VOL.68「ブレーキング Breaking」 |
2015年12月号 2015年の最終回となる今月のテーマは、ブレーキングである。 ブレーキングは、ホルターブレーキング、サドルブレーキングというのが代表的なトレーニング法だ。 ブレーキングを端的に言い表せば、馬が外的プレッシャーを受け入れるようにトレーニングすることで、ホルターブレーキングは、馬がこの世に誕生して最大の保護者である母馬に従ってきたものを親離れさせ、人間の拘束を受け入れるようにトレーニングすることである。 ホルターブレーキングの直前から子馬は、母馬から離されて生活する。 そしてその後に、子馬はリーディングやタイアップや蹄の手入れやその他のボディケアーや予防接種など様々が拘束やコントロールを受け入れるために、人からのプレッシャーを受け入れなければならない。 また、サドルブレーキングは、馬が人を背中に乗せて、様々な拘束やコントロールに従うようにトレーニングすることで、これまで人の拘束やコントロールを、馬の外側からのプレッシャーによって成されるものであったものが、背中の上に人を乗せるだけでもショッキングなことであり、更にその上でのプレッシャーによって、動きそのものを拘束されたりコントロールされたりすることを強いられるのである。 私は、日本の馬事文化には、馬を大人しくしたり従順にしたりするという文化がなかったのではないかと思っている。 馴致という言葉があって、簡単にいってしまうと馬に慣れさせるということで、様々な使役を馬に科すことによって、その馬が受け入れれば大人しい馬で、受け入れない馬は手に追えない馬ということになって、選別されてしまう文化であって、これらを人為的に作るという思想がないのではないかと感じている。 この文化は、日本の馬事文化として古い時代の遺産ということではなくて、現代の日本にも脈々と息づいているのではないだろうか。 さて、本題のホルターブレーキングというトレーニング法は、外的プレッシャーに対する馬の運動方向の矯正から始める。 分かりやすくいえば、プレッシャーがかかれば、このプレッシャーを回避しようとその対象や根源から遠ざかろうとするのが自然な反応で、子馬の中には大凡3種類の反応が見られる。 一旦どの馬もプレッシャーから遠ざかるように威嚇したり音をたてたりしてプレッシャーを掛け、その上で馬がプレッシャーから遠ざかろうとしたとき、更にプレッシャーを強くして、馬が遠ざかるのを躊躇したり停止したりしたときに、プレッシャーを停止したり愛撫したりして、馬が人からプレッシャーを掛けられても遠ざかることを止めれば、そのプレッシャーを止めてくれることを学習させるのである。 プレッシャーから回避しようということを矯正するのではなくて、回避する運動方向を人から遠ざかるのではなくて、近寄る方向へと変えることがホルターブレーキングなのである。 |
サドルブレーキングは、馬が初めて背中にサドルを乗せられて、人を乗せるのを受け入れるようにトレーニングすることだが、基本的にホルターブレーキングのシステムと同じなので、ホルターブレーキングの後約15ヶ月から20ヶ月位経っているので、この間に人のハンドリングにおいて、従順に育成していることが重要であり、育成期間において人からの拘束やコントロールを受け入れることが当たり前で特別なことではないまでになって、人のコントロールにおいて馬がメンタル的ストレスを感じない水準に育成をしておくことは、馬のライフワークとして重要な要因なのである。 そうした条件が整っていたとしても、馬のライフワークとしてはとても大きな節目となるのが、サドルブレーキングなのである。 サドリングするまでは、馬のメンタルが準備されるように、ホルターブレーキングと同様のトレーニングを施して、メンタルの準備が出来たところでサドルパッドやサドルをのせて腹帯を締める。 そして、馬がリードロープを引いた方へ馬の顔を向けて前肢が誘導されるように、後肢はその逆方向のアウトサイドへ人を避けるようにステップをさせるようなトレーニングを施す。 これらと同時に、サドルのフェンダーを揺さぶったり音を立てたりして、人が乗ってする様々な動きを想定してこれを受け入れるように事前に行っておくようにする。 そして、いよいよ人が乗る。 細かいことは省略することとして、私の場合、ホルターでリードロープを1本手綱として使って騎乗し、馬をドライブする際は、舌呼やリードロープをウィップ代わりにヒップやショルダーへヒットさせてプレッシャーを掛けるようにする。 馬を大人しくしたり従順にしたりすることは、トレーニング法として確立していることなので、日本の馬事関係者はこれを理解すべきで、それは、プレッシャーから回避する方向の矯正でできることなのである。 原則的に馬が外的プレッシャーから回避しようとする自然な行動を矯正しようと考えるのではなくて、回避する方向をライダーやハンドラーへと向かうことによってプレッシャーから解放されることを学習させればいいと理解することが重要なのである。 例えば、あるものを怖がって近づこうとしないときに、怖がることを矯正しようと考えることによって、馬との闘いになって収拾がつかなくなるので、飽くまでも回避しようとする方向を矯正することなので、その怖がっている対象物から離れたところへ移動してプレッシャーを掛け、再び怖がる場所へ向かい、馬が停止したらまた離れてプレッシャーを掛けるというように、怖がる場所へ向かえばプレッシャーから解放されることを学習させることによって、馬は従順になるのである。
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