じになったとき、支持力と重量が一致して、0の地点をものが左右どちらかへ越えたとき、ものが動き出すのである。

 球体は、支持力と重量が一致している形状なのである。従って、1tの球体でも、指先でちょっと押してあげれば、この球体は、理論上動くのである。

 何れにしてもものが動くのは、外部から圧力を加えたり筋力を行使したり支え棒を外したりしたとしても、重量よりも支持力が下回ったときだけの現象なのである。

 例えば、我々人間は、ものを外部から押したとき、重量+圧力=合計重力が、支持力を越えたからものが動いたと思うかも知れないが、実際はそうではなく、支持力が重量より小さくしたからものが動いたのである。
 つまり、ものを押すという行為は、重量+外部圧力=合計重力を増幅させていると認識するが、実際上は支持力の低下を実現しているのであって、合計重力を支持力より増幅させたことで、ものが動いているわけではないのである。

 二等辺三角形をイメージすると分かるように、頂点を何らかの圧力で左右どちらかへ動かした場合、どんどん2辺の長さの合計が小さくなって、重力と同じになる地点を越えたときものが動くのである。つまり、どんなに重量を増幅させても、支持力を重力以下にしなくては、ものが動くことはないのである。

 二等辺三角形に高さ(重力)をどんなに長くしても、2辺の合計の長さがである支持力が、重力より小さくなることはないので、理論上ではものは動かないのである。

 馬上でこのことを考えてみると、ビットコンタクトを真上に、その反作用としてシートを真下に向けて圧力を加え得ることで、馬体を左側面から俯瞰すると、右回転モーメントが生まれるのである。
 ビットコンタクトを何処までも真上に押し上げると、馬はどんどん収縮するのである。つまり、馬の後肢が重心の真下へ近づくのである。

 理論上は、馬が後肢で立ち上がり、結果的に二等辺三角形の底辺の長さが0となるようにできるが、それ以上にすることが不可能なのである。何故なら、ビットコンタクトはシートを支点にして加えている力なのであり、その力がシートへ向かわず真上に向かうことで、ビットコンタクトシートの反作用の力とがパラレルとなって、右回転モーメントが生まれて、馬の後肢を重心の真下へ向かわせているのだが、馬の頭頂と後肢が垂直に位置したときに、ビットコンタクトとシートの反作用は直線上に位置することになって、回転モーメントはなくなるのである。従って、支持力を馬体重以下にすることは不可能なのである。

 つまり、ライダーが、馬を強制力で、馬を動かすことは不可能なのである。

 合計重力を増幅しても、支持力を低下させることなく、ものが動かすことは不可能なのである。ものに圧力を掛けて重心を左右へ動かすことで、支持力が減退するのである。

 ものが動くことは、もの重心が動くことであるが、重心が動いても、必ずしものが動くことにはならないのである。

 二等辺三角形で、重心が左右に動いて、支持力が重量より小さくなって、ものは動くのである。重心を上へ動かすことは、重量が増幅することで、重量がどんなに増幅しても、支持力が低下することはなく、まして、支持力が重量より小さくなることはあり得ないので、ものは動かないのである。

 重量をどんなに増やしたところで、支持力を低下させることなく、ものが動くことはないのである。重心を左右へ動かすことなく支持力を低下させることはできないので、ものを動かすには、重心を左右へ動かして、支持力を低下させずに、ものを動かすことはできないのである。
 つまり、ものを持ち上げるだけでは、ものが動くことなく左右どちらかへものを動かさなければ、ものが動いたことにはならず、重量をどんなに変化させても、ものは動くことはなく、支持力に変化をさせることでものは動くことになるのである。

2022年9月21日
著者 土岐田 勘次郎

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