Horseman's Column title

    VOL.29 「アウトプット」



                                                 

 2012年9月号


 今月のテーマは、アウトプットである。


 アウトプットとは、ライダーがプレッシャーを与えることがインプットだとすると、馬がどのようなステップや進行方向へと重心移動をするかであり、馬の運動のことである。

 ライダーは、インプットの仕方によってアウトプットが決まると考えがちだが、アウトプットをどうするかによってインプットが定まると考えるべきで、インプットがどうあれ、アウトプットのために馬のフレイムを作ったりバランスやモーメントを作ったりすることによって、インプットしたプレッシャーのパワーを活用して、意図するアウトプットをさせるかがライダーのテクニックともいえる。
 つまり、一つのインプットによって大凡のアウトプットが決まってしまうのではなくて、二つ以上の複数のインプットによって、アウトプットが定まるのである。

 インプットしたパワーをどのようにアウトプットするかは、二つのインプットするパワーの大きさの違いや交わる角度に寄って創出されるのである。

 二つのインプットするパワーとは、シートや脚によるドライブ(推進)とレイン操作によるブレーキ(抑制)や内方姿勢や外方姿勢などのフレイムやモーメントやバランスなどのことである。

 そして、アウトプットは、馬の運動のことなのである。

 一般的にライダーは、インプットするドライブのパワーによって馬を運動させていると思いがちで、そして運動している馬をコントロール(制御)するために、レイン操作を行うと考えている。

 確かに一旦推進して馬に運動をさせて、動いている馬を制御してコントロールする場合もないではないが、多くの場合はそうではなくて、インプットする二つのパワーであるドライブとブレーキが互いに交わって、馬体の中で中間値が弾き出され、馬のアウトプットである運動が起きる。つまり、馬は運動が起きる時点で、コントロールされた運動(アウトプット)を行うことになるのである。

 アウトプットされた時点で、運動エナジーがコントロールされていなければ、馬をコントロールすることはできないのであり、インプットする二つのパワーのコンビネーションによって、馬の運動をコントロールするのである。
 もっと平たくいえば、推進する力と抑制する力との組み合わせで、馬の運動を制御すると考えなければならないということである。

 中級のライダーになると多かれ少なかれ誰でもやっていることだが、そのように認識している人は少ないのである。
 この認識が必要で、二つのインプットの中で、主に推進となるインプットは重要で無いわけではないが、その中身は極言すれば強弱しかないが、もう一つの抑制のインプットは、可成り多岐に亘りテクニカルであり複雑なのである。






 二つのインプットを仮に推進をD(DriveのD)、抑制をB(BrakeのB)とすると、ライダーがBをインプットする場合は、必ずDの大きさとその方向性(ベクトル)を感じ取っていなければならないのであり、またライダーの意志としてどのようなアウトプットをするかを明確に認識していることが重要で、その上でDの大きさとその方向性を察知して、その察知したDに対して、予め決まっているアウトプットを引き出すために、Bを決めてインプットするというメカニズムである。

 インプットBは、そのパワーの大きさもベクトルも単独で決まるというものではなくて、飽くまでもDに対応するように決まってくるものだから、ライダーがDを正確に察知している必要があって、アウトプットは、ライダーが感覚的にインプットDとアウトプットを明確に認識していれば、必然的にインプットBも定まるし正確に行われるのである。

 ところが多くのライダーに見られるのは、アウトプットをBのインプットで作り出そうという意識が強くて、Dのベクトルや大きさを感知せずにBのインプットを行おうとするので、当然のようにアウトプットが意に反したものとなるのである。


  X(アウトプット) = D(ドライブ 推進) + B(Brake 抑制)


 この方程式は、ライダーがイメージするアウトプットXを導き出すために、Dのインプットを与えると同時に、Dの大きさとベクトルを察知して、これに対応するようにBの大きさとベクトルを定めてインプットするということである。

 Dのインプットは、ライダーのポジショニングと脚によって作り出し、ポジショニングとは、ライダーの座る位置のことで、馬とライダーとで作られる重心に対してどのような位置に座るかであり、このポジショニングによって、馬はメカニカルムーブメントとテクニカルムーブメントとの割合が大きく違う運動を求められることになるので大変重要なファクターであるが、ポジショニングについてはホースマンズコラムで別に書いているので、その記事を参照して頂きたい。
 そして脚は、馬のどの肢を駆動させるか、左右の脚の推進によってDの方向性を決定付ける。

 Bは、主に馬の頭の位置や馬体の姿勢(フレイム)や重心の位置をレインコンタクトやポジショニングや左右の脚の位置関係によって、Dの大きさや方向性に対応して、Xを決定付けるのである。

 乗馬におけるアウトプットは、馬の運動であり、アウトプットXは、推進Dのインプットの大きさとベクトルに対応するように、抑制Bのベクトルと大きさを決定付けて、そうして得られるのである。






                 2012年8月29日

                 著者 土岐田 勘次郎


HOME

ホームへ戻るボタン

Eldorado Ranchへのメール reining@eldorado-ranch.com
TEL 043-445-1007  FAX 043-445-2115

(c)1999-2010. Eldorado Ranch. copyright all rights reserved.
このサイトの
記事、読み物、写真等の無断使用は禁止とさせていただきます。