2017年11月号
今月のテーマは、ゴールを設定し、その上でスピードと運動要素の2方向で分析して、より速く、より遅く、そしてより単純な運動へシフトする方法で、これをカウントダウンシステムと名付けて、このシステムについて考察します。
カウントダウンシステムとは、Aというパフォーマンスをするために、その必要要素としてのA'を備えるようにし、A'をするためにその必要要素としてのA"を備えるようにと考えるシステムで、日本の文化ともいえる基礎を万全して徐々に高度なパフォーマンスを可能にするシステムと一見同じように聞こえるが、これと異なる点は、先ずゴールからカウントダウンしていくとことで、先ずゴールありきでその手前その手前とカウントダウンする考え方である。
先ず、基本や基礎を優先するということではなく、ゴールを思考するとき、つまりAをやろうとして、Aの必要要素A'を見出し、そしてまたA'をゴールとして目指し、A'の必要要素A"を見出すことである。
ゴールを目指し段階的に基礎に向かうようにカウントダウンするが、あくまでもゴールありきで、「最初から基礎とは何ぞや」と考えるのではなく、ゴールを設定した上で、その一つ手前を思考するということである。
AからA'、A'からA"とカウントダウンしていくシステムである。
そして、Aのパフォーマンスとは、ストップやスピンやチェンジリードやロールバックなどのことで、これらのパフォーマンスのために、カウントダウンするシステムについて具体的に解説したいと思う。
カウントダウンするには、二つの方向性があって、一つの方向性とはスピードで、もっとスローダウンするか速くするかの2方向、もう一つはそのパフォーマンスを構成する運動要素を幾つかに分解し、より単純化するという方向性である。
さて、レイニングのパフォーマンスを具体的にカウントダウンのシステムで考察してみることにしましょう。
スライディングストップは、スピードの方向性でカウントダウンすれば、トップスピードのスライディングストップをAとすれば、レギュラースピードでのストップがA'で、トロットでのストップがA"ということになる。そしてまた、A'としてトップスピードより更に速いスピードでということもときには考えることができる。
トップスピードでのスライディングが上手くいかないとき、そのまま失敗を繰り返すのでなく、レギュラースピードでストップの精度を上げるようにトレーニングしたり、それでも上手くいかなければ、トロットでストップの精度を上げるようにトレーニングしたりしようと考えることである。
必要要素の方向でカウントダウンすれば、A'はバランスバックで、バランスバックした状態で駈歩をスタートしてストップし、そのA'を可能にするための要素としてのA"は、バランスバックした速歩走行ができるようにすると考えることで、更にこれらを可能にするために、ストレッチをしてフランクやリブケージの柔軟性を養成し、バランスバックの容易な馬にするトレーニングをするというようにカウントダウンするように考えることである。
スピンは、スピードの方向性でのカウントダウンは、スムースでクイックなスピンをAとすれば、A'は、スロースピードでのスピンの精度を上げたり、スピードアップして後肢のポジショニングの安定を図ったりするということである。
A"は、トロットからスピンへ移行したりスピンからトロットへのサークル運動への移行をしたりすることである。
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必要要素の方向でカウントダウンすれば、前後肢のクロスステップと後肢のポジショニングが必要要素なので、A'は、前肢のサイドステップや後肢のステップアウトによって、前肢のクロスステップをスムースにしたりストライドを大きくしたりすることである。
A"は、後肢のポジショニングの安定や前肢の軽快さを図るためのバランスバックをすることで、バックアップや前進運動において後肢の踏み込みやショルダーのビルドアップをしてスピンへ移行する。
チェンジリードは、フライングリードチェンをAとすれば、A'はトロットでの二蹄跡運動においてフレームを左右へ切り替えることで、A"はこれをウォークで行うということである。
必要要素の方向でカウントダウンすれば、A'は収縮で、収縮を作ってロープやトロットで走行してカウンターキャンターをしながら、二蹄跡運動の切り替えとしてのフレームワークを行うことで、A"は収縮できるように馬体のストレッチをすることである。
サークルのスピードコントロールは、Aをハイスピードからノータッチでライダーのポジショニングの切り替えだけでスローダウンすることだとすれば、A'はルーズレインでゆっくりとしたスピードで走行することで、できるだけゆっくりとロープできる馬にすることである。
A"は、トロットにおいてスピードコントロールすることで、エクステンドジョグからスローダウンすることである。
必要要素の方向でカウントダウンすれば、バランスフォーワードからバランスバックへの移行を容易にすることが、スピードコントロールなので、A'はライダーが前傾したときや後傾したときに、このライダーのポジショニングに応じて馬がスピードを変えるように反応するトレーニングすることである。これをトロットで行うことがA"になるのである。
ロールバックは、スライディングストップし180°ターンして駈歩発進することがAで、A'は停止状態から180°ターンして駈歩発進することで、A"は停止状態から180°ターンして速歩または常歩の発進をすることとなる。
必要要素でカウントダウンすれば、A'はターンとバックアップのキューイングの違いを明確に理解させることにあって、レインタッチによるキューイングとライダーのポジショニングによる重心の移行におけるエイド(Aid 扶助)で、バックアップは、キューイングとしては左右のレインのプレッシャーを均等にかけることであり、エイドは真っ直ぐにバランスバックすることになる。ターンの場合は、外方レインをネックタッチすることでキューイングを行い、エイドはターンの方向へバランスシフトをすることである。
そこでA'は、外方レインのタッチとバランスシフトでターンをすることで、特にライダーのバランスシフトによって馬がターンすることである。A"は、ライダーのバランスシフトによって馬が反応できるように、馬の収縮を作ることである。
以上の記述は、サンプルであって定型的なものではないので、カウントダウンのシステムで馬のパフォーマンスの精度を高めることが大切で、その対極にあることは失敗を繰り返して、ライダーも馬も失敗の学習をしてしまうことであり、カウントダウンのシステムは、成功の繰り返しで成果を上げることなのである。
従って、それぞれのライダーは、パフォーマンスの精度を上げるために、ゴールを目的として、スピードの観点と構成要素の観点の二つの方向性を以てカウントダウンしてものを考える必要があり、このことは成功の循環を作り、成功の学習をすることができるシステムなのである。
Aに対して何をA'とするか、またはA"とするかは、それぞれのライダーが考えてカウントダウンすればいいわけで、そのなかでより効果的な方法を選択すればいいことなのである。
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