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    VOL.97「ストレッチ」

 2018年5月号

 今月のテーマは、ストレッチです。

 私の場合ストレッチは、主にネック・ショルダー・リブケージ・フランクの4つのパーツの柔軟性や可動域の拡大を目的に行います。

 先ず、ネックのストレッチを行います。


 直径4〜5mのサークル運動の中で常歩と速歩で、ショルダーを脚で一定に維持しまま左右交互にネックをベンドさせます。ショルダーを一定に維持するとは、サークルの軌道を一定に保つということで、ネックを左右交互にベンドさせたとき、サークルの軌道は変わらないようにするということです。
 注意すべきことは、レインを引いてネックをベンドさせるときに馬の抵抗が始まるポイントに留意し、そのポイントを少し越えたときにリリースして、徐々に深くベンドさせるようにすることです。また抵抗を少し越えてリリースしたときに、そのまま一方を続けるのではなく反対側へベンドさせるように左右交互に行い、左右どちらかに偏ることのないように柔軟性を求めるようにします。

 また、馬の抵抗を無理矢理越えようとすれば、軌道が崩れたり抵抗が大きくなったりするので、無理なく柔軟性を要求することが重要で、どんなストレッチでも同様ですが、フィジカルとメンタルの両面に注意する必要があり、フィジカルだけをストレッチしようとしては、フィジカルが柔軟になっても反抗が強くなってしまうこともあるので、注意しなければなりません。

 次にショルダーのストレッチは、肩関節の柔軟性を高めるということで、内方の脚でショルダーが内方へ動かないようにして、内方レインを引き前肢の内方へのステップを促すようにします。ショルダーの位置が脚によって固定されている状態で、前肢のステップを促されるので、結果として肩関節が大きく動くことになるので、ショルダーのストレッチとなります。
 このストレッチもまた、左右交互に行って一方へ偏ることのないようにする。その意味は、片方だけを執拗にすることで馬の抵抗を強めてしまうのを防ぐこともあり、得意不得意を作らないようにすることもあるのです。
 ショルダーのストレッチは、これまで後肢の動きを重要視するあまり、ショルダーの柔軟性を軽視してきている面が否めないが、ショルダーの柔軟性はとても重要で、養成することによって後肢の動きをより良くできる関連性があるのです。


 次に、リブケージとフランクのストレッチですが、内方と外方それぞれのビットの位置に対して、内方は内方の外方は外方の後肢のステップがそれぞれの同じ側のビットの位置を越えてステップさせるようにしてストレッチを行うのです。
 つまり、内方のビットの位置を内方後肢が越えるようにステップさせるように、また外方のビットの位置を外方後肢がこれ越えてステップさせるようにしてストレッチします。
 このことによって柔軟性が高まれば、内方または外方それぞれのビットのテンションが柔らかくなります。
 また、内方へレインを引くときに、内方後肢の直進性を維持したまま馬体を内方へ曲げるようにし、外方のレインを引くとき外方後肢がサークルの軌道を維持したまま外方へ馬体を曲げるようにしてストレッチをします。

 以上のようなストレッチをしたときに、前後肢の動きが軽快になったりスムースになったりすることを目的とすると同時に、ビットプレッシャーに対するテンションが極めて柔軟になることを目的とします。

 ストレッチにおけるプレッシャーは特に、プレッシャーアンドリリースというよりタッチアンドリリースという意識をライダーは持つべきだと考えます。
特にレインと脚によるプレッシャーの場合に、脚でプレッシャーかけて馬体を曲げたりステップさせたりするような動きを求めるとき、そのときの支点としてのビットは、タッチやホールドに止めプルにならならないように努めることが重要で、タッチではなく引いてしまえば、馬のメンタルに余計な抵抗心を植え付けてしまうリスクがあるのです。
 馬が素材としてスペシャルに従順な性格の場合は問題ないかも知れないが、普通の性格の場合は、作用点である脚によるプレッシャーにも動きを求められ、支点であるビットプレッシャーにも動きを求められるとなると、馬がリリースポイント見つけにくくなって、その分抵抗心を抱くようになるリスクが大きくなるのです。
 そこで特にストレッチ運動のときには、フィジカル的に柔軟性を求めるので、支点と作用点の片方はタッチのみにして、プレッシャーを最小限にすることが重要だと考えるのです。
 つまり、ビットコンタクトで馬の頭やネックに動きを求めるときには、脚やシートのプレッシャーはタッチだけに止め、脚やシートで馬体やステップでの動きを求めるときには、ビットプレッシャーはタッチだけに止めるようにします。
 ストレッチは、馬の可能性を養成することで、パフォーマンスができるようになるわけではないので、ストレッチ後に色々なエクササイズを行って実際にパフォーマンスができるようにするという2段階を想定することが必要です。ストレッチすることでパフォーマンスができるというように考えるのは危険です。
 パフォーマンスのための構成要素を備えるようにストレッチを行い、これらの各構成要素をリレーションシップさせ組織するようにエクササイズを行うというように2段階を考えてトレーニングすることが大切です。

2018年4月23日
著者 土岐田 勘次郎

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