Horseman's Column title

    VOL.38「乗馬のセオリー 1.Preparation 準備運動」



                                                 

 2013年6月号


 今月は、乗馬のセオリーについて、考えてみたいと思う。



 先ず、セオリーの定義について、我々日本人が普段使っている意味合いとは少々違う答えが辞典を引くと出てくるようだ。

 theory

 1  理論, 学理; 仮説, 学説, …論; 理屈.
 ・in theory 理論上は, 理屈では (cf.  in PRACTICE).
 ・theory and practice 理論と実際.
 ・the theory of evolution 進化論.

 2  推測, 臆測; 意見, 持論, 私見.
 ・my theory of life わたしの人生観



 普段我々が使っているセオリーの意味合いは、体系とか構造とか正論とかいうようなもので、そして乗馬のセオリーということとなると、概ね備えるべきことや進めるべき手順の正当な道筋といったような意味合いである。

 トレーニングという視点でセオリーを説明すれば、大まかにPreparation(準備運動)・Training(調教)・ Cool down(鎮静運動) この3つに区分される。トレーニングという視点ではなく、トレールライドとかプレジャーライドとかいう場合でも、原則的に変わりはない。

 私の思想信条としては、馬に乗るイコールトレーニングで、このことは、目的が外乗であれ健康志向のためのライディングであれ、また競技のためやセラピーのようなライディングであれ、全て馬のトレーニングと切り離すことはできないので、ライダーはイニシアティブをとって馬に接することと同等の価値観で、全てのライダーはトレーニングという意識を持つ必要があると考えている。

 以上を前提として、乗馬のセオリーを考えてみることとする。


 プリパレーション(準備運動)は、リラクゼーションやウォーミングアップそしてプリパレーション(準備運動)を包括している。

 リラクゼーションは、馬がライダーの指示命令を理解するために、馬のメンタルがライダーに対して、コンセントレーションしていることと同時にリラックスしていることが必要不可欠で、そのためにライダーが最初に気にしなくてはならないことは、馬のメンタルの状態を知ることであり、そしてできるだけリラックスした状態を維持する。

 只単に、ライダーが馬のメンタルの状態を知るということはなくて、飽くまでも馬を、これから自分の指示命令に従わせてコントロールするという目的を果たすためであることを忘れてはならない。

 従って何となく馬が落ち着いているとかリラックスしているとか、良く世の中の人が馬のメンタルを、人間の感情で比喩するように表現するが、そうではなくて、ビットや脚のプレッシャーに対する反応や、周りの状況に対する挙動によって、抽象的ではなくて具体的に根拠を以て判断するように認識しなくてはならない。




 つまり、プリパレーションのセオリーとして、ゆったりとした運動の中で、ビットや脚のプレッシャーを与えて、その馬の反応によって、馬のメンタルの状態を把握するのである。

 馬のメンタルがリラックスして適度にライダーに対しコンセントレーションしているようであれば、次の段階へと進み、そうでなければ、先ずこれを馬に求める。

 ライダーの必要とする馬のコンセントレーションやリラックスは、ライダーの技量に反比例するから、これだという一定の不文律があるわけではないので、自分の技量に則って馬に求めるリラックスとコンセントレーションが定まるので、その求める馬のメンタルは、ライダーの技量を推し量る指標ともなるのである。

 原理原則として、馬にリラックスとコンセントレーションを求めるには、脚やビットでプレッシャーを与えて作るが、プレッシャーの加減は、馬の反応に基づいて行わなくてはならないことは鉄則で、予めライダーがそのプレッシャーの大きさを決めて行うものでもなく、ルーティンワークとしてワンパターンであってはならない。

 馬場中央までリーディングして馬を誘導し、そのときに馬の態度を見ておくことは大切なことで、落ち着きを見せているという前提でマウントしたとき、馬がゆったりとした態度で、マウントして指示するまでじっと停止状態を続けるかどうかは、馬のメンタルや性格を知る上でとても参考になることである。

 従って、マウントしたときに指示する前に馬が動いてしまったときは、必ず停止させて、停止したところでレインをリリースし、レインをリリースした状態でも馬が停止を続けるようになってから、脚を軽く使って動くこと指示してゆっくりした常歩を求める。

 丁寧にこの事態に対応するとすれば、馬がマウント時に動いてしまうとき、レインを引いて停止を促して、停止したときにレインをリリースして、リリース状態でも停止し続けるまで、何回でもこれを繰り返し、動くように指示するまで馬が停止状態を維持するようになったら、一旦ディスマウントして、再びマウントしても停止し続けるかを確認する。

 もし、このとき動くようであれば、何回でもこれを繰り返し、マウント時に停止し続けるようにトレーニングする。

 通常馬は、これを繰り返せば数回で、マウント時に停止したままになる。また、マウントとディスマウントは、騎乗回数だけ行われる行為だから、普段からマウント時に停止したままを維持するように心がけさえすれば、直ぐに馬はマウント時に必ず停止状態を維持するようになる。これをライダーが怠れば、馬はマウント時に動くようになり、大きな事故の元になりかねないのである。

 さてマウント後に、馬の落ち着きの程度にもよるが、特に興奮しているような状態でなければ、通常レイニングのパターンのラージサークルの大きさで常歩運動をする。

 そして、馬のメンタルの状態を知るために、常歩でサークル運動を始め、特に興奮している状態でなければ、左右(内方と外方)へ馬の首をベンドさせて、ビットプレッシャーの対する反応を見る。また脚によるプレッシャーを前肢と後肢へかけ、それぞれの反応を見る

 ここまでで、馬の従順さや訓練度や集中度を見ることができる。

 

 





           2013年 5月 29日

           著者 土岐田 勘次郎


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