Horseman's Column title

VOL.164「垂直方向の力の活用におけるフレームワーク」


 2023年最後のコラムである。

 1年間のお付き合いを心より感謝申し上げます。
 今年最後の投稿となりましたが、12ヶ月の間種々のテーマで、本稿をお送りしましたが、皆様にとりまして些かの手助けとなれば幸いです。また、引き続き来年も何らかのテーマでお送りしようと思っておりますので、相変わらずご贔屓の程お願い申し上げます。

2023年12月号 「垂直方向の力の活用におけるフレームワーク」

 今月のテーマは、馬のフレームワークにおける二つの垂直方向の力の活用である。

 力には、方向性があり、その方向性は大別すれば、垂直方向と水平方向とに分けることができるのである。

 私は、地球上において、水平方向の力は存在しないという仮説を立てたのである。
 何故なら、綱引きをした場合、我々は、垂直方向の力でグランドにグリップして、水平方向に綱を引くのであるが、垂直方向のグリップ力の範囲でのみ綱を引くことができるのである。もし、垂直方向のグリップ力以上の力を発揮して綱を引こうとしても、綱を引くことはできず、自分自身が綱に引きずられてしまうのである。

 つまり、我々は、水平向の力を発揮しようとしても、それは垂直方向の力の範囲内でしか、その力を発揮できないのである。

 このことを踏まえて、馬にプレッシャーを与える場合のことを考えてみたいのである。

 例えば、左右どちらかに水平方向の力を馬に与えた場合、馬は引いた方へ馬の頭が動くのと同時に、馬の後肢がレインを引いた方向と反対側へ動いてしまうこととなるのである。
 つまり、左右どちらかの方向へレインを引けば、当然引いた方向と逆方向の張力が生まれ、レインを引いた方の力に伴って、その反対側に張力が生まれるので、反対側の先端が張力の働く方向へ動くのである。

 しかし、内方姿勢や収縮のフレームワークを行うとき、二つの垂直方向の力を活用することによって生まれる水平方向の張力を活用すると、とても効果的にできるのである。

 それは、馬に収縮姿勢を取らせる場合、レインを真上に引き上げるようにすれば、このレインを真上に引き上げる力の支点であるシートには、真下に馬体を押し下げるように張力が発生します。
 このことによって、馬体を左側面から俯瞰すると、馬の頭頂部に真上に向かう力が働くと同時に、馬の背中にレインを引き上げる力の張力として、支点が真下に向かう力が働くので、右回転のモーメントが生まれるのである。
 この右回転モーメントが働くことで、馬の頭頂部と後駆が近づくこととなるので、馬は収縮するのである。
 つまり、作用点である頭頂部が真上に向かう垂直方向の力と、支点である背中が真下へ向かう垂直方向の力の二つが作用することで、馬体に右回転モーメントが発生し、馬体が収縮するのである。

 更に、内方姿勢を取る場合、この二つの垂直方向の力を、左右にずらすことで、水平方向の張力が発生して、馬の内方姿勢が生まれるのである。

 つまり、馬の頭頂を真上に引き上げる一つの垂直方向の力と、この作用点の力の支点として生まれるもう一つの垂直方向の力(張力)の中心を左右どちらかのずらすために、左右の両脚の片方に支点を置くようにするのである。
 例えば、頭頂を真上に引き上げて、左の脚を支点にすることで馬の背中の左側を真下へ押し下げる張力が生まれ、このように二つの垂直の力の中心が左にずれることとなり、馬体は右内方姿勢が生まれるのである。
 この逆に、頭頂を真上に引き上げ、このときの支点を右脚に置けば、頭頂が真上に引き上げられる一つの垂直の力と、その張力として生まれる力が馬体の右側面を真下へ押すこととなるもう一つの垂直の力が生まれ、馬体は左内方姿勢が生まれるのである。

 これらを要約すれば、馬の頭頂を真上に引き上げる垂直の力に対して、シートを支点とすることで馬の背中に真下へ向かう垂直の力が発生し、この二つの垂直の力の中心が一致することで、水平方向の力を発生させないので、馬体を収縮させるのである。
 これに対して、馬の頭頂を引き上げるとき、左右どちらか脚を支点にすれば、頭頂を真上に引き上げる垂直の力にして、その中心を左右どちらかへずらして真下へ働く垂直の力を活用すれば、水平方向の張力を発生させることができて、左右の内方姿勢を形成せしめることができるのである。

 地上で水平方向の力を発生させようとすれば、垂直方向の力の範囲でしか発揮させることができないのである。

 多くの野球評論家が、大谷選手がメジャーリーグへ移籍したとき、そのバッティングホームを否定しました、それは、アッパースィングだったからで、垂直方向のバットの軌道を非難したのでした。
 しかし、物理学的には、水平方向の力は垂直方向のグリップ力の範囲でしか発揮できないので、自ずと限界があるのである。その点大谷選手は、身長が高い点でも垂直方向のバットスィングは、理に叶っているのである。結果的に、今日の大谷選手の成功があり、ホームランボールの飛距離においても群を抜いているのは、この理論を正当化するものなのである。

   更に言えば、伸長の低い日本選手は、もっと大谷選手のバットスィングを真似すべきなのである。小柄な日本人がバットを水平方向のスィングをすれば、その力には垂直方向のグリップ力という限界が生まれるので、小柄な日本人には不利なのであり、大きな飛距離を生むことはできないのである。

 我々が騎乗して、馬体を水平方向の力を以て何らかのことをすれば、必ずその作用点に対応している支点において、逆向きの張力が発生してしまうのである。しかし、垂直方向の二つの力の中心を左右どちらかにずらすことで、張力として水平方向の力を発生させれば、効率よく力を活用することができて、収縮や内方姿勢などを容易に形成せしめることができるのである。

2023年11月27日
著者 土岐田 勘次郎

HOME

ホームへ戻るボタン

Eldorado Ranchへのメール reining@eldorado-ranch.com
TEL 043-445-1007  FAX 043-445-2115

(c)1999-2023. Eldorado Ranch. copyright all rights reserved.
このサイトの
記事、読み物、写真等の無断使用は禁止とさせていただきます。