VOL.36 「馬の姿勢とモーション」 |
2013年4月号 今月のテーマは、馬の姿勢から繰り出されるモーションについて考えてみたいと思う。 ライダーは、馬に対してPosture(姿勢)の形成と、Drive(推進)の二つを要求しているといえる。 しかし、馬の推進に対しライダーが強制力を持っていることがあって、それは、ライダー自身の体重なのである。何故なら、騎乗しているとき馬はライダーの体を持ち上げているからである。 停止状態からものが動くということは、支持力を越えた重力がかかったときで、大きな運動を起こすためには、支持力が一定であれば、重力を最大化しなくてはならないし、重力が一定であれば、支持力を最小化しなくてはならない。 何れにしても、支持力を越える重力がかからなければ、停止状態にあるものが動くことにはならない。 その支持力を、越える重力を筋力で作り、動いたものを支持するためにステップする運動の繰り返しを、テクニカルムーブメントと云い、支持力を越える重力をアンバランス状態によって作り動くことを、メカニカルムーブメント云うのである。 乗馬において、重力を大きくするということは、ライダーが姿勢を傾けるか馬自身の姿勢を傾けるか、馬自身の筋力を駆使するかである。 また、支持力を小さくするということは、支持している4本の肢を重心の真下へ集めることである。つまり、これが収縮であり、支持力を最大限に小さくするために収縮があるのである そして、支持力を最小限にすることで、ライダーの体重を最大限に運動エナジーへ転換させることできるのである。つまり、ライダーの唯一馬の推進における強制力を、最大限にすることができるのが収縮姿勢なのである。 |
逆説すれば、馬を収縮させることがなければ、支持力が大きく、馬を推進するためにライダーの体重を最大限に活用することはできない。つまり、推進するためにライダーと馬とのコミュニケーションの割合を大きくしなくてはならないし、そのコミュニケーションが大きく推進に影響を与えるためには、馬の従順性が重大な要素となるのである。 しかし、ライダーの強制力が最大になるのは、馬に収縮をさせたときであり、その過程において馬の従順性を育むことによって、強制力の最大値の時において馬の従順性の最大値を示すようにすることが、馬のトレーニングなのである。 馬の収縮と従順性が一致するように、トレーニングをすることが、トレーニングの主たる目的だと云うことができるのである。 ライダーが、馬の頭を下げたり屈撓させたり収縮させたりするのは、強制力で強制することができるが、馬が従順になると云うことは、プレッシャー対して少なからず反発したり抵抗したりするのを止めて、このプレッシャーを受け入れたときで、抵抗や反発の力を抜いて抵抗や反発を止めるときなのである。 ライダーの与えるプレッシャーに対して、馬が力を抜いて反応を示すことが、従順の表れなのである。 ライダーは、絶えず自分の行使するプレッシャーを、最大限に推進に変換しようとする。 そのために、プレッシャーが直接馬の推進力へと変換するのではなくて、馬の姿勢や体勢である内方姿勢や収縮を作り、そのことによって間接的に自分の体重やプレッシャーが最大値として推進力へと転化するようにするのである。 運動方向、リード、方向転換、停止、発進、後退。スピードの緩急など馬のあらゆる運動を、ライダーは、自らの体重を最大限に馬の推進へと転化させるために、強制力を以て馬に収縮や内方姿勢などの姿勢を取らせ、その結果作り出された推進力をコントロールしているのである。 2013年 3月 25日 著者 土岐田 勘次郎 |
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