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    VOL.39 「レイニングにおける諸問題」



                                                 

 2013年7月号


 今月のテーマは、レイニングにおける諸問題について、その対処法を解説したいと思う。

 レイニングのショーアリーナにおいて、心置きなく指定されたマヌーバーをパフォーマンスしたいと思うときに、ライダーが憂いを持つとすれば、どのようなことが上げられるだろうか。

 1.スピードコントロールにおいては、馬のメンタルがホットになって、コンセントレーションを欠いてしまい(アウトオブコントロール)、思い切ってスピードアップできない。

 2.サークル運動において、肩が倒れやすかったり内方へ切れ込んだりしてガイドしにくく、思い切ってスピードアップできない。

 3.スライディングストップのランダウンにおいて、馬がエキサイティングして勝手に暴走したり、直進性が崩れたりして、アウトオブコントロールになって、いいスライディングストップに至らない。

 4.ランダウンにおいて、最後までスピードやストライドを伸ばし続けず、ペースダウンしてしまう。

 5.チェンジリードにおいて、チェンジの切れ味が悪かったり、キューニングに過剰な反応をして速くなったり、アクションが大きかったりする。


 これらの問題は、大凡メンタルの問題としてライダーは感じるし、第三者から見ても、明らかにコンセントレーションを欠いていたり、ホットになってしまったりと、馬自身が、自らをコントロールできなくなってしまっている程、冷静さを失っているように見受けられる。

 しかし、メンタルにアプローチして、どんなにプレッシャーを掛けたりリリースしたりして、褒めたり懲罰を与えたりしても、改善することは先ずない。

 メンタルの改善は、先ずフィジカルの改善なくしては、できないのである。

 れらの諸問題を解決するには、このことの改善なくしてはできないことであり、このことだけで全てが改善するわけではないが、このことを抜きにして解決することはない

 そしてこのこととは、一言で言えばバランスバックである。

 つまりバランスバックして、テクニカルムーブメント求めてその割合を、メカニカルムーブメントに比べてより大きくしなければならないということである。

 馬がホットになったりコンフューズしてエキサイトしたりしたときに見せるムーブメントは、必ずメカニカルムーブメントになってしまっている。従って、先ずバランスバックして、筋肉運動の割合を大きくするテクニカルムーブメントを主体とした運動に切り替えなければならない。

 そのテクニカルムーブメントを創り出すためには、バランスバックが必要で、バランスバックとは、馬の重心をより後方へ位置するようにするということで、第12肋骨にあるといわれる重心を、ライダーのポジショニングや後肢の踏み込みや収縮や屈撓により、重心をより後駆へ負重するようにすることである。




 イダーができることは、鐙に負重するのを軽減するため鐙を強く踏み込まず、シートにできるだけ自分の体重を負重し、上体を起こして(後傾することなく、勿論、前傾することもない)、イメージとして馬の後駆へ自らの体重を負重するような姿勢を取ること。

 そして、馬の後肢をできる限り深く踏み込ませるように、ビットと脚の連携によって、馬の頭の位置と後肢の着地点との距離が縮まるようにして、収縮を図る。
 また、屈撓させるために、脚によって前進気勢を強め、その推進のエナジーをビットで制して、推進エナジーの行き場がショルダーのビルドアップに繋がるようにして作り、ショルダーがビルドアップすることによってもまたバランスバックする。

 以上のようなあらゆる方法を以て、後肢の着地地点が、バランスバックによって作られた重心より前方に位置して運動をする。

 まり、それはテクニカルムーブメントであり、馬を左側に頭、右側に後駆が位置するように横から俯瞰した場合に、馬全体が右回り(時計回り)の回転モーメントによる運動をする。
 その逆に、メカニカルムーブメントである後肢が重心より後方へ位置してする運動は、左回転(反時計回り)のモーメントによる運動をする。

 右回りのモーメントになる運動は、重心より前駆を常にビルドアップし、後駆を押し下げるモーメントとなる。

 左回りのモーメントになる運動は、重心より後駆をビルドアップして、前駆を押し下げるモーメントとなる。

 何れにしても、バランスバックすることの目的はテクニカルムーブメントを作ることで、テクニカルムーブメントは、その運動やその指示命令がフィジカルはもとよりメンタルに大きな影響を与えることとなって、フィジカルの改善がメンタルの諸問題を改善する特効薬になるのである。

 メカニカルムーブメントの状態では、どんなに馬のメンタルを従順にコンセントレーションできたとしても、馬自身が自らのフィジカルをコントロールできないムーブメントしている限り改善できないのである。

 まり、メカニカルムーブメントは、重心がこれを支える支持力を越えたときに起きる運動だから、連続動作においては、馬のメンタルではコントロールできにくい運動であるということができる。

 従って、パフォーマンスにおいて起きる諸問題を改善して、馬の運動をライダーがコントロールするためには、馬自身が自らのフィジカルの動きをコントロールできるようなテクニカルムーブメントでなければ、どんなにライダーが指示命令をして馬のコントロールしようとしても、馬自身が自らのフィジカルをコントロールできないのだから、ライダーの指示命令を馬が理解して従う気持ちを持っていたとしても不可能なのである。

 諸問題を改善する場合でも、馬のパフォーマンスのレベルアップをする場合においても、バランスバックはコアとなるファクターで、あらゆる馬術やその一つ一つのパフォーマンスの中心にバランスバックがあり、バランスバックを中心にフィジカルもメンタルも訓練すると考えるべきなのである。

 そして、乗馬においては、馬のメンタルがとても重要な存在であり、そのメンタルを、ライダーがイニシアティブをとってコントロールすることが、馬のコントロールの始まりであり究極であることは間違いのないところだが、フィジカルを通じてコミュニケーションしているのであり、メンタルの諸問題を改善するためにも、通常のトレーニングにしても、フィジカルの改善を以てしなければならないのであり、そのコアとなるファクターがバランスバックなのである。







           2013年 6月 20日

           著者 土岐田 勘次郎


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