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VOL.161「脳の訓練」


2023年9月号

 今月のテーマは、脳の訓練である。

 我々人類は、これまで脳とフィジカルの能力は、分けて考えられてきたのである。
 私は、この概念に異論を唱えるものである。つまり、脳とフィジカルの能力の根幹は表裏一体で、脳の能力を高めることで、フィジカルの能力が高まり、フィジカルの能力を高めることで、脳の能力が高まるというものなのであると考えるのである。

 脳の能力の根幹は、認識力であり、フィジカルの能力は、脳の認識力によって発揮されるものなのである。

 我々人間は、運動の得意な人を運動神経が優れているといい、脳の能力の高い人を博識だというのである。私は、この考え方に、大きな疑問を持つものである。
 何故なら、運動神経が良いとフィジカルの運動能力が優れると思っているが、果たしてそうだろうか。
 運動神経はフィジカルを動かす機能を持っているが、我々のフィジカルの動きの大半は感覚統合によって起動しており、その感覚統合は、感覚神経が脳へ送信した感覚情報を、小脳が運動神経と連結してフィジカルと起動させている機能のことである。
 つまり、フィジカルの動きは、感覚統合によって起動しているのであるから、感覚神経の能力が高くなければ、フィジカルの動きが優れることはないのである。

 また、脳の能力の高さは、知識によって推し量られることが多いが、本来脳の能力で良くいわれることは、感性なのである。感性は、心の問題で脳の能力とは違うというかも知れないが、感性とは、様々な情報に基づいて、何を発想するかなのである。つまり脳の情報処理能力なのである。
 情報処理能力というと、コンピュータでいえば、計算能力ということになるが、しかし、計算能力とは、計算してその答えを導き出すということであり、感性とは、計算した上でその解答に基づいて何を発想するかなのである。従って、コンピュータには感性は存在しないのである。
 昨今AI機能などということを良く耳にするが、コンピュータのAI機能は、人工知能とかいうのは間違った表現で、計算能力でしかないのである。つまり、計算して、その結果該当する確率の高いものを検出するというだけなのである。

 人間の持つ感性とは、確率の問題ではなくて、情報を処理した上で、発想を創造しているのである。

 脳にしてもフィジカルにしても、起動の発端は感覚情報なのである。しかし、感覚情報そのものが脳やフィジカルの起点になるのでなくて、脳が認識しなくては、その情報はあってもなくても意味をなさないのである。
 更に、感覚情報を脳が受信すれば、小脳が運動神経と連結する感覚統合によってフィジカルは起動する。
 この場合の感覚統合は、無意識なフィジカルの動きなのである。危険が伴う感覚情報に基づく感覚統合であれば、無意識なフィジカルの動きであっても問題はないが、スポーツや職人などのフィジカルの動きは、大脳が構想することと一致しなくては、目的が果たされないのである。

 つまり、自転車に乗ってバランスを取ったり、椅子やテーブルを作るために鋸などの工具を使ったりするのは、大脳が構想した目的に沿ったフィジカルの動きが必要なのである。

 誤解なきようにしたいことは、大脳が直接フィジカルをコントロールしようとすると、小脳による感覚統合は機能しなくなるということで、大脳がフィジカルの動きに直接関与すると、感覚情報と運動神経の連結が遮断されて、感覚統合は失われるのである。
 つまり、大脳が構想する目的にフィジカルの動きが適ったものにすることとは、大脳がフィジカルの動きに関与することは違うことなのである。

 大脳がフィジカルの動きに関与せずに、大脳の構想する目的に沿うように感覚統合が機能するにはどうのようにすればいいかが問題なのである。飽くまでも小脳による感覚情報に基づいて運動神経との連結を遮断することなく、感覚統合の動きを大脳が構想する目的に沿ったものにするためには、小脳が受信している感覚情報を大脳が共有することが必要なのである。

 大脳が、小脳が受信した感覚情報を共有することによって、感覚統合によるフィジカルの動きを大脳は認識できるようになるのである。大脳が、感覚統合のフィジカルの動きを把握できるようになり、フィジカルの動きを把握できれば、その是非を判断できるので、徐々に感覚統合によるフィジカルの動きを、大脳の構想に合致するものとなってくるのである。

 小脳が受信している感覚情報を、大脳が共有するためには、大脳は意識をコントロールしなければならないのである。

 何故なら、意識は、大脳によるところのレーダー機能そのもので、意識を向けたところを起点とする感覚情報を大脳は認識するのである。逆に意識を向けないところを起点とする感覚情報を、大脳は認識できないのである。

 感覚情報は、感覚細胞が感知して感覚神経を通して脳へ送信されるので、感覚細胞が感知した感覚情報は、全て脳へ送信されるのである。

 小脳は、受信した全ての感覚情報の中から生命維持にリスクのある情報を優先して、感覚統合を行うのである。
 そして、大脳が構想することに関連する感覚情報に基づいて感覚統合を行うのである。この二つのこと以外の感覚情報を受信しても、感覚統合は行わないのである。

 大脳は、意識をコントロールすることによって、意識の向くところを起点とする感覚情報を認識するのである。大脳が、感覚情報を認識することで、状況を把握することになり、大脳の欲望や願望や理想や発想などの構想と状況の差違を同時に把握することとなるのである。

 大脳は、感覚情報を詳細に認識できれば、詳細な構想ができるし、詳細に特定することができるので、構想が精密になり具体化することができるのである。これに伴った発想することもレベルアップするのである。つまり、このことが大脳の能力の高度化なのである。
 従って、大脳の能力は、記憶力でも無ければ知識の多さで計るものではないのである。

 従って、意識のコントロール機能を高めることで、脳もフィジカルもその能力を高からしめることができるのである。

2022年10月13日
著者 土岐田 勘次郎

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