Horseman's Column title

VOL.186「ムーヴメント」


2025年10月号

 今月のテーマは、馬のムーヴメントである。

 馬は、頭の上下動(首の伸縮運動)によって重心移動を行い、これに伴って肢を動かして動いている動物である。

 この動きをメカニカルムーヴメントいい、筋肉運動を極力少なくしているのである。また、このムーヴメントを、馬の頭が動き重心移動が起こし、これに伴ってステップするところからノーズファーストともいうのである。

 馬のメカニカルムーヴメントは、体力の消耗が少なく、フィジカルのコンディションの影響も少なくて済むのである。
 しかし、メカニカルムーヴメントは、下り坂を下るような運動で慣性が働き、体力の消耗が少ない一方で、制動性が悪い運動でもある。

 一方、馬は突発的な出来事に対応するために、筋肉運動により瞬発的に動くこともできて、後肢への体重の負重を大きくすることで、後肢の筋肉運動を活発化し動くことができるのである。これをテクニカルムーヴメントというのである。また、このムーヴメントを、ステップすることで重心移動を起こしていることから、ステップファーストともいうのである。

 因みに、競馬で第4コーナーを回り、馬が頭を上げてダッシュするのは、頭を上げることで、重心を後駆へ移行して、筋肉運動を活発化しているのである。

 テクニカルムーヴメントは、筋肉運動なので、体力の消耗が比較的大きく、フィジカルのコンディションにも影響を受け易い運動なのである。しかし、上り坂を登るような動きで、筋肉を恣意的に動かすので、制動性が高いのである。

 競馬馬で、第4コーナーで頭を持ち上げてダッシュする馬は、エキサイティングな競馬をするので人気があるが、フィジカルのコンディションに影響されやすいので、大勝ちしたり大負けしたりするのである。

 重心とは、質量の中間点(Center Of Gravity)である。
 中間点ということは、馬体の末端と重心との距離で、頭が上がると重心と近くなるので、その分だけ重心は後方へ移行するのである。

 テクニカルムーヴメントを作るとき、ブリティッシュの場合は、頭頸を起揚させてバランスバック(重心を後方へ移行する)しているのである。

 その一方、ウエスタンの場合は、牛を追いかける必要があり、馬の運動神経を活用しなくてはならないために、ルーズレインで馬をコントロールすることから、馬の頭の動きを拘束することができないために、後肢の踏み込みを深くして、後肢への体重の負重を大きくして、後肢の筋肉運動を活発化しているのである。厳密にいえば、これをバランスバックとはいい難い、何故なら重心そのものの位置は変えていないからである。

 つまり、ウエスタンとブリティッシュの最も異なるポイントは、このバランスバックの方法であり、ブリティッシュ乗馬は、前駆を起揚させ重心を後方へ移行することでバランスバックを実現し、ウエスタン乗馬は、重心の位置を変えずに後肢の踏み込みを深くして、後肢への体重の負重割合を多くしてバランスバックを行っているのである。


「山の彼方」

 水平方向の運動のときに、ステップファーストのムーヴメントを起こすときに、馬の頭の位置を、馬の胸の中心より動く方向の反対側に置き、ステップをさせることで、ステップファーストのムーヴメントを作ることができるのである。

馬の胸の中心を山の頂と捉えて、この山の此方(進行方向)ではなく彼方(進行方向の反対側)に馬の頭を置くことから、「山の彼方」と名付けられたのである。
此方に馬の頭をおけば、ノーズファーストのムーヴメントになりやすいのである。

ステップファーストは、ステップによって重心移動を起こして動くムーヴメントで、ノーズファーストは、馬の頭の上下動で重心移動を起こして、重心移動に伴ってステップする動きをするムーヴメントである。

 因みに、スピンのとき、動きがスムースでなくジャンプアップするような場合、山の彼方に馬の頭を置きステップを促せば、ステップファースのムーヴメントにすることができ、スムースなスピンに改善できるのである。

2025年6月3日
著者 土岐田 勘次郎

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