Horseman's Column title

    VOL.25 プレッシャーのトーン (Tone 音程、音声、音色、音質)

                                                 

 2012年5月号


 今月のテーマは、プレッシャーのトーン(Tone音程、音声、音色、音質)です。

 ライダーは、馬とのコミュニケーションによって、馬をコントロールする。

 コミュニケーションは、プレッシャーとリリースの使い分けでしかなく、パソコンの+−(0・1)であり、プレッシャーとリリースの二つを、如何に使い分けるかでコミュニケーションをしているのであって、それは人間同士のコミュニケーションも例外ではない。

 そこで今月は、そのプレッシャーのかけ方、つまり、プレッシャーのトーンについて解説していきたいと思う。

 レインハンドやレッグやシートによるプレッシャーをかけて、馬に命令や指示を送る。このときのファーストコンタクトがどんなトーンで、馬がそのプレッシャーをどのように受け取ったかによって、馬のメンタルの作用が大きく違ってしまう。
 つまり、馬の反応がライダーの要求通りであっても、馬の精神がどんな受け止め方をしたかは、一様ではないということなのです。

 例えば、ロープのディパーチャーでも、外方のレッグプレッシャーをいきなり強く与えて正しいリードのディパーチャーができたとしても、馬は緊張してディパーチャーを行ったことになり、次のときレッグプレッシャーを与えるそぶりをしただけで馬は緊張するようになって、馬によっては慌ててディパーチャーをして速いスピードのロープをするようになってしまったりする。
 しかし、レッグプレッシャーを徐々にゆっくりと強めていってディパーチャーをするようにすれば、馬はレッグプレッシャーに対して緊張することなく受け入れるようになるから、リラックスを維持してライダーの要求に応えるようになるのです。

 プレッシャーは、馬をコントロールするためには必要なことだが、馬のリラックスを破ってしまうリスクを伴うものだということを、ライダーは知らなくてはなりません。

 不用意にプレッシャーをかけ続ければ、馬のストレスは溜まりフラストレーションとなって、レジスタンスやナーバスやサワーやアンバランスなどの精神状態を作ってしまいかねないのです。

 馬がリラックスした精神状態にあることは、ライダーにとって何よりも優先しなくてはならない条件で、リラックスが破られればライダーの要求に耳を貸さなくなったりその意味を理解できなくなったりして、何れにしてもライダーのコントロールを失うことになるのです。






 そこでライダーは、かけるプレッシャーのトーンである加減を、自在にコントロールする技術を身につける必要があるということになり、馬をコントロールするには、自分が馬に与えるプレッシャーの強さをコントロールできなくてはなりません。

 さて、ライダーがプレッシャーを馬に対してかけるときに、自然に念頭にあることはどんな馬の反応を求めているかであるが、その反応だけではなくどんなトーンでその反応をさせるかを念頭に置いて、そのトーンに見合うプレッシャーのトーンで、馬に指示命令をするように心がけなければなりません。

 予め求める馬の反応のトーンを想定して、かけるプレッシャーのトーンを決めて馬とのコンタクトをするということです。

 馬の反応を求めるだけのプレッシャーのかけ方は、馬とのコミュニケーションが一方通行のものになってしまって、徐々に馬とライダーのコミュニケーションは途絶えるようになり、当然ライダーのコントロールを馬は受け付けなくなってしまうのです。

 従って、ライダーは求める馬の反応を意識することは勿論のこと、同時にどんなトーンでの反応を求めるかもまた同等程度に意識して、プレッシャーをかけるように心がけることによって、ライダーがスキルアップするに伴って、馬の感情や精神状態を読み取れるようになり、従順性や忠誠心を育むことができるようになるのです。

 ライダーの最も優先して身につけなければならないスキルは、自分自身が馬に与えるプレッシャーの加減をコントロールする技術です。
 そして、プレッシャーとリラックスとの相反する二つのことを、実際にやってのけることができなくては、馬の従順性や忠誠心を育んで、能動的にライダーの欲するところに従う馬を作ることはできないのです。
 ライダーは、馬に対してプレッシャーをかけても緊張をさせず、リラックスを維持できるようにする。

 そのために、馬の反応のトーンを予めプレッシャーをかける前に意識下に置いて、プレッシャーをかけるように絶えず心がけることによって、何時如何なるときにも求める反応のトーンに見合ったプレッシャーをかけることができるライダーになることができるのです。

 プレッシャーは、馬に緊張を与えることなく指示命令を的確に、伝えることができるものでなくてはならないのです。







             2012年5月

             著者 土岐田 勘次郎


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