VOL.162「馬のフィジカルの可動性」

2023年10月号

　今月のテーマは、馬のフィジカルの可動性である。

　馬のフィジカルの可動性を極論すれば、４肢の可動性だということができる。今月のテーマは、４肢の可動性を担っている正体は、何かという問題なのである。

　馬の前肢の可動性は、肩胛骨であり、後肢の可動性は股関節なのである。

　馬の前肢の可動性は、肩胛骨が中心的存在であり、後肢の可動性は、股関節が中心的存在となって、馬の可動性が発揮されていると極論することができるのである。

　馬術においていわれるところの収縮やバランスバックなどは、肩胛骨と股関節の可動性がなくては考えられないほどの主要な役割を果たしているのである。そして、垂直方向の可動性は勿論だが、馬術は競走馬と違って、水平方向の可動性が要求されるのである。

　肩胛骨の可動性は、前肢の可動性を左右するのである。

　特に馬は、前肢の水平方向の可動性は、前肢の関節の構造が水平方向の可動機能がないので、肩胛骨の可動性のみに頼らざるを得ないのである。
　前肢には、球節・手根関節・肘関節・肩関節などの関節があり、これらの関節は、垂直方向の屈曲機能はあるが水平方向の屈曲機能を持っていないので、馬は、前肢の水平方向の可動性を持っていないといえるのである。そして、肩胛骨が唯一前肢の水平方向の可動性を担っているのである。

　馬の前肢の水平方向の可動性は、脊椎と肩胛骨、肩胛骨と肩関節の緩みや柔軟性によって、辛うじて保たれているというものなのである。

　後肢には、球節・飛節・膝蓋関節・股関節などの関節があり、これらの関節で股関節を除き、垂直方向の屈曲機能を持っているが水平方向の屈曲機能がなく、唯一股関節だけは水平方向と垂直方向の屈曲機能の両方を持っており、後肢の水平方向の可動性を担っているのである。

　馬の肩胛骨は、水平方向の屈曲機能があるわけではなく、緩みや柔軟性によって若干の水平方向の可動性を持っているので、前肢の水平方向の可動性は、胸骨の存在もあって、脆弱だといえるものなのである。
　一方股関節は、機能として垂直と水平の両方の屈曲機能を持っているので、後肢は、股関節の機能として前後左右の動きが前肢に比べて自由に動けるのである｡

　従って、以上の馬の構造的機能のことを考慮して、馬の可動性を考えなくてはならないのである。

　先ず、前肢の可動は、肩胛骨の柔軟性を以て、機能向上を図らなくてはならないのである。
　このために、馬の頭とショルダーの位置の相対性を以てストレッチ運動をすることで、前肢の前後左右の可動性を高めることが有効だと考えられるのである。
　馬の頭とショルダーの相対性とは、馬の頭を下げるべくビットコンタクトをするとき、頭をショルダーに対して持ち上げるようにビットコンタクトをして、結果的に馬の頭が下がるようにすれば、肩胛骨の垂直方向の柔軟性が高まり、その可動性が上がるのである。

　また、馬の頭を左右へ位置するようにネックを水平方向へ屈曲させるとき、ショルダーに対して頭を左右へ位置させるようにと考えて、肩胛骨の水平方向に対する柔軟性を高めて、水平方向の可動性を高めるようにと考えなくてはならないのである。

　このように、頭の位置を考えるとき、必ずショルダーに対しての位置づけを意識して、更に肩胛骨の可動性や柔軟性を高めるように考えて、ストレッチを行わなくてならないのである。

　以上のように、前肢の可動は、肩胛骨の可動性と柔軟性を以て、機能向上を図らなくてはならないのである。
　後肢の可動性は、馬のショルダーと後肢の相対性を以てストレッチすることが重要なのである。つまり、ショルダーを基準点として、これに対して後肢を左右また前後に位置を移行させるようにして、可動性や柔軟性を養成するようにするのである。
　後肢の前後左右の動きを、右前肢に対して右後肢をより右方向へ動かしたり、左前肢に対して左後肢をより左方向へ動かしたりして、後肢の水平方向のストレッチするのである。また、前肢の位置へ後肢を近づけるように、ビットを真上にピックアップし、その反作用としてシートを真下へ押し、後肢を前肢へ近づけるようにストレッチして、後肢の垂直方向の可動性と柔軟性を高めるのである。

　以上のように、肩胛骨と股関節の可動性と柔軟性を高めることで、馬のフィジカルの運動機能を高めることで、収縮やバランスバックをして、パフォーマンスのレベル向上をさせることができるのである。