Horseman's Column title

    VOL.94「アクションとモーション」

 2018年2月号

 今月のテーマは、「アクションとモーション」であります。
 馬の運動を二つに区分して定義し、ライダーにとって馬に求める運動をより分かり易くして、その目的を容易に馬が反応できるようにしたいということであります。

 モーションとは、学理的にいうところではなく私の定義として、馬の運動エネルギーの大きさや方向や属性としての回転または直線など、または速度といったものであります。
 アクションとは、馬の挙動ともいうべきもので、一つの動作としてのステップや首を曲げたりすることであります。

 ライダーは、馬に対して第一義的に要求することは、全てアクションであります。
 ストレッチやウォームアップやパフォーマンス全てにおいて、ビットコンタクトやシートや脚でのプレッシャーは、まず馬の一つのアクションを求めて、その結果モーションを誘導しようということで成立しているといえるのであります。

 例えば、回転または直線のモーションとして誘導する場合、極点である2点はビットとシートまたはスティラップで、この2極の力点がパラレルに作用したときに回転モーメントとなり、同一線として一致したときに直線モーメントとなります。
 またムーヴメントとしてのテクニカルまたはメカニカルのモーションを誘導する場合、駆動肢を重心の位置に対して前にまたは後ろにするアクションを求め、その上で馬をドライブすることにより、重心より前で駆動肢がドライブされればテクニカル、後ろで駆動肢がドライブされればメカニカルムーヴメントとなります。

 簡単にいえば我々ライダーは、馬の対してあるアクションを求めて、その結果あるモーションを誘導して、馬の動きをコントロールしているということなのです。

 従って、準備運動をするときライダーは、一義的に求めるアクションとその結果誘導しようとするモーションの二つを同時に認識して、馬とコンタクトしなければならないということになります。

 何故なら、ライダーの求めるものがモーションであるからで、アクションはその入り口に過ぎないからです。
 同時にこのアクションとモーションの二つを意図して、馬に要求しなければなりませんが、ライダーはアクションを求めるとき、モーションを想定していなくてはなりませんし、モーションを求めるとき意識が一義的に求めているアクションから離れていることも良くありません。
 ライダーの意識の持ち様は、馬にモーションを求めるときそのモーションが誘導されるべきアクションが想定されるべきで、アクションからこれに繋がるモーションをロジックとしての知識を持つことは望ましいことですが、重要なことはロジックな知識よりも、感覚やイメージとしてアクションからモーションまでが関連付けられていることなのです。

 例えば、馬の首を右に曲げてストレッチしているとき、前肢または後肢にどのようなステップを求めるのかを意識下におかなくては、首を曲げたとき馬が勝手なステップをしていてもこれを許すことになるばかりでなく、ライダーはストレッチだけをしているつもりでも、同時に必ず何らかのモーションを誘導しているのに、これをライダーが意識していなければ、アクションとモーションが馬だけに関連付けられ、ライダーには関連付けられないことになり、馬術的に全く意味をなさないものとなってしまい、ライダーにはこれを理解できない結末を迎えることになります。
 また、一方モーションである駈歩を求めるとき、ライダーが駈歩というモーションだけを意識して、外方後肢のステップというアクションを意識していなければ、その駈歩はリードがコントロールされないものとなってしまうのです。つまり、ライダーがモーションだけを意識できてなければ、アクションの段階で誤作動を起こしているかどうかを感知できず、感知できなければ誤作動の理由も分からず、闇雲に失敗を繰り返すか、矯正を諦めざるを得ないかということになります。


 従って、ライダーは、一義的に求めるアクションを認識して馬とのコンタクトをしなければならず、そしてそのアクションによって誘導されるモーションを想定していなくてはならないのです。



 馬に内方姿勢をとらせた上で外方後肢をインサイドステップさせて、求めるリードをピックアップして駈歩をさせるのは、内方姿勢や外方後肢のインサイドステップはアクションであり、これに誘導された左右どちらかのリードの駈歩はモーションなのであります。

 以上のことは、中級以上のライダーであれば、極普通にこなしていることですが、もっと高度になりバランスバック、右回転モーメント、ムーヴメントなどを選択してとなると、このアクションとモーションの二つを明確に意識下において、馬とのコンタクトに望むことはとても重要なことだということが解ります。

 インサイドレインを引いて馬の首をインサイドへ曲げるストレッチのとき、馬の前肢をどのようにステップさせるかはとても重要で、首をインサイドへ曲げれば外側へ張力が生まれ、そのままにすれば馬は自然に前肢がステップアウトします。
 これを許したままにすれば、サークルのガイドができなくなってしまいます。何故なら、内方姿勢をとれば馬が外方へステップしてしまうからです。このとき首をインサイドへベンドさせても、前肢のアウトサイドステップをさせないようにすれば、馬は勝手にステップアウトしなくなります。

 このことは単なる一例に過ぎないことですが、必ずストレッチや準備運動するとき、またパフォーマンスをするとき、必ずライダーは一義的に求めるアクションとこれに誘導されるモーションを同時に意識下におくようにすることで、モーションの一貫性を守る中で色々なアクションを取り入れてトレーニングすれば、パフォーマンスの精度やレベルを上げることができます。
 しかし、アクションを求めるストレッチやエクササイズをして、そのときのモーションを想定していなければ、ストレッチすることでパフォーマンスを劣化させてしまうのです。



 我々ライダーは、馬とのコミュニケーションするにおいて、プレッシャーとリリースの原則をもって行います。しかし、アクションを求めるときモーションを想定しなかったり、モーションを求めるときアクションが意識になかったりすれば、リリースするべき判断が違ってしまい、ライダーは馬と永遠にコミュニケーションできません。
 馬は混乱し、反抗することになるのです。

 本来ライダーは、馬のモーションを求め、更にこれをコントロールしてパフォーマンスを行いますが、モーションはアクションとはパッケージングされているもので切っても切り離せない関連性があり、アクションとモーションの二つを理解したり意識したりするといいうことではなく、パーツと完成品、食材と料理、細胞と臓器、筋力とパフォーマンスといったもので、一体化してイメージイングしたり理解されたりしなければならないものなのです。

2018年1月11日
著者 土岐田 勘次郎

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