Horseman's Column title

VOL.183「壁どん」


2025年7月号

 今月のテーマは、「壁どん」である。

 ライダーが物理的力で、馬を動かすことはできないのである。
 何故なら、馬体に作用点と支点が位置するからで、同一物体上に作用点と支点が位置すれば、その二つの力は相殺されるので、そのものが動くことには繋がらないのである。

 従って、ライダーは、馬のメンタルを活用して、馬を動かしたりその動きをコントロールしたりして、乗馬を成立させているのである。

 然らば、ライダーは、どのようにして、馬のメンタルを活用することができるのだろうか。

 馬のメンタルにおいて、ライダーの存在を大きくすることで、馬のメンタルを活用することができるのである。

 そこで我々は、「壁どん」を考案したのである。

 ライダーが、馬に対して矛盾する要求、つまり、動き難くしたうえで動けという要求をする。そして、その要求通りに馬が反応をしたとき、掛けていたプレッシャーをリリースする矛盾である。

 さて、その矛盾する要求とは、如何にということになる。

 馬の自然な運動のメカニズムは、頭が8の字運動することで重心移動を行い、これに伴ってステップするのである。
 馬の頭が、左上に上がって、左下へ下り、右上に上がって、右下へ下りるという8の字運動し重心移動を行って常歩をしているのである。この重心移動に伴ってステップしているのである。これをメカニカルムーヴメントというのである。

 馬は、このように肢の筋肉運動を最小限して動けるように、進化したといわれているのである。筋肉運動を最小限にするということは、体力の消耗を軽減するということと筋肉のコンディションに影響されにくいという利点があるのである。これに対して、下り坂を下るようなムーヴメントなので、慣性が働くので、制動性に欠ける運動でもあるのである。

 つまり、馬のメカニカルムーヴメントは、省エネで慣性が機能しやすい利点と、制動性に欠けるという欠点があるのである。従って、馬は、筋肉運動もできて、ステップによる筋肉運動で重心移動し運動することもでき、突発的な必要性に対応できるようにもなっているのである。これをテクニカルムーヴメントいうのである。

 馬は、このような運動メカニズムで動いているので、左右のレインの長さをタイトにして馬の頭の上下動を拘束すると、馬の動きは鈍化するのである。

 左右のレインをタイトにして頭の上下動を拘束し、馬の動きが鈍化したときに、脚をどんと入れて刺激し、馬が数歩ステップしたところでタイトにしていたレインをルーズにしてリリースするのである。
 これを「壁どん」というのである。

 レインをタイトにすることで壁を作り、馬の頭の上下動を拘束し動きが鈍化したとき、脚をどんと入れる。そして、馬が数歩前進したときレインをリリースするのである。

 これは、レインをタイトにして頭の動きを拘束することは、馬が動きにくくなり、その上で脚をどんと入れれば動けという意味になるので、ここに矛盾があるのである。
 この矛盾を馬に強いることで、馬のメンタル上に、ライダーの存在が大きくなるのである。
 ライダーの存在が、馬の中で大きくなることは、ライダーが馬に対して主導権を握るということなのである。
従って、馬の中で存在感の大きくなったライダーが、馬に対してプレッシャーを掛ければ、そのプレッシャーに、馬が従うということになるということである。

 脚は、飽くまでも刺激であって、扶助とはいえないのである。

 因みに扶助とは、馬の動きを助ける役割をするプレッシャーのことで、ライダーの重量や重心移動は、扶助のカテゴリーに入るのである。これに対して、脚やレインプレッシャーは、刺激でしかなく合図なのである。 但し、レインプレッシャーの中で、馬の頭の動きを左右するプレッシャーは、扶助といえるのである。

 「壁どん」とは、馬のメンタルにライダーの存在を大きくするために、矛盾をすることなのである。
 従って、馬の首を曲げたり後駆を曲げたりする馬体のフレームワークは、馬の重心の位置が変化し、馬の推進力が減退させるので、このとき動きが減退しないように、刺激を与えるようにして、推進力を維持することは、「壁どん」の応用編なのであり、馬のメンタル上にライダーの存在を大きくしているのである。

 つまり、ライダーが馬に対して、いろいろな要求し、馬体のフレームワークをしつつ推進力を減退させないようにして、馬とのコミュにエーションをしていることは重要で、馬のパフォーマンスの精度を上げると同時にライダーの主導権を養成しているのである。

 従って、ライダーは、馬を乗るにつけて馬とコミュニケーションして、馬をコントロールするのであるが、絶えず、そのコミュニケーションは、ライダーが馬に対して主導権を握ることを養成するものでなくてはならないのである。

2025年3月29日
著者 土岐田 勘次郎

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