Horseman's Column title

    VOL.34 フレーミング (姿勢及び体勢)



                                                 

 2013年2月号


 今月のテーマはフレーミングで、馬の体勢や姿勢について解説したいと思う。

 馬術における姿勢や体勢とは、内方姿勢とか収縮姿勢とか屈撓姿勢ということである。

 内方姿勢は、馬の骨格構造特性から、合理的運動とサークル運動上発生する遠心力に対抗するために考案されたものである


 は、進化の過程で、静止時において極力腱や筋肉の働きをしなくてもいいように脊椎の柔軟性を失ったのである。

 犬や猫などの肉食獣のように脊椎が柔軟性を持っていると、運動時においては活発に背筋力を行使でき、瞬間的にトップスピードに達して獲物を捕らえることができるが、筋肉力は持久力に難があって、長時間の運動に耐えることができないし、時のコンディションにも影響されやすいのである。
 犬や猫が静止時に直ぐに寝転んでしまうのは、只立っているだけでも脊椎が柔軟なので筋肉力を使い疲れやすいためなのである。

 しかし、馬がもし静止状態の時に疲れやすく何時も寝転んでしまうようであれば、たちまち肉食獣の餌食になって、絶滅してしまったことだろう。そのために脊椎の柔軟性を失って、筋肉や腱の働きを極力少なくできるように進化したのである。

 そうなればなったで、不自由なことが起きる。
 それは、運動エナジーが重心を通過して運動することによって疲れにくくなるのに、脊椎の柔軟性がないので、重心を運動エナジーの線上へ移動することができないので、運動エナジーを馬体の対角線を通過するようにして、運動エナジーが重心を通過するのである。
 こうした理由から、馬が斜対速歩や斜対駈歩をするようになった理由なのである。


 方姿勢は、外方後肢と内方前肢が同一線上に位置するようにすることなのである。(2Track 二蹄跡運動))同一線上に位置すれば、外方後肢から発する運動エナジーが第12肋骨の重心を通過して、効率の良い運動をすることができるのである。

 つまり内方姿勢は、馬が省エネで走るためにあるということなのである。

 もう一つの内方姿勢の役割は、サークル運動によって発生する遠心力に抗して運動するためで、外方後肢がインサイドステップして内方前肢へ向かうことによって遠心力に対抗するから、馬は肩を倒さずにサークル運動ができるのである。

 逆リードでサークル運動をすると、ライダーは回転の外に振られるような感じを受けたり、人馬転をしたりするような不安を感じるのは、外方後肢がアウトサイドステップして、遠心力のベクトルと外方後肢のステップのベクトルが一致してしまって起きる現象なのである。




 に、収縮姿勢(Collection)である。

 物体は、その物体を支える支点の位置が、その重心から離れれば離れるほど安定し動きにくくなり、近ければ近いほど不安定化し、動きやすくなる。

 収縮は、内方姿勢とその目的は同じで、運動の効率化であり省エネのためのものである。

 馬の運動は、メカニカルとテクニカルムーブメントとに分けることができて、メカニカルムーブメントは、重心の移動を先に行ってからステップする運動で、テクニカルムーブメントは、ステップしてから重心の移動を行うものである。

 メカニカルムーブメントは、主に首を振ることによって重心を移動させてから、これを支えるためにステップするので、筋肉運動の割合が少なくて済むのである。一方、テクニカルムーブメントは、ステップしてから重心を移動するので、最初に筋肉運動によって脚を動かして、且つ重心を筋肉によって持ち上げて移動するから、メカニカルムーブメントに比べて遙かにエナジーを消耗するのである。しかし、初動作を速めるという利点とコントロールにおいては比べようもない程、メカニカルムーブメントよりも勝るのである。

 そして、収縮姿勢は、後肢を重心の近くまで持ってくることによって、絶えず運動エナジーの働きが重心の近くで起きることになって、運動力を最大にすることも消耗を最小限にすることも容易になるので、肩から頭頂にかけて屈撓させて重心へより近づけると同時に、後肢をより重心近くまで踏み込ませて、馬体全体を重心の近くに集めるようにすることによって、収縮姿勢を形成することができて、その運動の効率化という目的を果たすことになるのである。

 撓姿勢は、馬が脊椎の柔軟性を失って進化したことは既に触れたが、それでも人が乗れば脊椎は下方へ負荷が掛かるので、馬の顎を引かせて、項靱帯を緊張させると共に背筋を緊張させることができて、下方に掛かる負荷に対抗させるためなのである。

 さて、この3つの内方姿勢と収縮姿勢と屈撓姿勢を作るために、どのような方法で行うかは、あまりに記事が長くなってしまうので、来月のお楽しみということにする。



                 2013年 1月 18日

                 著者 土岐田 勘次郎


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