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VOL.184「漬けもの石のプロジェクト(乗馬や馬術の革命)」


2025年8月号

 今月のテーマは、馬のガイドとフレームワークの方法としての「漬けもの石プロジェクト」である。

 このプロジェクトは、乗馬において、最強で万能のツールといっても過言ではないのである。

 左右のレインの長さを均等にして、両手でこれを真上に引き上げるのである。まるで漬けもの石を持ち上げるが如くである。
 そして、作用点として、レインを真上に引き上げるのである。このとき、この作用点の支えとしての支点を、馬の正中線(馬体の縦の中心線:解剖学上の名称)上に、ライダーがシーティングしていれば、馬体を左側面が俯瞰すると、馬の前駆が真上へ、後駆が真下へと力が働き、右回転モーメントが働いて馬は収縮するのである。

 両手で左右のレインの長さを均等にして引き上げれば、ライダーはレインを引き上げるために、シートがこれを支えることになるので支点となり、馬の前駆が、レインを引き上げることで真上に力が働き持ち上げられ、馬の背中は、レインを引き上げる支えとなり支点となるので、真下へ押し下げられるのである。

 左右のレインの長さを均等にして、両手でこれを引き上げる様は、両手で漬けもの石を持ち上げる仕草に似ていることから、誰もがイメージできるようにと考えて、漬けもの石プロジェクトと名付けたのである。

 両手で左右のレインを引き上げれば、自動的にライダーのシートは、馬の背中を真下へ押すこととなり、馬の前駆が起揚して、背中は押し下げられることとなって、収縮するのであるが、このとき馬の正中線に支点を置くのではなく、右脚に支点を置くようすれば、馬体を左側面から俯瞰すると、垂直方向では右回転モーメントが発生し、馬体を真上から俯瞰すると、水平方向では右回転モーメントが発生するのである。
 このことで、馬は、左内方姿勢を取り、収縮することとなるのである。

 また、同様に左右のレインを均等に引き上げ、左脚を支点にすれば、左側面から俯瞰すると垂直方向では右回転モーメントが発生し、真上から俯瞰すると水平方向では、左回転モーメントが発生し、右内方姿勢を取り、収縮するのである。
 以上のように、作用点は、馬の正中線で上左右のレインを引き上げても、ライダーが正中線上にシーティングすれば、正中線上に支点を置くこととなり、左側面から俯瞰すると垂直方向の右回転モーメントが発生して、馬が収縮するのである。

 また、このとき右脚に支点を置けば、収縮して左内方姿勢を取ることとなり、左脚に支点を置けば、収縮して右内方姿勢をとることとなるのである。

 更にまた、馬を推進している前提において、上記の通り左内方姿勢を形成している状態で、左右のレインを馬の正中線よりやや左側に引き上げれば、馬の軌道はやや左側へ移行するようにガイドできて、左右のレインを馬の正中線よりやや右側へ引き上げるようにすれば、馬の軌道はやや右側へ移行するようになるのである。

 反対に、右内方姿勢を形成している状態で、左右のレインを馬の正中線よりやや右側へ引き上げれば、馬の軌道はやや右側へ移行するようにガイドできて、左右のレインを馬の正中線よりやや左側へ引き上げるようにすれば、馬の軌道は右側へ移行するようになるのである。

 この軌道の移行によって、馬のステップのコマンドを崩すことにはならないのである。何故なら、馬の姿勢に変化を与えていないからである。

 因みにステップのコマンドとは、進行方向に対して、内方肢に対して外方肢が外側をクロスステップすることをいうのである。

 例えば、左回りのときは、前後肢共に左肢に対して右肢が外側をクロスステップし、右回りのときは、右肢に対して左肢が外側をクロスステップする法則のことである。

 推進を前提にして、右脚を支点にし、馬の正中線に沿って左右のレインを真上に引き上げれば、収縮し左内方姿勢ができるが、右脚をそのまま支点にして、更にもっとレインを引き上げれば、左内方姿勢のまま左サークルから右サークルへと移行して、リヴァースアークとなるのである。

 また、右脚を支点にして、馬の正中線に沿って左右のレインを真上に引き上げれば、収縮し右内方姿勢ができるが、左脚をそのまま支点にして、皿に盛ってレインを引き上げれば、右内方姿勢のまま右サークルから左サークルへと移行して、リヴァースアークとなるのである。

 これらの仕法は、作用点と支点の二つの力を連携させることで、馬のフレームワークやサークルの進行方向をガイドできるのである。

 以上のことは、これまでの乗馬や馬術の常識を、覆すようなことなのである。何故なら、馬の進行方向をガイドしたり内方姿勢や収縮を形成したりするには、脚によるプレッシャーが必要で、手でばかりレイン操作すると、後肢の踏み込みがなくなるといわれてきたが、これは全くの間違いなのである。

 飽くまでも馬の推進が前提とはなるが、つまり、ライダーが馬に対して主導権を握っていることが前提で、例えば、ライダーが馬の正中線上にシーティングして、左右のレインを真上に日陰れば、態々脚を行使することがなくても、収縮が形成できるし、左右どちらか片方の脚を支点して、左右のレインを真上に引き上げれば、態々脚を行使することがなくても、左右どちらかの内方姿勢ができるのである。

 つまり、脚やシートを支点にしてレインを引き上げれば、引き上げる力と同じ大きさの力で脚やシートの力で押しているのであって、脚やシートの支えなくしてレインを引き上げることは、何人も不可能なのである。
 態々脚を入れるということ自体がナンセンスなのである。

2025年6月2日
著者 土岐田 勘次郎

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