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VOL.175「馬がライダーの要求に応えるには?」


2024年11月号

 今月のテーマは、馬の目線でライダーの要求に応えるには、どのような要素が具備されなければならないのかである。

 馬のメンタルでは、従順性とコンセントレーションである。

 馬が従順でなければ、ライダーの要求に従うことが無いのであり、ライダーの要求に、馬のメンタルがコンセントレーションしていなければ、ライダーの指示や要求に馬が気づかなければ、ライダーの要求に応えようがないのである。

 馬のフィジカルでは、可動性と柔軟性である。

 馬の各パーツの可動性は、ライダーの要求に応え得る必須要件で、馬体の各パーツの可動性がなければ、メンタルが従順であっても反応できないのである。そして、フィジカルの柔軟性がなければ、ライダーの要求があったとき、スムースな運動ができないので、このことが発端になって馬の抵抗や反抗に繋がってしまう要素なのである。
 従って、馬のフィジカルの可動性と柔軟性は、ライダーの要求に応え得る必須要件なのである。

 そして、重要なことは、馬のメンタルの従順性とコンセントレーションの基盤は、フィジカルの可動性と柔軟性であって、フィジカルの可動性と柔軟性が、メンタルの従順性とコンセントレーションを創出しているのである。

 我々は、今日メンタルとフィジカルを分けて考察する論理性を持つようになっている。それは、メンタルとフィジカルを区分して考察することによって、より理解が深まったという効果があったと思うが、その一方で弊害もあって、フィジカルとメンタルは密接に連携して成り立っているので、メンタルを理解するためにはフィジカルを理解する必要があり、フィジカルを理解するためには、メンタルを理解する必要があるのである。

 我々人間が、ライダーとなって馬の背にあって、馬の動きをコントロールするには、馬のフィジカルが基盤となってメンタルを形成しているということを理解しなければならないのである。

 つまり、我々は、馬のフィジカルの可動性と柔軟性が、馬のメンタルの従順性やコンセントレーションを形成していることを理解する必要があるのである。

 以上のことを前提として、ライダーの上達という命題を考察すれば、ライダーの初級者には、馬のフィジカルの可動性と柔軟性を養成することは、荷が重いのである。しかし、どんなにライダーが未熟であっても、メンタルの従順性とコンセントレーションは、自己責任として、その方法を理解して、馬に乗る必要があるのである。

 ライダーが馬の従順性を養成するには、プレッシャーアンドリリースで、基本原則として、ライダーが何らかの馬の反応を要求するために、プレッシャーを掛け馬がその要求に応えたら、そのプレッシャーをリリースし、要求に応えなかったら、プレッシャーを継続するか増強して、要求に応えさせ掛けていたプレッシャーをリリースする。
 また従順性は、時間的継続性があるので、従順性を養成された馬は、その熟練度によって、ライダーが他の人に変わってもまたレベルの違う人に変わっても、従順性を引き次いでくれる性質を持っているのである。

 以上のことで、馬の従順性は養成されるのである。

 コンセントレーションは、馬の予想を裏切ることで養成されることであり、直進しているのを左右に曲げたり、前進を後退させたりして、馬の行動を、予想を裏切るようにすることで、馬はライダーから何時異なった要求が来るかも知れないので、馬はライダーに、コンセントレーションするようになるのである。
 余談かも知れないが重要なことなので付け加えておけば、馬の予想を裏切るようにする場合、要求の直後に掛けていたプレッシャーをリリースすることで、ワンアクション毎に掛けていたプレッシャーをリリースすることが重要で、アクション毎にプレッシャーをリリースすることで、行くたびも予想を裏切る要求がライダーからもたらされても、馬は興奮したり混乱したりしないのである。

 以上のように、馬の従順性とコンセントレーションは、如何なるレベルのライダーであっても、自分の責任と思って、これを行使して、馬に乗らなければならないのである。

 コンセントレーションは、従順性と比べると時間的持続性がはるかに短いので、それだけにライダーの責任下で、馬にコンセントレーションさせるようにしなくてはならないのである。

 一方、馬のフィジカルの可動性と柔軟性については、ライダーの一定以上のスキルが要求されるので、ライダーのレベルが問われる要因なのである。

 そこで、一定レベル以下のライダーに対して、馬の可動性と柔軟性は、クラブ側や上級のライダーが責任を以て、馬の可動性と柔軟性を養成し、その養成された馬を、一定以下のレベルのライダーに提供しなくてはなりません。

 これをフィジカルの可動性と柔軟性を養成されていない馬を、初級のライダーに提供することは、無謀なことなのである。

 日本の多くの乗馬クラブで、初心者が馬を推進できなかったりガイドできなかったりしているのをよく見かけるが、多くの場合、馬のフィジカルに問題あるものが多く、初級者の手に負えない馬を提供しているのが原因なのに、ライダーの姿勢やレインを持つ手の不味さを指導者が指導して駄目出しをしているのである。
 こんなことでは、到底初級者であるライダーの上達を期することは、不可能なのである。

2024年5月7日
著者 土岐田 勘次郎

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