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    VOL.47「乗馬におけるライダーのビジネス(Business 役割)」



                                                 

 2014年2月号


 今月のテーマは、乗馬におけるライダーの成し得る役割で、ライダーは、脚やシートによる推進とレインコンタクトによる抑制とで、馬をコントロールしている。
 そしてその本質に迫り、実際にどんな役割を果たして、馬のコントロールをしているかを解説してみたい。


 我々は、ものを動かそうとしたり止めようとしたりするとき、必ず2点間において、全く正反対の方向と同量の力を駆使して果たしている。
 つまり、支点と作用点の2点間において、全く同量で正反対の方向の力を駆使して、作用反作用によってものを動かしたり止めたりしているのである。

 ものを持ち上げようとすれば、そのものの重量を超える力で持ち上げているが、実際には、その持ち上げるパワーに対して、正反対(180°)の方向と同僚のパワーで地面を押し下げていて、その反作用によってものが持ち上がっているのである。
 もし地面を押し下げているのにクッション性があったり、足が地面に埋まっていってしまえば反作用せず、ものを持ち上げることはできない。

 以上のようなことを尤もらしくいわずとも、誰でも常識で知っていることだ。しかし、我々は作用点を意識するが、同等以上に支点にかける力を意識しないことが多いのではないだろうか。

 

 況して乗馬となると、レインを引っ張ったり脚やシートでドライブしたりするときに、作用点は自らしようと思っていることだから、意識するのは必然的なことで、意識から外れることは大凡ない。しかし、シートや脚で馬をドライブしているときに、何処に支点をおいて支えているのか、レインを引っ張っているときに、何処に支点をおいて支えているのかを、最初から認識して作用点に力を加えているのだろうか。

 馬を推進する場合でも、抑制する場合でも、作用点と支点の2点間において相互に正反対方向で同量の力を加えなくては、成果を上げることはできないのである。
 従って、ライダーは、レインを引くときは、シートや脚に支点をおくことを意識しなくてはならないし、脚やシートで推進するときは、レインをホールドして支点をおくことを意識しなくてはならないのである。

 地上での支点と作用点は、動かそうとするものが作用点になって、地面や床が支点になり、作用点と支点のおかれる場所は異なる物体上なので、作用点と支点のそれぞれ一方を意識すれば、もう一方の点を意識しなくても、必然的に機能させることができるが、馬上での推進と抑制のように、同一物体上に支点と作用点を置く場合は、2点間の距離を縮めることはできても、そのものを動かしたり動きを止めたりすることはできないので、意図的にこの2点を意識せずに、作用点や支点の一方だけを意識するだけでは、2点間においてできるモーメントを意図的に作ることはできない。



 モーメントを意図的に作ることができなければ、間接的に馬の運動をコントロールすることはできない。


 前進気勢を旺盛にしたり減退したりすることを、直接馬上でライダーが物理的力を以てすることはできずに、ライダーは、馬の頭により後肢を近づけたり、馬の頭を横腹に近づけたり遠ざけたりと、馬体性を変化させることによって、屈撓させたり収縮させたりと馬体性を形成することは、物理的力を以てでき、その体勢から繰り出されるムーブメントを間接的にコントロールするというメカニズムなのである。

 従って、馬の推進は、ライダーの体重や馬の重心の置き所によってなすべきもので、脚の作用は、刺激としての役割以上に馬を推進することに関与することはできないのである。

 つまり、どんなに脚を使っても、馬がメンタルの作用として従いたくないと思ってしまえば、物理的力に抗う必要なく抵抗できてしまうのである。

 ところが、馬の頭を支点にして馬の背中(ライダーの座っているところ)を作用点に、またはその逆に頭を作用点に背中を支点にして、力を加えれば、馬がそれ以上に力を加えて抵抗しなくては、ライダーに逆らうことはできないのである。

 馬は自らの姿勢によって、重心が移動して、その重心の位置によってメカニカルムーブメントやテクニカルムーブメントをすることになるので、ライダーは、物理的作用によって支点と作用点を近づけたり遠ざけたりして、重心の位置を自在にコントロールして、作り出すムーブメントに影響を与え間接的に馬の運動をコントロールするということなのである。

 例えば、馬の頭と背中(ライダーのポジション)の位置を近づければ、結果としてバランスバック、つまり重心が後駆へ移動し、馬はより筋肉運動(テクニカルムーブメント)を強いられるし、頭と後駆の位置が遠ざかれば、バランスフォーワードになり、メカニカルムーブメントになり、より筋肉運動を軽減することになるのである。

 また、馬の頭が右側へ偏れば、馬の重心は右寄りになり、馬は右方向へ運動しやすくなり、その逆は左方向へ運動しやすくなる。しかし、馬の頭が右へ偏ってとしても、後駆と頭の位置を近づけることによって、後肢の筋肉運動を活発にして、左方向へ運動させることも可能になるのである。

 

 ライダーは、作用点と支点を同等に意識して、馬の頭と背中(ライダーのポジション)との位置関係を自在にコントロールして、4肢の位置をコントロールし、支点と重心の位置を自在に変化させることによって、馬の運動を操作する。

 また、支点と作用点の2点間における異なるベクトルの力を交差させて、その運動エネルギーと交差する角度によって作られるモーメントを以て、馬の体勢(Posture)を形成する。






                 2014年 2月26日

                 著者 土岐田 勘次郎


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