Horseman's Column title

    VOL.73「スライディングストップ」


 2016年5月号

 今月のテーマは,スライディングストップである。

 スライディングストップについて,あれやこれと考察して見たい。

 さて、スライディングストップは、NRHAのルールブックに以下のように定義されている。

 Stops

 Stops are the act of slowing the horse from a lope to a stop position by bringing the hind legs under the horse in a locked position sliding on the hind feet. The horse should enter the stop position by bending the back, bringing the hind legs further under the body while maintaining forward motion and ground contact and cadence with front legs. Throughout the stop, the horse should continue in a straight line while maintaining ground contact with the hind feet.

 ストップとは、ロープからストップのポジションをとりスローダウンする動きで、馬体の下で後肢がロックしてグランドをスライディングすることをいう。
 ストップに入るポジションにおいて馬は、背中を曲げ後肢は馬体の下まで踏み込み 前進気勢とグランドコンタクトを持続し、前肢もまたカデンス(歩調)を持続する。
 そして、グランドコンタクトをストップが完了するまで 維持して、そのラインは真っ直ぐであること。

 以上を要約すれば、後肢が馬体の下まで深く踏み込み、前進気勢を失わずグランドコンタクトを維持し、前肢はそれまでのカデンス(歩調)を維持する。そして、ストップは直線ラインであることということである。

 つまり、直進性と後肢の踏み込みと前進気勢が重要だということである。

 直進性は、理論的には馬が斜体駈歩なので、外方後肢が内方前肢へ向かうステップ角を示すのを基本とすると、外方前肢は外方後肢のステップ角と同じ角度のステップをすることで、馬の進行方向が直進となるのである。
 しかし、実際上ライダーが行っていることは、進行方向に沿って馬の頭が位置するようにし、そこへ向かって馬体を推進することであり、もし、馬がレフトリードの場合、進行方向に対して右方向に曲がってしまうのであれば、前肢をインサイドステップするように小さく左サークル運動をして注意を促し、左方向へ曲がってしまうのであれば、後肢のステップをより左方向へステップさせるようにリバースアークさせて注意を促して、直進できるように治すのである。

 

 次に、後肢の踏み込みは、リブケージやハインドクォーターの柔軟性を作った上で、バランスバックさせテクニカルムーブメントのロープをさせる必要がある。
 スライディングストップの態勢に入るときの後肢の着地位置が重心より前方にあれば、後肢のグランドコンタクトは維持され、深い踏み込みも約束されるのである。

 前進気勢をストップの態勢に入るまで失わないためには、ストップのプローチであるランダウンにおいて、テクニカルムーブメントでなくてはならない。

 レイニングホースの古馬によく見られる姿は、ランダウンに入るとエキサイトして馬が急激にトップスピードになってしまうことで、この場合の治し方で、多くのトレーナーが間違ってしまうことは、馬がエキサイトするものだから、馬のメンタルを矯正しなければならないとしてしまうことで、バランスバックさせて馬のムーブメントを切り替えなければ治すことはできないのである。
 何故なら,エキサイトして急激にトップスピードになっているときは、必ずバランスフォーワードのメカニカルムーブメントになっているからで、馬のメンタルだけを矯正しようとしても無理なのである。
 この場合、エキサイトして急発進していると考えるより、むしろ急発進するからエキサイトしてしまうと考えるべきで、バランスバックさせテクニカルムーブメントにすることによって、馬は急激にトップスピードにすることできなくて、急激なスピードアップができないのでメンタルに落ち着きとライダーに対するコンセントレーションも保たれるのである。

そしてまた、前進気勢をストップモーションに入るまで維持するためにも、バランスバックでテクニカルムーブメントであることが重要なのである。

 直進性やサークリングにおけるガイドは、つまり馬のステップや運動の方向性については、サークルやスピードコントロールの章で解説することにする。

 如何にディープで直進性のあるスライディングストップをするためには、バランスバックが何よりも重要なファクターで、そのための柔軟性やムーブメントにライダーが関心を持って、取り組まなければならないし、これを怠れば、故障やレジスタンスやコンフューズを生じさせて、馬の才能を無駄にしてしまうことになるのである。

2016年4月1日
著者 土岐田 勘次郎


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