VOL.63「馬の学習」 |
2015年7月号 今月は、馬の学習について諸々考えてみたいと思う。 ライダーが思っているより多くことを馬は学習していて、馬の抵抗や反抗が、それまでに馬が学習してしまっていることが原因であることが多い。 つまり、ライダーが意図している範囲の外のことを学習していることが原因で反抗をしていると、ライダーは反抗の原因も対処の方法も分からないということになる。 馬は、自分の行動に抵触することは、何かにつけて学習している。 馬房でホルターを付けられ繋ぎ場まで連れて来られ、そして手入れをされて馬装され馬場まで連れられてマウントされる。 馬にとっては、全て「される」と表現にしたように、ホルターをつけられ、連れて来られて、手入れをされて、マウントされるというように、馬にとって全てが行動を拘束されることであるから、そのされ方を学習するのである。 学習に対する好悪は、学習の対象そのものであるより、どんなシチュエイションでとか学習がどんな形で完結するかが決定付けるようである。 本来行動を拘束されるということは、受け入れがたいと思うのが自然で、受け入れることは不自然なことなのである。何故なら、行動は行動を起こす当事者が何らかの必要性があってするわけだから、これを制限されることは受け入れがたいことなのであるから、拘束に対して反発し抵抗するのが当然で、拘束を受け入れることは不自然なことなのである。 ところが、その拘束を受け入れるかどうかではなくて、その拘束がどんな形で訪れるか、どんな形で完結するかによって、その学習の仕方がまるで違ったものになるのである。 このことは人間でも馬でも同じなのである。 ところが馬を扱う人達がどれだけこのシステムを理解しているかというと、怪しいものだ。従って、馬が反発したり抵抗したりしたとき、ライダーはその理由を理解できないし、原因が何処にあるかを知ることができないのである。 行動を拘束するということは、何らかのプレッシャーを掛けることで、そのプレッシャーから解放されるのが、拘束を受け入れたときであれば、プレッシャーを解放されるために拘束を受け入れる。しかし、拘束を拒否したときにプレッシャーから解放されれば、プレッシャーから解放されるために拘束を受け入れないことになる。 |
これらのシステムはとてもシンプルなものなのだが、ホルターを付けようとしたとき、馬が人に背を向けたとき、人がその背けた顔に人が近づいてホルターを付ければ、拘束逃れようとしてもある程度許されることを学習する。 何をすればプレッシャーから解放されるのかを探し、それを学習しようとするのが正常な生物の学習システムなのである。 そしてまた、生き物はその学習を記憶して応用しようとするものだから、ホルターを付けるときある程度プレッシャーに抵抗することが許されることを学習すると、騎乗して駈歩や方向転換する支持にもある程度抵抗を見せるようになる。 初心者が馬に乗って、最初は言うことを聞いていたのに、徐々に言うこと聞かなくなってしまうのは、何処かで抵抗を許していたせいでそのときの学習の成果だということができるのである。 以上のことよりももっと大切なことは、拘束を馬が受け入れたのにプレッシャーから解放されないことを学習してしまうことだ。 馬は、プレッシャーの解放されることを探して反応しても、一向に開放されなければプレッシャーに対して頑なに抵抗を見せたり無反応になったりしてしまう。 ライダーが、馬に対してプレッシャーを掛けている自覚のない場合や、馬の反応を求め続けてリリースをしない場合などに起きてしまうことで、馬がライダーの指示に気を遣わなくなってしまったり、反抗的になったりしてしまうのである。 これらの現象も、ライダーの認識上に起きていないことなので、何故馬は反抗的になってしまったのか無反応になってしまったのかを、ライダーは理解できない。 しかし、これらはライダーの無神経による所で、中々これを是正することは困難だ。 従って、ライダーは、想像以上に馬はライダーの仕草から多くのこと学習していることを認識して、理由や原因が分からない抵抗や反抗に出会ったとき、その原因を知るには、先ず自分がやってしまっていることに目を向ける必要性を思い浮かべなくてはならない。 馬は、我々人間の意識の範囲外で多くを学習してしまっているのであるから、意識の範囲を広げたり、意識していないことにもその原因を探すというシステムを持たなければ、永遠に馬を理解することはできない。
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