VOL.53 「ライダーのフィール」 |
2014年9月号 今月のテーマは、ライダーのフィールで、馬とのコミュニケーションにおける送受信のレーダーともいうべき機能だ。 レインコンタクトや脚のプレッシャーにおいて、馬との接触点での感触を察知する能力がフィールで、フィールが機能しないことには、馬とのコミュニケーションが上手くいかないのは勿論のこと、現状を把握することもできない。 フィールは、訓練によって養成するもので、ライダーがどんなことに気を囚われているかに大きく左右されるもので、緊張していたり不安や恐怖に戦いていたりすれば、馬との接点においてどんな感触を得ているかが認識できなくなってしまうものだ。 つまり、フィールは、ライダーの意識如何でその機能が大きく左右されるものだということである。 従って、ライダーがフィールを養成するために、どんな意識を持つかが重要で、意識の持ち方次第でフィールが、目で見ているかのように事態を把握するように発達するか、まるで状況を読めない鈍感になってしまうかが決まってしまうのである。 それでは、どのようにすればフィールを養成することができるようになるのだろうか。 意識の持ち方次第なのだから、動作を意図的に行うことが重要で、特に最終動作を意図的にやろうという気持ちで行うことだ。 運動の精度を上げるには、運動神経を鍛えるのはなくて、感覚神経を鍛えることでなくてはならないので、つまりフィールを養成することにあり、そのために自分がやろうとする最終動作を意図的に行うことで、その瞬間において得た感触が残余感として記憶される。 これを繰り返すことによって、記憶された残余感と運動の結果がリンクするようになって、いい結果を導き出す感触に繋がってくるのである。 最終動作とは、レインコンタクトであれば、例えば馬の首を曲げるためにレインを引く場合、座骨を支点にしてレインを引くことを意図的に行うということで、脚でプレッシャーを掛ける場合は、脹ら脛やスパで馬のボディーに当てることを意図的にやろうとすることだ。 このように、より具体的に自分がやろうとすることを意図的に行うことで、意識的に自分の動作を追いかけるようになるので、そのときの感触を察知しながら行うようになるのである。 |
ボールを蹴ったり投げたりする場合は、自分の肢のどの部分でどのように蹴るか、最終的にどの指がボールから離れるかを意図的に行えば、残余感としてボールが足や手の指から離れる瞬間が記憶に残るようになるのであり、この残余感がフィールの始まりなのである。 最終動作に限らず意図的に動作をすることによって、意識は自らの動作を追いかけるので、感覚神経によってもたらされる情報を認知するようになって、フィールが養成されるが、初期的には、目的意識が強く上手にやろうとしたり正しくやろうとしたり結果を求めたりするので、自分の動作から意識が離れてしまうので、鈍感になってしまうのである。 目的や結果や正しさは、マクロとして意識下におけばそれで充分だから、後は自分がやるべき動作をイメージして、特に最終動作を意図的に行おうとすることで、その最終動作の瞬間を残余感として記憶することができて、その残余感がフィールとして成長するのである。 意図的に最終動作を行うとは、最終的接触感を意図的に追いかけることだが、指や腕や足を意図的にコントロールすることとは違う。 例えば、ボールを投げる場合に、腕を振って投げるとき、ターゲットを目がけて投げるようと腕や手首や指先を意識的にコントロールしたり、腕を振った勢いでボールを投げさせられたりしていては、フィールは発達しないのである。 ボールをターゲット目がけて投げるのは当然で、腕を振った勢いを利用してボールを離すのも当然だが、ボールをコントロールしようとする必要はなく、ターゲット目がけて投げたいと思うぐらいで充分であり、腕を振った勢いを利用するのは当然なことだが、当然なことなので意識する必要のないことだから、ボールを自ら投げようと思うことが重要なのである。 コントロールすることをお構いなしに投げようと思ってボールを投げれば、最後に中指がボールから離れる瞬間が残余感として記憶されるのである。そして、マクロとしてターゲットにボール投げたいと思って繰り返しているから、自然にターゲットに投げられたときの中指の感触を追いかけるように練習するから、ボールから最後に離れる中指の感触が全てを教えてくれるようになるのである。 フィールは、正しさも未来も上手さも理想も全て教えてくるものなのである。 大脳は、フィールが教えてくれる全てを、邪魔や妨害をするものなのである。 フィールが大脳を活用するのであれば大活躍するが、大脳が支配していれば、フィールが教えてくれる全てを妨害して、意味ない思考を繰り返すのみに陥ってしまうのである。 2014年 8月15日 著者 土岐田 勘次郎 |
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